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2019年11月28日(木)

超攻撃的に!日本バドミントン黄金時代 女子ダブルス強さの秘密

300㎞を超える強烈なスマッシュと素早いレシーブが行き交う世界最速の球技、バドミントン。男子も女子も、シングルスもダブルスも日本代表は、いずれも世界トップクラス、日本のバドンミントンは黄金時代に入ったと言っても過言ではありません。なかでも3ペアが世界ランキングの5位以内でしのぎを削る女子ダブルスは際立っています。髙橋礼華・松友美佐紀の「タカマツ」ペア、福島由紀・廣田彩花の「フクヒロ」ペア、永原和可那・松本麻佑の「ナガマツ」ペア。なぜ日本女子ダブルスはこれほど強いのか、その秘密は「攻めて、攻めて、攻めまくる!」、超攻撃的なプレースタイルにあります。

ゲームの主導権を握る超攻撃的スマッシュ

世界に日本の黄金時代の到来を強烈に印象づけた2018年8月のアジア大会。日本女子は、団体戦で強豪中国を破り48年ぶりの金メダルに輝きました。この時、勝利のカギとなったのが女子ダブルスでした。

髙橋・松友ペア(2018年8月 アジア大会)

第1試合のシングルスを落とし、続く第2試合のダブルス。戦ったのは、リオ五輪の金メダリスト、髙橋・松友ペア。中国のペアを鋭い強打で攻め、翻弄し、ゲームカウント2-0で見事勝利をおさめました。この時の髙橋・松友ペアの戦い方は際立っていました。1人の選手が連続してスマッシュを繰り返すという極めて攻撃的な戦い方をしたのです。

スマッシュの連打の数を比較してみましょう。2005年の世界選手権で小椋・潮田ペアがデンマークと戦った試合、1人の選手による連続スマッシュの数は3回でした。2012年のロンドンオリンピックで、藤井・垣岩ペアが中国と戦った試合では6回でした。

ところが、リオ五輪の決勝で髙橋・松友ペアが繰り出した連続スマッシュの数は、なんと20回にも及んでいたのです。

スマッシュの連打を生んだ“打ち方の進化”

高畑祐紀子 選手

どのようにして20回もの連続スマッシュを打てるようになったのでしょうか。その秘密を探るため、髙橋・松友ペアと同じように鋭いスマッシュを武器にしている櫻本絢子・高畑祐紀子ペアの高畑選手の打ち方を最先端テクノロジーで分析。3D映像で、以前の打ち方と、連打ができるようになった新たな打ち方を比較しました。

赤いシャツを着ているのが以前の打ち方、緑のシャツを着ているのが新しい打ち方です。ラケットを持つ右腕に注目してください。「テイクバック」と呼ばれるラケットを後ろに引く動作の違いです。以前の打ち方は肘を下げて後ろに深く引いていますが、新たな打ち方では肘を下げず、あまり後ろに引いていません。バドミントンの球の速さは、ラケットがシャトルに当たる瞬間に、どれだけ力を入れられるかで決まるといわれます。「テイクバック」の小さなコンパクトなスイングでも、シャトルを強くたたくことができれば、十分に速い球を打つことができるのです。

次に、打った後の動きを見てみてみましょう。以前の打ち方では右肩が前に出ていますが、新たな打ち方では、あまり前に出ていません。ラケットを振るときの動作が全体的に小ぶりになっているのです。また、足の開きが20cm狭くなっているため、その分、次の動作に素早く動き出せます。日本体育大学でバドミントンを研究している林忠男教授は、打った後の姿勢の進化も攻撃的なスマッシュにつながっていると見ています。

日本体育大学 林忠男教授

林忠男教授

フィニッシュのかたちが垂直に立っている状態に近い状態なので、一番ニュートラルに近いので、どこへでも移動できます。いくらでも移動して次の球を打てるわけです。打ちながらにして次の相手の球に対応しようと体が準備できます。早めに準備できるのは非常に有利です。攻撃の主導権を握っているような状態が続いた方が、ゲームとしては進めやすいですね。

守りで攻める?攻撃的レシーブの正体

福島・廣田ペア(2019年世界選手権)

スマッシュの打ち方の進化で攻撃力をアップさせた選手たちは、守りのレシーブでも攻撃的な打ち方を身に着けました。「攻撃的レシーブ」とは、ネットに近づいて受けるレシーブです。相手の球の速度が速く、コースを見極めるのも難しい反面、返すことができれば、相手が次の動作に入る前に鋭い球を返すことができて、得点につながる可能性が高まります。

「攻撃的レシーブ」を詳しく見てみましょう。ベースラインに近い位置でレシーブをする場合、相手のスマッシュが手元に届くまでに0.8秒かかるとします。同じ速度で返したとすると、相手は初めのスマッシュを放ってから1.6秒後に次の球を打つことになります。ところが、ネットに近づいて前の位置でレシーブをして0.2秒後に同じ速さで返すことができれば、0.4秒後には相手の手元にシャトルが戻ります。相手は4倍も速く次の攻撃をしなければならなくなるのです。

また、ネットに近づいて返せば、その分、打点も高くなるため、鋭い返球になります。素早く鋭い一撃を返すことで、攻めに転じるチャンスが増えるのです。

林忠男教授

通常、コートの中央よりも前で打つと、速度の速い、強い球が打てます。相手はスマッシュを打ってレシーブされたわけですけれども、それが返って来る時間がものすごく早くなってしまうんですね。そうすると相手へのダメージはかなり大きくなるわけです。

髙橋・松友ペア(2016年 リオ五輪)

この「攻撃的レシーブ」を武器に金メダルを獲得したのが、髙橋・松友ペアです。舞台は2016年のリオデジャネイロ五輪、女子ダブルス決勝。序盤は身長の高いデンマークの選手に次々とスマッシュを打たれ苦戦しましたが「攻撃的レシーブ」で対抗、第3ゲームで逆転を果たして優勝をつかんだのです。

「攻撃的なレシーブ」を導入する前と導入した後のプレーの位置を比較してみましょう。ロンドン五輪に出場した藤井・垣岩ペアがコートの半分より前でレシーブをした割合は15%。一方、リオ五輪で優勝した髙橋・松友ペアが前でレシーブをした割合は33%、2倍以上でした。髙橋・松友ペアは、攻撃的な「強力スマッシュ」とネットに近い「攻撃的レシーブ」を武器に、リオ五輪で念願の金メダルを獲得したのです。

バドミントン日本代表  パク・ジュボン ヘッドコーチ

「攻撃的レシーブ」を打ち出したのは、日本代表を率いるパク・ジュボンヘッドコーチです。パクコーチは、「世界に勝つには、守りを固める戦略ではなく、守備から攻撃に転じ、積極的に点をねらっていく必要がある」と説き続けてきました。

パクヘッドコーチ

日本代表は、守備から攻撃に転じるプレースタイルに変わりました。現在のバドミントン界では、スピードとパワーが求められています。いかに攻撃的なプレーを続けられるか、常に選手たちに求め続けていきます。

試合の主導権を握る「超攻撃的スマッシュ」と前で打ち返す「攻撃的レシーブ」をさらに進化させ、東京五輪で2大会連続の金メダルを目指す日本女子ダブルス。日本バドミントンの黄金時代をけん引するその圧倒的な強さから目が離せません。


この記事は、「勝利の条件 スポーツイノベーション」(2019年1月20日放送)をテキスト化しました。
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