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2020年5月20日(水)

"超前部署"で開幕実現!台湾プロ野球!!

先月世界に先駆けてリーグが開幕し、5月8日にはスタンドに観客を入れての試合開催もかなった台湾プロ野球。15日からは上限1000人までだった観客が2000人まで入場可能になりました。世界の野球ファンからも注目を集め、開幕戦のツイッターでの中継動画は海外から100万人もの視聴があったそうです。選手やファン、球団は、新型コロナウイルスとの戦いにどう立ち向かい、気持ちを一つにして難局を乗り越えたのでしょうか。台湾リーグ現在首位、楽天モンキーズの国際専門案件部副部長の礒江厚綺さんに開幕までの舞台裏、さらにファンサービスに熱い台湾プロ野球ならではの魅力をたっぷりと伺いました。(2020年5月10(日)放送 NHKラジオ第一『ちきゅうラジオ』より)(写真提供:楽天モンキーズ)

『健康シート』で観客のマイナンバーもチェック!

楽天モンキーズ国際専門案件部 礒江厚綺副部長

ーー8日にはついに観客を入れての試合開催がかないましたね。

礒江:当日は嬉しい限りでした。入場を心待にしていたファンが球場に詰めかけて下さいました。楽天モンキーズはその週末3連戦、全てビジターの試合ではありましたが、熱気は現地にいる同僚からも伝わってきました。

「健康シート」

ーー入場する観客に対してどんな感染症対策を講じましたか?

礒江:観客、選手、報道陣など来場全員に対して、当日入場する際には、検温の実施やマスクの着用のほか、「健康シート」の記入が必須になっています。「健康シート」には名前、生年月日、性別はもちろん、マイナンバーカードの番号、連絡先も記して頂き、どこから来たのかが分かるようになっています。その他、最近、鼻水が出ましたか?熱は何度でしたか?今は何度ですか?体調不良がありますか?といった健康状態に加え、ここ最近どこか外国に行ったことがありますか?などかなり詳しい内容を記す必要があります。そして、観客席に座る際には、政府からは1m以上の間隔を取るように指導されていましたので、2席程度空けて座って頂きました。さらに報道陣には選手にインタビューをする時には、1m以上離れて聞いて頂くなどお願いしています。

ーー徹底した対策ですね。選手に対してはいかがでしょうか?

礒江:選手たちがビジターの試合で遠征する時には、基本的にホテルからの外出は禁止しています。移動はチームバスの移動のみとしています。以前ですと、各自新幹線での移動などもしていましたが、そういった例外も今のところは許可していません。その他に休みの日には選手たちは自宅や寮にいるか、球場に来て過ごしてもらうようにしています。選手たちからは”今は我慢の時”という声も聴かれ、好きな野球ができることに喜びを感じている気持ちのほうが大きいと思います。

”超前部署”で乗り越えた!

ーー台湾は新型コロナウイルスの封じ込め対策が早く、感染者数も少数に抑えられていることがプロ野球の開幕につながった背景にもあるかと思われますが、当初の3月14日の開幕から2度の延期を経て4月12日の開幕になりました。開幕が決まるまで選手や球団としては、特にどんなことが大変でしたか?

礒江:最終的には選手に感染者がいないこと、球団のある各自治体の理解が得られたことで開幕につながりましたが、そこまでは選手のみなさんが1番大変だったと思っています。やはり3月14日を目指してずっと取り組んできたにも関わらず、開幕が1度、2度と延期になってしまい、気持ちを保つのが大変だったと思います。開幕の日付が分からないので、モチベーションや体の状態の調整にとても苦労していましたし、このまま開幕が迎えられないのではないかという不安感との戦いもありました。

ーー日本のプロ野球も今、そうした状態で、選手がどのように心や体を保っていったのか知りたいところです。みなさんどういう風に日々を乗り越えていた印象ですか?

礒江:台湾では全体練習ができる環境ではありましたので、選手やコーチ同士のコミュニケーションが毎日取れていた点は大変プラスになっていたと思います。その一方でファンと触れ合うことは難しい状態でしたので、SNSの球団公式アカウントや選手個々のアカウントを使ってファンと積極的に交流するようにしていました。選手は「今日はこんな練習をした」とか「開幕に向けてこんなことを楽しみしている」などと発信していましたし、反対にファンのみなさんからは、「こういう応援のボードを作ったよ!」とか「試合見に行くの楽しみにしてる!」などと温かいコメントのやり取りがありました。

ーー選手たちは、どうやってモチベーションを保ったのですか?

礒江:とても前向きな考えをする人が多く、好きな料理を食べにレストランに行けなかったりしますが、その一方で自分が大好きな野球を毎日チームメートと一緒に出来るという所を心の糧にして、苦しい時期ではあるのですが、その中でもできること楽しめることを探して毎日過ごしていました。
 

ーーチーム一丸となって乗り越える”合言葉”のようなものはありましたか?

