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2020年1月9日(木)

瀬戸大也・大橋悠依 "競泳ニッポン"を背負う若きエースの挑戦

これまでも数々の感動を届けてきた、日本のお家芸「競泳」。しかし、東京オリンピックを前に、2019年2月に女子のエース池江璃花子選手が白血病を告白、そして3月には男子のエース萩野公介選手が、極度の不振から休養に追い込まれました。
 
逆風の中、新たなエースに名乗りを上げたのが、瀬戸大也選手と大橋悠依選手です。日本代表のキャプテンでもあるふたりの選手の強さの秘訣、そしてこれまでの歩みを振り返ります。

精神的に大きく成長 瀬戸大也選手

世界トップクラスの速さを生み出す技術

今、競泳男子でもっとも注目を集めていると言っても過言でないのが、すでに東京オリンピック日本代表に内定している瀬戸大也選手(25歳)。

身長1m74㎝と水泳選手としては小柄な体でなぜ世界と渡りあえるのでしょうか。瀬戸選手が最も得意とするバタフライを解析してみます。

専門家が注目したのはひじの動きです。比較選手(画像左)の場合は、主に手のひらの小さな面積でしか水をとらえられていませんが、瀬戸選手はひじから指先までをほぼ一直線にし、大きな面積で水をとらえて推進力を生んでいたのです。

さらに瀬戸選手は推進力を極限まで高めるため、思い切った選択をしていました。それが、通称「1/2呼吸」です。動きが激しいバタフライでは、通常、腕を一度回すごとに顔をあげて酸素を取り込みますが、瀬戸選手は2回に1回しか顔をあげません。息継ぎを減らすことで、そこに費やしていた力を前に進むために使っているのです。

実際に呼吸を半分に減らすことで推進力がどれくらい増しているのか測定すると、呼吸をしないときのほうが前に進む力が20%大きくなっていることが明らかになりました。瀬戸選手はこうした卓越した技術を駆使することによって、世界でもトップレベルの選手に成長したのです。

永遠のライバル萩野公介選手

そんな瀬戸選手の生涯のライバルが、同学年の萩野公介選手です。瀬戸選手が小学生の時に出場した全国大会では、萩野選手に20m以上の差をつけられ完敗。さらに、萩野選手は高校3年生でオリンピックに初出場し銅メダルを獲得していますが、瀬戸選手は国内選考会で落選し、同じ舞台にすら立てませんでした。

そして、2016年のリオデジャネイロオリンピック。瀬戸選手は萩野選手とともに400m個人メドレーに出場しますが、結果は金メダルの萩野選手に対して銅メダルでした。オリンピック前のインタビューで「(萩野選手と)ワンツーフィニッシュしたい」と語っていた瀬戸選手ですが、その言葉に甘さが表れていたのではないかと当時を振り返ります。

瀬戸

たぶん一番を狙っていたんですけど、なんかその中で2位っていう保険もかけていたりとか。あの時の自分には「周りを気にせず、自分が目指しているところだけを目指せ」って言いたいですね

萩野選手を“生涯のライバル”としながらも、「今見えているのは金メダルだけ」と話す瀬戸選手。精神的にも大きく成長し、世界の頂を目指します。

遅咲きの日本のエース 大橋悠依

細身の体で速く泳ぐために…極めたフラットスイム

日本代表の女子キャプテンを務める大橋悠衣選手(24歳)は身長1m73㎝と長身ながら体重は55kgと細身の体型です。パワーにおとる細身の体でなぜここまで速く泳げるのでしょうか。

その持ち味が最も表れているのが、水面を滑るようにのびやかに進んでいく「背泳ぎ」です。注目すべきは腕をまわすストロークの回数。日本選手権の決勝の泳ぎから大橋選手のストローク回数を他の選手と比較すると、平均より10回以上少ないことが分かりました。

