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2020年1月17日(金)

シュート阻止率40%!ハンドボール日本代表・甲斐昭人のスゴ技

1988年のソウル五輪以来、32年ぶりにオリンピックの舞台に立つ男子ハンドボール日本代表「彗星ジャパン」。その守護神、ゴールキーパーの甲斐昭人選手(1987年生まれ)は、シュート阻止率40%を誇る日本の歴代ナンバーワンキーパーです。「キーパーこそ、ヒーローになれる最もやり甲斐があるポジション」と胸を張る甲斐選手、その“スゴ技”に迫ります。

時速120kmのシュートを2mの至近距離で防ぐ驚異のプレー

ハンドボールの見どころは、何と言っても目が覚めるような豪快なシュートと、それを体を張って阻止するゴールキーパーの堅い守備です。ハンドボールのシュートは、ゴールから6m離れた「ゴールエリアライン」の外側から打たなければなりません。しかし、空中ならば「ゴールエリアライン」の内側からでもシュートが打てるため、ゴールキーパーは2mにも満たない至近距離で時速120kmのシュートに対じすることになります。しかもハンドボールのボールは、バレーボールの1.5倍の重さの硬いボール。顔面に当たることもあります。ケガも絶えません。甲斐選手が任されているゴールキーパーは、素人ならば誰もが逃げ出したくなるくらい過酷なポジションなのです。

甲斐昭人選手

キーパーは、足を手のように動かしてシュートを止めるんですが、強烈なシュートが体に当たれば確かに痛いです。でもシュートを止めてゴールを防いだ時は喜びの方が大きくて、痛いと感じることはありませんよ。

さすがシュート阻止率40%を誇る名ゴールキーパー。では、甲斐選手は強烈なシュートをどうやって阻止しているのでしょうか、そのスゴ技を動画で見てみましょう。2019年ドイツで行われた世界選手権で、ヨーロッパの強豪スペインを相手に甲斐選手が大活躍した試合です。

2本目のシュート、甲斐選手は右足を肩の上まで高く振り上げて、手と足ではさむようにボールを止めました。持ち前の股関節の柔らかさを生かし、まるで手のように足を動かして、いわば“4本の手”でシュートを止める、それが日本の守護神、甲斐選手の真骨頂です。

シュート阻止率40%を可能にする“誘惑プレー”

それにしても、2mにも満たない至近距離で放たれる時速120kmのシュートにどう反応するのでしょうか。スゴ技を甲斐選手に再現してもらいました。

甲斐選手は、相手がシュートを打つ瞬間、わざと手を頭の上に上あげてゴールの左側にシュートコースが空いていると見せかける“ワナ”を仕掛けました。そして、相手のシュートをそこに誘い込むと、分かっていたかのようにすかさず足を上げ、同時に上げた手を下げて、ボールを手足ではさむようにして止めました。甲斐選手がシュートを阻止するスゴ技の極意、それは、相手のボールに反応して止めるのではなく、相手に自分の思い通りのコースにシュートを打たせて止めるという「駆け引き」にあるのです。

甲斐昭人選手

キーパーの中には相手の動きについていって反応で止めるタイプのキーパーもいますが、それでは阻止率は上がりません。そもそも至近距離からのシュートに、ゴールキーパーが反応して体を動かしても、ボールのスピードには間に合いません。自分は駆け引きで勝負しているので、常に相手の正面に体を向けて、シュートコースを全部消すのではなく、相手にここにコースが空いていると見せかけてシュートを打たせます。6~7割はコースを空けて誘って、そこを止めにいく方が阻止できる場合が多いです。

コースを空けてシュート誘う甲斐選手の「駆け引き」をもう少し見ていきましょう。
甲斐選手がどのコースに誘っているか、わかりますか?

甲斐昭人選手

シューターも空けられたコースに単純に打ってくるわけではないので、こちらの誘いとは逆にシュートを打ってきた場合も想定して、空けているコースの反対側を止めに行くこともあります。試合がはじまると、こちらが空けたコースに打ってくるタイプなのか逆に打ちたがるタイプなのか、だんだん選手の性格がわかってきます。その読みがうまくはまったときは、シュートの阻止率が上がりますね。

会場を盛り上げるゴールキーパー起点の攻撃

日本代表「彗星ジャパン」が、東京オリンピックに向けて力を入れているのが、甲斐選手の40%というシュート阻止率を攻撃にいかす戦術です。その一つが、相手のシュートを阻止したボールを素早く前線の選手に送り、相手が守備の陣形を整える前に得点する「速攻」です。

甲斐昭人選手

「速攻」は、起点となるゴールキーパーのパス出しが重要です。キーパーがセーブしてから5秒以内に点をとる練習をしています。パスを送るのが、たった1秒遅れるだけで相手は5~6m戻ってしまうので、できるだけ処理を早くして、走っている仲間へいかに正確で強いパスを出すかが大事です。ゴールキーパーのセーブからの速攻が決まると、流れが一気にこちらにきて会場も盛り上がるので、ワンチャンスを狙っています。

もう一つは、ゴールキーパー・甲斐選手が、相手の“無人のゴール”にシュートを決める「エンプティ・ゴール」(Empty Net Goals)です。

激しいボディコンタクトを繰り返すハンドボールでは、コートプレーヤーがファウルをとられて「2分間退場」のペナルティを科されることがよくあります。そうすると、コートプレーヤーが1人減って不利になるため、ゴールキーパーをベンチに下げて、代わりにコートプレーヤーを1人入れる戦術が主流になっているのです。
でも、ゴールキーパーを下げるわけですから、図のように攻撃側のゴールは空っぽ。守備側のゴールキーパーがセーブしたボールを直接投げ込めば、1点を楽に取れるというわけです。甲斐選手が見事に決めた「エンプティ・ゴール」をご覧ください。

甲斐昭人選手

小学校3年のときにハンドボールをはじめてから、ずっとゴールキーパーをやってきたんですが、理由は、一番目立てるポジションだからです。すべてのシュートに絡めるのは、ゴールキーパーしかいないし、最後に試合をひっくり返して流れを一気にもってこられるのもキーパーなんです。中でも、普段、点をとるポジションでないキーパーが「エンプティ・ゴール」を決めたときは、会場がすごく盛り上がります。一番注目されて、ヒーローになれるんです。

「一番目立てるゴールキーパーこそ、ヒーローになれる」と胸を張る甲斐選手。シュート阻止率40%の歴代ナンバーワンキーパーが、東京五輪の舞台でヒーローとなって大歓声を浴びるシーンが思い浮かびます。ハンドボール日本代表「彗星ジャパン」の攻守のキーマン甲斐選手、その活躍から目が離せません。

                   
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