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2019年11月29日(金)

羽生&紀平 NHK杯フィギュアを終えて... 前編理想の「羽生結弦」とは?

11月24日まで札幌市で行われたNHK杯フィギュア。男子シングルでは羽生結弦選手が優勝。女子シングルでは紀平梨花選手が2位に入り、共にグランプリファイナル進出を決めました。サンデースポーツ2020ではふたりが生出演!副島萌生キャスターとオリンピック2大会出場の鈴木明子さんが、独自目線で二人の滑りを振り返ります!

前編は3年ぶりのNHK杯優勝を果たした羽生選手について。今シーズンの演技に込める思い、そして今大会での言葉や動きから「羽生結弦」選手とは何者か、改めて探っていきます。

エキシビションにこめた思い

まずはおふたりに、大会最終日に行われたエキシビションについて聞きました。
羽生選手は松任谷由実さんの「春よ、来い」にあわせて、指先まで感情を込めたしっとりとした滑りで観客を魅了。紀平選手はゴールドの華やかな衣装に身を包み、映画「ライオンキング」の曲に合わせ軽快な演技を披露しました。

鈴木明子さん(以下、鈴木)
きょうの札幌は、この曲にあわせて春が来たかのように暖かかったですね。この選曲にはどんな思いをこめたんですか?

羽生結弦選手(以下、羽生)
北海道は(去年の地震からの)復興途中ということもありますし、少しでもみなさんが前を向くきっかけになったらなという思いがありました。あと世界の舞台で見せることがなかなかこのプログラムはなかったので、そういう意味でも「日本らしく」見せたいなという思いもありました。

副島萌生キャスター(以下、副島)
見ているとウルっとくるようなプログラムで、客席では泣いているファンの方もいらっしゃいましたね。

鈴木
私は、羽生選手が氷の結晶をふわっと投げたところが大好きですね。

羽生
毎回「氷をためる」動作をやってたんですけど、今回はハイドロブレーディング(エッジを倒して低い姿勢で滑る動作)を、いつも以上に深くやってみて、それでその勢いで氷をバーっと集めて、ちょっとやってみました。

副島
紀平選手は、金色の衣装でとても大人っぽい演技だなという印象でした。

紀平
今回の演技はステファン・ランビエールさんの振り付けで、本当にすごく難しいステップがあって不安だったんですけど、しっかり見せるところを意識して、頑張って演じました。この曲は「ライオンキング」で使われている曲なので、映画のシーンをイメージして、振り付けから意識しました。

昨シーズンと同じ曲の意味

続いて大会の演技を振り返ります。3年ぶりのNHK杯優勝を果たした羽生選手。フリーでは4本の4回転ジャンプを着氷したほか、3つのスピン、ステップでも最高評価のレベル4を獲得。 ショートプログラムとの合計点で305.05をマークしました。

副島
羽生選手はスピンもステップも本当にすばらしかったんですが、やはり印象的だったのはジャンプだったのではないでしょうか。

鈴木
冒頭から4回転ループを決めましたね。

羽生
このジャンプはがんばりました。このプログラムは2シーズン目なんですけど、久しぶりにちゃんと着氷できたのでよかったです。

鈴木
さらに4回転サルコーは出来栄え点3点を超えるすばらしいジャンプでしたが、手応えはどうでしたか。

羽生
まだまだ全然完璧ではないんですけど、今回は冒頭の4回転ループとそのあとの4回転サルコーを決めるというのがまずは課題だったので、そこをしっかり決められたっていう点においては、まあ合格かなと思っています。

副島
今シーズンはショートプログラムの「秋によせて」、フリーの「Origin」と昨シーズンと同じプログラムですが、同じ曲を使い続ける意味というのはどんなところにありますか。

羽生
昨シーズンはグランプリシリーズの2戦目でけがをしてしまって、このプログラムを使う事ができなかった試合が多かったんですね。だからこそ「もう1回やりたいな」と最初に思いました。ちゃんとフルシーズン、演技を続けたいって思いもありましたし、やはりエフゲニー・プルシェンコさんやジョニー・ウィアーさんへの思いが強いプログラム(※)だからこそ、もっと完成させたいという気持ちがありましたね。

※「秋によせて」はウィアーさんが、「Origin」はプルシェンコさんが過去に演技で使用していた曲をアレンジしている。

副島
鈴木さんは、同じプログラムで滑ることは「選手にとってはすごく怖い事なんじゃないか」とおっしゃっていましたね。

鈴木
羽生さんは求められているものを、そして自分を超えていかなければいけない、というチャレンジしているのかなと感じたんですが、どうですか。

羽生
過去には「バラード第1番」を3シーズン使用させて頂きましたし、「SEIMEI」も2015年のNHK杯の時にいい演技をして、もう一度ピョンチャンオリンピックのシーズンも使いました。やっぱり良い演技ができたら「より高みを」と求められると思います。ただ自分自身が「より高みを目指さなくてはいけない」って常に思っているので、プレッシャーはないですね。常に常に高い所へ、と思っていますから。

理想の「羽生結弦」とは?