なぜ少ないストロークで大きな推進力を得ることができるのでしょうか。日本選手権で6位に入った選手と泳ぎ方を比べてみると、比較対象の選手は腕を左右に回すたびに体が大きく傾いていますが、大橋選手は体を水平に保ち、傾きを最小限に抑えていることが分かります。さらに、もう一方の選手と比べて最大で約29%も水の抵抗の値が少ないことが判明。大橋選手はこの「フラットスイム」と呼ばれる泳ぎで、抵抗を抑えて高いレベルでスピードを維持していたのです。

さらに、腕の動きにもスピードにつながる繊細な技が隠されています。比較選手(画像左)は手の甲が水面にぶつかり大きなしぶきがあがっていますが、大橋選手は一瞬で手の角度を変え、小指から水に入ることで水しぶきを最小限にとどめて力の無駄を減らしていました。大橋選手はこうした技術を積み重ね、効率よくスピードを上げていたのです。

日本選手権最下位…不振の原因とは

しかし、大橋選手の競技人生は順風満帆というわけではありませんでした。大橋選手が日本代表入りしたのは20代になってからで、競泳選手の中では遅咲きのほう。2015年に大学2年で出場した日本選手権では、中学生の選手にも敗れ40人中最下位という結果に終わるなど、低迷を続けていました。

どん底を味わう中、意外な不振の原因が発覚します。ある日、整形外科を受診した時に重度の貧血だったことが判明。これが、不振へとつながっていたことがわかったのです。

不振の原因を知った今では対策もバッチリ。食事もしっかりと摂るようにしています。

なんと、夜ご飯一食でこの量を食べるそうですよ。

池江選手の離脱…大橋選手の決意

不振を乗り越え見事代表入りを果たした大橋選手ですが、その中で思わぬ事態が起こります。それが、女子のエースとして日本中から期待を寄せられていた池江璃花子選手の離脱。大橋選手にとって池江選手は代表合宿でのルームメイトであり、練習もともにする特別な存在でした。

大橋

どれだけ璃花子の成績や、明るさがチームを引っ張っていたか…。いろんな人とコミュニケーションをとっていくこともそうだけど、自分が一番先頭切って結果を出したりしてチームみんなで頑張っていきたいなって思います

オリンピックの前哨戦、世界選手権で見せた躍進

オリンピック前年の2019年、日本代表選手にとっての大舞台が7月に開催された世界選手権でした。

大橋選手は得意の400m個人メドレーの前に、200m個人メドレーに出場しますが、まさかの失格。焦りからか、背泳ぎから平泳ぎへのターンのときに1回しか認められないキックを2回打つという普段ではありえないミスをしてしまいました。

日程を半分終えた時点で日本チームの金メダルはゼロ。勢いに乗れない中、流れを断ち切ったのがキャプテンの瀬戸選手でした。

200m個人メドレーで金メダルを勝ち取り、競泳で初めて東京オリンピックの代表に内定したのです。さらに最終日には、400m個人メドレーで2冠を達成。後半ぐんぐんと追い上げられ、苦しい展開でしたが、前半のリードを守り、1位でフィニッシュしました。

そして、瀬戸選手のレースの直後、今度は大橋選手が400m個人メドレーの決勝へ。

大橋

最後どうなってもいいから出しきって、体が全く動きませんっていうくらいまで出し切って終わろう

そう覚悟を決めた大橋選手は、最初のバタフライからのびやかな泳ぎで加速し、銅メダルを獲得。日本女子唯一のメダルとなりました。

しかし、その大橋選手もまだオリンピックは決まっていません。

大橋

まだオリンピックを経験したことがないので、初めての舞台という意味でわくわくもあります。ただ、今ある実力を出して内定をいただくことが今の目標です

一方、内定が決まっている瀬戸選手は「金メダルじゃなかったらメダルはいらない」というほどの決意で2020年東京オリンピックに臨みます。

東京五輪の競泳では、男女とも400m個人メドレーが最初の決勝種目。エースの瀬戸選手と大橋選手が、先頭を切って勢いづけてくれることを期待しましょう!

                   
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