礒江:”超前部署”を合言葉に開幕を目指していきました。日本語にすると「先手先手の対策」という意味です。チーム側ではスタッフも健康管理の取り組みを行ったり、選手とスタッフがなるべく接触しないで済むような形で食事の時間をずらしたりと細かい配慮を事前に行って、開幕を迎えられるような形を取ってきました。心配ばかりしていてもなかなか前には進みませんので、まずは先手の対策を取ってどんどん前進していくという姿勢です。

ーーそして念願の開幕へ。礒江さんはどんなお気持ちでしたか?

礒江:この日は実は私は在宅勤務でした(涙)、ファンのみなさんも絶対に現場で試合を見たいだろうって(笑)私も全く同じ気持ちでしたし、球団に入って以来初めて家で中継を見て開幕を迎えましたが、本当にこの日が迎えられて良かったなと胸いっぱいではありました。

ユニフォームマネキンが球場のムードを支えた

ーー会場内は無観客開催でも盛り上げようという工夫も徹底されていたようで、スタンドにユニフォームを着たマネキンが並んでいるのを映像で見て面白いなと、笑ってしまいました。あれはどういう経緯で導入されたのですか?

礒江:ファンの方に入場して頂けない時期が1か月程度ありましたが、選手にはなるべくいつも通りの雰囲気で試合をしてもらいたいな、ということでスタッフでアイディアを出し合いました。選手は初めは『なんだあれ?』ってびっくりしていましたが、スタンドに来て、自分のスマホを使って、自撮りとか写真を撮ってもらったりしていました。

ーームードも和んだ感じですよね。

礒江:ファンに入場して頂けないっていうところで、みんな気持ちが落ち込むところもあったのですけれども、やってよかったなと思います。

海外からミリオンの反響!

ーーそして楽天モンキーズとしては無観客の試合中に大きな記録を達成しましたね。

礒江:そうですね、おかげ様で5月2日には2003年に球団が誕生して以来、通算で1000勝を上げることができ、海外のファンからも祝福のメッセージを頂きました。日本のファンで、『ラミゴモンキーズ』(去年までの球団名)の時代から応援して頂いている方からは「球団通算1000勝おめでとうございます。楽天モンキーズになっても応援していきます。今年も優勝して4連覇してください」というようなメッセージを頂いて、チームで喜びを分かち合いました。交流戦を行ってきた日本の千葉ロッテマリーンズや北海道日本ハムファイターズのファンからもメッセージを頂き感無量でした。

ーー今回は海外からの反響も大きかったのでは?

礒江:今回は野球が見られない多くの人に楽しんで頂こうと初めて英語実況を取り入れ、チームのツイッターで試合中継をしていますが、開幕戦は100万人が海外から視聴されていました。その60%がアメリカで、やはりライブでの試合展開、熱気の共有を求めていたのだと思います。この大変な時期に、野球の魅力を発信できたのは本当に嬉しかったです。

台湾プロ野球クイズ

ここからは今回初めて台湾プロ野球に関心を持った方にも親しみやすい角度から礒江さんアイディア提供の”楽しいクイズ”でその魅力を紐解きます!ぜひ一緒に考えてみてください!

ロボット応援団

第1問
楽天モンキーズは無観客での試合中、スタンドにマネキンやロボット応援団を置いて、ムード作りに工夫しましたが、もう1つ“お客さんに応援に参加している気分”を味わってもらおうと、ある形での参加を募ったところ大好評!沢山のファンが参加してくれました。それはどんな一体どんな形でしょうか?






礒江
:正解は・・・『ファンの顔写真入り人型パネル』です。



礒江:4人1組になっていて、日本円で約2万円で提供しています。顔写真は友達、家族で4人分の顔を入れたり、自分の顔を4ポーズ入れることも出来たりします。好きな応援メッセージも入れられますよ。また、今回は選手やチアリーダーの"口の絵"がプリントしてあるマスクも作りました。

礒江:感染症対策のためにマスクをしなければならず気持ちが暗くなったりする人もいると思いますが、好きな選手やチアリーダーのマスクを着用し、その気持ちを少しでも減らして明るい気持ちになってもらえればと開発に取り掛かりました。以前ですと、台湾の野球場にはなかったものとしてビールの売り子さんの文化ありますが、それもすぐに取り組んで日本式の野球の見方も提供したことがあります。ファンのみなさんに楽しんでもらうために、どんどんチャレンジの精神で取り組み、そこで失敗したり直すべきところが見つかったら早急に直していこうという気持ちで動いています。台湾では、”まずは取り組んで少しずつ良いものに直していく”という考えがあるのでその柔軟さが球団の動きにもつながっていると思います。

第2問

台湾プロ野球と言えば、試合を彩る華やかなチアリーダーが有名です。台湾ではCDシングルや写真集を出すなどアイドル活動もしていますが、野球の試合では、どんなに長い試合でも最後まで曲に合わせてダンスを披露して応援しています!
さて楽天モンキーズのチアリーダー「楽天ガールズ」の応援歌と応援の曲は全部合わせると一体何曲あるでしょうか?
