副島
常に高みを目指してらっしゃる羽生選手、以前の記者会見で印象的な言葉がありました。

「やっぱり羽生結弦はこうだよね、っていうのを期待して下さるからこそ強くありたい。」

副島
自分自身を「羽生結弦」とすごく俯瞰したところで、違う人物の事を話しているような感じがしました。ご自身で「羽生結弦」とはどんなものだと思っていますか。

羽生
9歳のころ「全日本」と名前がつく大会に初めて出させていただいて、その時初めて優勝しました。その時の自分は本当に自信があって、自信の塊みたいな存在だったんです。その時の自分がいまだに心の中で「もっと頑張れ、もっとできるだろう」って言ってくるんですよね。そのころの自分はすごく強かったし、何でもできると思ってたので。それが自分の中の「羽生結弦」かな。その9歳の「羽生結弦」と、より技術力的にも成長して経験値もつんだ今の「羽生結弦」が合致したものが、本当の理想の「羽生結弦」なんじゃないかなって思っているんです。

副島
9歳の「羽生結弦」さんは今とはどう違うんでしょう?

羽生
やっぱり「怖いもの知らずだった」、というのはもちろんあるんですよね。あとは憧れていた強い選手を見て、なんか自分もその気になってたんです。自分も憧れられる強い存在になりたい、今もそう思います。

鈴木
でも既にその存在になっているじゃないですか!世界中が、「羽生結弦」という存在を目指しているのに、9歳の頃の自分から「まだできる」と言われるって、すごいジレンマですよね…。

羽生
やっぱり自分はまだまだだと思います。自信がないところ、突き詰められるところがありますから、しっかり頑張っていかないとな、って思います。周りのみなさんが憧れて下さるような存在に、自分はなりきれてないかもしれない。でもやっぱり9歳の頃の、一番自信を持っていた頃の自分が今のぼくを見た時に、「かっこいいな」って思えるような成長をしたいなと思ってて。まだそこまでにはたどり着けていないですね。

副島
紀平選手いかがですか?今の羽生選手の話を聞いて。

紀平
すごいな…、と思います。私は小さい頃そこまで自信にあふれていなかったので、羽生選手を見習って自信をもっていかないとと思いました。

羽生
でも僕も自信満々だったのは小さい頃の話だからね(笑)。

副島
紀平選手から見た「羽生結弦」さんとは、どんなイメージですか。

羽生
無理しなくていいからね(笑)。

紀平
はい(笑)。スケートももちろん強いんですけど、スケートと全く関係のない所でもすごく礼儀正しくて、人として尊敬できる方だなと思います。

羽生選手の「あの動き」のヒミツ

常に注目を集める羽生選手。演技だけでなくその一挙手一投足が多くの人の目を引きます。今大会の公式練習や演技前後の羽生選手の様子を見て、気になった動きをピックアップ。羽生選手がそれぞれの狙いを教えてくれました。

まずは練習時、リンクに入ると氷に手を当ててます。すると手についた氷を、なんと口の中へ!「氷を食べる」意味とは?

羽生
氷に触るのは、やっぱり氷の感触を確かめたいからです。あとどういう質の「水」なのかも見ています。氷は水によって質が違うので、ちょっと氷を舐めて「こういう感じの水かな」って確認しています。自分の手に付いた氷を舐める分には問題ないと思っているので。

練習中にしばしば見かけるのが、羽生選手が指を頭の周りでくるくると回す姿です。

羽生
手をくるくるするのは癖ですね。イメージを変えたい時とか、考えを次に進めたい時にやります。

そして、今大会でも印象的な場面だったのが、演技前に目をつぶりエッジケースを顔に当てる羽生選手の姿。祈りを捧げているようにも見えますが、この時は何を考えているのでしょうか。

羽生
エッジケースというのは、靴のエッジを守ってくれる大切なものです。僕らにとって、スケート靴は命よりも大切なものと言えるかもしれない。エッジカバーはそれをずっと守ってくれるものなんですね。僕はリンクの外でもバンバン跳んだりしちゃうので、そういう時にエッジをいつも思ってくれるカバーは、とても大切なんです。だからこそ、演技前に「今日もありがとう」、「今から行ってきます」という思いを込めています。

鈴木
こうした印象的な動きやそこに込めた思い、すべてを含めて「羽生結弦」選手という感じですよね。その思いを聞けてよかったです。でも、羽生選手の動きをずっと見続けて、「狙いは何だろう」と考えている私たちもちょっと細かすぎるかもしれないですけどね(笑)。


(後編では紀平選手の演技振り返り。そしてグランプリファイナルへのふたりの意気込みを聞きました)。

                   
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