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2019年12月11日(水)

"ファウルの魔術師"ハンドボール・永田しおりの秘テクニック

1チーム7人の選手が、バレーボールより一回り小さいボールを相手ゴールへと投げ入れて得点を競う競技、それがハンドボールです。走り、跳び、全身の筋肉を使って大迫力のシュートを放つ攻撃、その豪快なシュートを体を張ったアタックで防ぐ守備、コートでは格闘技のような激しい肉体の攻防戦が繰り広げられます。実はハンドボールでは、相手の攻撃を阻止するファウル(違反)をすると褒められます。ファウルを多く取られる選手が守備の名選手として高く評価されるんです。日本女子代表「おりひめジャパン」の守備の要、永田しおり選手(1987年生まれ)のファウルテクニックを通して、ハンドボールの見どころに迫ります。

ペナルティを科されない“永田流ファウルテクニック”

まずは、こちらの動画をご覧ください。

2つのファウルが出てきました。体やユニフォームをつかまえる「ホールディング」と、腕や手を使って相手を押し倒す「プッシング」です。この場面、ファウルをした選手は、「2分間退場」のペナルティを科され、相手に「7mスロー」が与えられました。7mスローは、ゴールまで7mの位置からゴールキーパーと1対1の状態でシュートを打つことができる得点の可能性が高いプレーです。動画でも、攻撃側の選手が見事にゴールを決めました。

ハンドボールのコートには、ゴールを囲むように2本の線が書かれています。ゴールから6mの「ゴールエリアライン」と、9mの「フリースローライン」です。シュートを打つゴールエリアラインの外側では、守備側の選手が体を張った激しいアタックを仕掛けます。その結果、動画のようにファウルを取られて、攻撃側に7mスローが与えられることも少なくありません。しかし、故意にアタックを仕掛けてファウルを取られても、ペナルティが適用されない場合があります。永田選手のプレーをご覧ください。

永田選手は、攻撃側の選手にすばやく体を寄せ、相手を倒さないようにホールドして動きを止めました。ファウルとはなりましたが、ペナルティを科せられることなく、ゴールから9mのフリースローラインからの再スタートとなりました。

日本代表の守備の要、永田しおり選手

ハンドボールには、「良いファウル」と「悪いファウル」があります。「良いファウル」とは、「相手の進路を体幹を使って阻む」ファウルです。「悪いファウル」とは、ペナルティを科せられるファウルで、引き倒したり、横や後ろから相手の体を押して相手にけがをさせるような危険なプレーを指します。
永田選手のねらいは、「良いファウル」をすることでフリースローに持ち込み、相手の攻撃を一時的に停止させて攻撃のリズムを崩すこと。この「ゲームストップ」のためのファウルは、良い守備として褒められるプレーなのです。

永田しおり選手

日本代表は、60分の試合でファウルを18~20回取ることをめざしています。海外の選手は平均身長が180cm以上、背が低い私たちは壁を作るだけでは守りきれないんです。そこで、チームが意識しはじめたのが、体ごと飛びついてファウルを仕掛けて試合を止めること。相手の攻撃のプランを止めて勢いをそぐんです。ファウルを1本とることは、シュートを1本決めるくらいの価値があることなんですよ。

とはいえ、故意のアタックでファウルをねらうのは、リスクの高いプレーです。失敗すれば、2分間退場のペナルティを科され、7mスローを相手に与えてしまう場合があるからです。永田選手は、そのリスクをどう回避しているのでしょうか。永田選手が、巧みなファウルテクニックの一端を見せてくれました。

永田選手のファウルテクニックのポイントは、「止め方」にあります。相手の腰を抱きかかえるアタックで、体を回転させないようにすると同時に、相手の利き手の腕を下げさせてパスができないようにしてしまうのです。

永田しおり選手

アタックするタイミングと体の寄せ方が大事です。相手が体を回転させて倒れたら悪質なプレーとみなされますし、こちらが接触した瞬間にパスをされると不利な状況になってしまうので、パスを出させないように相手の勢いを殺しながら、ボールもつぶすという動きを同時にやるようにしています。

ファウルで試合の流れを変える“攻撃的ディフェンス”

女子ハンドボール日本代表「おりひめジャパン」
永田しおり選手(最後列右から3人目)

44年ぶりのオリンピック出場を果たした日本代表「おりひめジャパン」。東京五輪に向けて強化に取り組んでいるのが、コートプレーヤー6人全員で攻撃側の選手にアタックを仕掛けてゲームをストップさせる「3-3」と呼ばれる攻撃的なディフェンスです。

ゴールエリアラインに6人が並ぶ「6-0」の守備陣形に対して、「3-3」はゴールエリアラインに3人、敵陣側に3人を配置するマンツーマン・ディフェンスに近い守備陣形です。ゴールエリアラインから離れた敵陣に近い位置で連続的にアタックを仕掛けることで、パスミスを誘ってマイボールを得たり、良いファウルによる「ゲームストップ」で攻撃の流れを断ち切ったりすることができます。

永田しおり選手

「3-3」は、相手のミスを誘う攻撃的なディフェンスです。相手にアタックかけて接触すると相手のイライラがわかるんです。この選手は接触苦手だなとか、手を払われるのがいやなんだなとか。いやだと早くパスを出そうとしたり、体が崩れたりするんで、そのときにパスカットをねらうとミスが起きやすいんです。「3-3」は前後の動きが激しいディフェンスなので、体力は消耗しますが、試合途中に仕掛けると相手もびっくりして、試合の流れが変わるきっかけにもなります。

ファウルを戦術としていかに使いこなすかが、勝敗の行方を左右する奥深い競技、ハンドボール。永田選手の二の腕の力こぶは、体を張ったペナルティぎりぎりのファウルで日本代表を支える“ファウルの魔術師”ならではの勲章です。東京五輪の女子ハンドボール、永田選手のファウルのテクニックをぜひ、お見逃しなく。

永田しおり選手

オリンピックの夢の舞台に立てることにとてもワクワクしていますし、自分たちのプレーを精一杯見せることで、ハンドボールの魅力を一人でも多くのみなさんにお伝えしたいという気持ちでいっぱいです。シュートが1分間に1本決まるスピーディーな展開や、ラグビーのような激しいディフェンス、世界トップレベルのプレーを見たら、絶対にハンドボールを好きになると思いますよ。

                   
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