礒江:正解は・・・・200曲です。

礒江:台湾では全選手に応援歌があり、イニング交換時にも多種多様な曲が流れ、チームソング、いつでも使える応援歌、日本のプロ野球で使われるチャンステーマなどいろいろな種類があります。200曲すべてに振付があり、チアリーダーも大変ですが、ファンの方も同じ振付で応援したいという方がたくさんいらっしゃり、熱いファンの方は覚えています。私も200曲分は分からないので、ファンの熱い気持ちはすごく嬉しいです。また、無観客の試合中は、チアリーダーがステージ上で応援している様子をそれぞれのアカウントでライブチャット配信をする取り組みも行いました。自分のスマホで自撮りをしているような状態で、そのチアリーダー1人が延々と踊っていたり、パフォーマンスをしている状態がずっと配信されています。試合の攻撃中には応援している様子が写っていて、守備中は、チャットなどでファンといろんなコミュニケーションを取り、大変好評でした。

ーー台湾プロ野球のチアリーダーと言えば中信兄弟のチュンチュンさんが日本でも有名ですが、楽天モンキーズには過去ファン投票でチュンチュンさんに勝ったこともあるリンダさんがいるそうです。お気に入りのチアリーダーを見つけてみてはいかがでしょうか?

楽天モンキーズチアリーダー リ ンダさん

第3問
昨シーズンまでチームは毎週末、球場内でイベントを開催してきました。その中に『音楽フェスタ』というものがありますが、球場内の”ある場所で”選手が”あるもの”を披露してくれます。選手は、どこで何をしてくれるのでしょうか?















礒江:正解は・・・・内野席で熱唱します

ファンのみなさんとより近くで交流をしたいという思いから始まった取り組みです。「音楽フェスタ」では選手代表数名が、内野席にある応援ステージに上がって、プロのバンドの人たちと一緒に歌を歌います。ファンのみなさんは歌っている選手やバンドの目の前にいますので、またとない触れ合いのチャンスになります。 選手が歌っている様子は普段なかなか見ることができないので、思いもよらない選手がすごく歌が上手だったり、パフォーマンスが上手かったりと、ギャップをファンの方に楽しんでいただける貴重な機会だと思います。そういう"距離の近さ"もやはり台湾プロ野球の魅力の1つだと思います。

注目は台湾プロ野球記録を塗り替えた朱育賢選手!!

ーー台湾プロ野球といえば、日本では、北海道日本ハムファイターズに移籍した王柏融(ワン・ボーロン)選手が活躍しています。台湾では2年連続打率4割を記録したスター選手でしたが、今、リーグの注目の選手は?

礒江:楽天モンキーズの背番号85番の朱育賢選手(ジュー・イーシエン)がイチオシです。5月3日に13試合で10本塁打を放ち台湾プロ野球リーグの記録を塗り替えました。試合中はもちろんキリリとした真剣な眼差しでプレーしていますが、試合の前後はファンの皆さんとおしゃべりをしたり、気軽に写真撮影やサインに応じたり、親しみやすい、えくぼがとてもチャーミングな選手です。

楽天モンキーズ 朱育賢選手

ファンの熱を守りたい

ーー礒江さんは、台湾に住んで7年、生涯、台湾のプロ野球リーグを盛り上げる決意だそうですが、苦難を乗り越えている今、その思いはより一層強くなっているのではないでしょうか。

礒江:今年は世界的に苦難との戦いになりますが、今まで以上に台湾プロ野球を盛り上げ、魅力を発信し、ファンに元気や勇気を伝えていきたいと思っています。私が初めて台湾プロ野球と触れ合ったのは高校3年生の時に東京ドームで開催されたアジアシリーズという国際試合です。その時に台湾から来たファンの方が熱心に中国語で私に話しかけてくれましたが、当時言葉が何も出来なかったので、必死に"シェイシェイ"しか言うことしか出来ませんでした。何とかファンの人たちと話をし、どういうことを考えているのか、伝えたいのかを知りたいなというのが台湾プロ野球にのめりこむきっかけになりました。今もその当時の気持ちが自分の心の中にあります。熱いファンのみなさんの気持ちは、球団職員になった今でもひしひしと感じていますし、ファンのみなさんの期待に応えられるように、今後もずっと頑張っていきたいと思います。今は海外との行き来が難しい現状ではありますが、それぞれのプロ野球リーグの面白さを認識して頂き、新型コロナウイルスが終息しましたら、お互いにプレーを見に行って頂けたらと思いますし、いつか台湾に試合を見に来ていただけたら嬉しいなと思います。

ーー野球やスポーツへの”前向きな熱”で世界の人がつながり、皆で今を乗り越えられたらと願います。

柴原紅

NHKラジオ第一『ちきゅうラジオ』(土・日17時5分~18時50分)「ちきゅう情熱スポーツ!」リポーター

                   
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