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2019年12月5日(木)

2度目のメダルに挑む"カヌーイスト"羽根田卓也 強さの秘密

モデルのようなルックスで人気の“ハネタク”こと羽根田卓也選手(1987年愛知県生まれ)は、2016年リオ五輪のカヌースラローム競技で銅メダルに輝いた正真正銘のアスリートです。日本人“カヌーイスト”で初のメダリストになり、その名を歴史に刻みました。
2019年10月に行われたNHK杯国際カヌースラローム競技大会で3位に入り、4大会連続となる東京五輪の代表に内定した羽根田選手、日本初のカヌースラローム人工コースで行われる東京五輪でどのような雄姿を見せてくれるのでしょうか。
日本カヌー連盟強化委員の安藤太郎さんと羽根田選手のインタビューで羽根田選手の強さの秘密に迫ります。

水の流れを見極めてベストコースを瞬時に選択

羽根田卓也選手(所属:ミキハウス)

カヌースラロームは激流のコースでゴールタイムを競う競技です。コースの全長は200~400m、18~25か所のゲート(旗門)を通過しなければなりません。ただし、ゲートのポールに触れると2秒、不通過の場合は50秒がペナルティとして実際のゴールタイムに加算されます。

ゲートには、上流側から下流側に向かって通過するダウンゲート(緑白ポール)と、下流側から上流側に向かって通過するアップゲート(赤白ポール)がありますが、タイム差がつきやすいのはアップゲートです。アップゲートは、水の流れが障害物によって遮られてできるよどみ(エディ)に設定されることが多く、流れが上流に向かって逆流していたり、渦を巻いていたり、水が水底から湧き上がることもあります。カヌーのコントロールが極めて難しいため、どれだけタイムロスせずにアップゲートを通過できるかが勝敗を分ける大きなポイントになります。

カナディアンのシングル(C-1)に出場する羽根田選手は、ブレード(水かき)が片側だけについたパドルを使って、アップゲート付近を素早く通過していきます。羽根田選手の強みは、複雑な「水の流れを見極める力」だと日本カヌー連盟強化委員の安藤太郎さんは言います。アップゲート付近に多いよどみ(エディ)は、道路で言えばスクランブル交差点のような場所。水の流れが上下、左右に複雑に交錯していますが、その流れを見極めてベストなコースを瞬時に選択、カヌーをスムーズに流れに乗せることで余計な力を使わずに船を進める、それが羽根田選手の真骨頂なんだそうです。

日本カヌー連盟強化委員 安藤太郎さん

安藤太郎さん

スラローム競技ではパドルを漕(こ)いで進むよりも、水の力を利用して進む方が比重は大きいのです。羽根田選手は目の前で変化する流れをどう利用するかという判断力、瞬時の対応力が優れています。この力は練習量に比例した経験によって養われますが、羽根田選手は子どもの頃(9歳)からカヌーに乗っていたため自然と身に着いたんだと思います。もちろん羽根田選手のメンタルの強さ、断固たる決意をもってカヌーに取り組む姿勢もまた、彼の強さの理由でしょう。

アップゲートをひと漕ぎ(こぎ)でクリアする超絶テクニック

羽根田卓也選手

水の流れを的確に読んでも、その流れの中でカヌーをコントロールできなくては、ゲートは通過できません。カナディアンカヌーでは、ひと漕ぎ(こぎ)に0.6~1秒かかるとされていますが、そのひと漕ぎ(こぎ)でアップゲートを通過するテクニックも羽根田選手の強みです。羽根田選手のアップゲート攻略テクニックを動画でご覧ください。

アップゲートに侵入する時には、できるだけポールに近い最短コースを取ります。「アップゲートを単にクイックターンでクリアするだけでなく、出口での加速を意識している」と羽根田選手は表現しますが、アップゲートに侵入するスピードを生かしながらゲートを抜け、次のゲートに早く到達することを考えて、アタックしているんだそうです。カヌーの進入角度をミリ単位で調節したり、船を傾けて水面をえぐるように鋭くターンしたり、船の後方部分をあえて水中に沈ませることで浮力を生じさせて加速するなど、水の流れに合わせて細かいテクニックを駆使してアップゲートを攻略していると言います。

羽根田卓也選手

船が止まりやすいアップゲートでは、常に進入角度に気を付けています。ターンのテクニックは上手な選手の真似をすることで身に着けました。高校生の頃はトップ選手のビデオを繰り返し見て練習し、スロバキアに行ってからは、お手本となる外国人選手が目の前でたくさん漕(こ)いでいたので、とても勉強になりましたね。

安藤太郎さん

スラローム競技ではアップゲートの出口で加速できる選手が好タイムを出すことができます。羽根田選手はゲートに入るときの船の使い方がうまいため、ターンのエネルギーを出口の加速につなげることができるのです。船の特性を把握し性能を引き出すのもうまいですね。スロバキアに留学して、日々人工コースで練習できるのが大きいのでしょう。

超絶テクニックを支える驚異の「腹斜筋」

羽根田選手の発達した腹斜筋

羽根田選手に、腹筋を見せて頂きました。腰の上のあたりの筋肉が盛り上がっていますが、これは「腹斜筋」という筋肉です。腹斜筋は、肋骨から骨盤にかけてコルセットのように巻き付いている筋肉です。激流の中でパドルを漕ぎ(こぎ)、体をひねりながら船を操るカヌー選手にとって、よく発達した強じんな腹斜筋は、強い選手であることの証しでもあるのです。

羽根田選手は、12月からの約2か月間はカヌーには乗らず、陸上トレーニングを行います。筋トレやバランスボールを使った体幹トレーニングのほか、クロスカントリースキーやサッカー、バスケットボール、スノーボードなどカヌー以外の競技をトレーニングに取り入れることで、激流の中でカヌーを自在に操れる強い体を作り上げています。

羽根田卓也選手

スラローム競技は座った状態で体をひねったり、のけ反る動きが多く、その際にバランスをとるには体幹を鍛えることが大切です。わき腹に付く腹斜筋や背筋の強化も重要になりますね。肩甲骨の柔軟性も必要で、ストレッチは欠かせません。カヌーを始める前にやっていた器械体操は、今でも冬のトレーニングとして行っています。バランス感覚や空間把握能力を鍛え、運動神経を刺激することに役立っています。

「自国開催の五輪で結果を出して期待に応えたい」と東京五輪への強い意気込みを語ってくれた羽根田選手、二度目のメダルに期待がかかります。

                   
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