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2019年11月5日(火)

卓球代表選考レース連続ドキュメント 第3回"決断"

決着の日は迫っています。

卓球シングルスの東京オリンピック代表選考に密着してきた連続ドキュメント。男女ともに僅か2つの代表枠をめぐる長く厳しい選考レースは、この秋佳境に入ってきました。伊藤美誠、石川佳純、平野美宇という3人の有力選手が争う女子では、それぞれが2020を見据えた「決断」の時を迎えていました。

苦しむ第一人者・石川

およそ1年間、国際大会を転戦し獲得できるポイント数で争う代表選考。

これまで女子卓球界を引っ張ってきた第一人者、石川選手は苦しんでいました。石川選手はこの夏、長年磨いてきた「確実性を重視したミスの少ない攻撃」というスタイルから、強気に攻める新たなプレースタイルに挑んでいました。しかし、なかなか結果を出せずにいたのです。

石川佳純選手

「進化していかないといけない。自分が勝てるかどうか。ひとの事を気にしてもしょうがない。」

8月中旬時点の獲得ポイントでは、伊藤選手と平野選手の後塵を拝する3番手。しかし平野選手との差はわずか5ポイントでした。

そして8月下旬。チェコオープンの準決勝。石川選手は選考レースを大きく左右する、試合を迎えました。前回かなわなかった五輪出場を目指す、平野選手との直接対決です。

序盤に主導権をつかんだのは平野選手。持ち味の速攻で圧倒し、11-6で第1ゲームを奪います。しかし、第2ゲームでは石川選手が反転攻勢。新たに取り組んできた「強気に攻めるレシーブ」でポイントを重ね、11-4とゲームを取り返します。これで流れを取り戻したかに見えました。

しかし…。攻撃的なプレーが消えてしまった石川選手。
そこを平野選手が強気なプレーで攻めました。

石川選手

「勝ちを意識しすぎてしまったというか。これで獲得ポイントを挽回できるかもって少し思っちゃったんですよね。」

平野美宇選手

「東京オリンピックの舞台に立つ、ふさわしい選手になりたい。鬼にならないと勝てない。」

流れをつかんでここから3ゲームを連取し、ゲームカウント4-1で、直接対決は平野選手に軍配。2人のポイント差はさらに広がりました。

チェコオープン終了時のポイント

伊藤 10865
平野 10175
石川  9855

平野の新たな攻撃、“緩急”

チェコでの戦いからおよそ一か月。次なる二人の戦いの場はインドネシアでのアジア選手権です。

その練習場には、隣り合わせで球を打つ2人の姿がありました。

持ち味の強打で直接対決を制した平野選手。この日、練習場で取り組んでいたのは強打ではありませんでした。ネット際にゆるいボールを打ち返す「ストップ」と呼ばれる技。強打一辺倒ではなく、緩急をつけて相手のミスを誘うプレーを自分のものにしようとしていました。

平野選手

「攻めるだけだと勝てない。ゆっくりもできるし、速くもできる、両方やりたいです。どんどん進化していかないといけない。」

準々決勝の相手は、リオデジャネイロオリンピックの金メダリスト、中国の丁寧(てい・ねい)選手。平野選手は、強豪相手に練習の成果を試そうと考えていました。

第1ゲームを失った後の第2ゲーム。ここで平野選手が相手のサーブを「ストップ」で返球。これが丁寧選手のミスを誘います。さらに続けて「ストップ」。ここも丁寧選手のボールはネットにかかり、第2ゲームは11-11のデュースにもつれます。

ここで平野選手は3回目のストップ。しかし、今度は落ち着いて対応され打ち合いに。徐々に丁寧選手に試合をコントロールされ、11-13でこのゲームを落とすと、ゲームカウント0-3で敗れました。

それでも、強豪相手に新たな戦い方で挑んだ試合に、平野選手は手ごたえを感じていました。

平野選手

「最後のチャンスが決まらなかったり、あと1点が取れなかったりしたが、それはそんなに悪くなかった。」

石川 信念は曲げない

「だめだよ!」

アジア選手権のミックスゾーンから聞こえた声の主は、石川選手。この大会、ライバル石川選手の姿は対照的でした。試合後にいら立ちを隠せません。

準々決勝の相手は、中国の劉詩雯(りゅう・しぶん)選手でした。

「攻める卓球」へと変わろうとしてきた石川選手はこの試合も強く返すレシーブを積極的に使います。しかし、ことごとく相手に返され、ポイントにつなげることができません。

結果はゲームカウント0-3の敗戦。平野選手と同じ準々決勝敗退で、ポイントの差を詰めることができませんでした。

試合後、再び練習場に向かった石川選手。強く返すレシーブを繰り返し練習していました。

たとえ結果が出なくても、苦しみの中にあっても、「攻めの卓球」を貫くという信念は曲げません。

石川選手

「やっぱり攻撃的なプレーをしていかなきゃいけない。ミスをしたらもったいないとは思いたくない。どんどん挑戦して、新しいスタイルを作っていきたい。」

伊藤は「大会に出ない」という決断

平野選手、石川選手がインドネシアで戦っていた同じころ。ポイントでトップを走る伊藤選手の姿は、東京都内のビルにありました。アジア選手権出場をあえて見送り、次の大会を見据えて練習に専念していたのです。

ライバルの成績次第では、ポイントを逆転されるリスクもありましたが、その「決断」に迷いはありませんでした。

伊藤美誠選手

「(迷いは)全然ないです。周りに流されるのは元々好きじゃないですし、私は自分の道を歩きたいと思っている。周りの人に『なんで出ないの?』と言われても、『私はそう決めました』って言える。」


取り組んでいたのは、得意のスマッシュのさらなる強化。強いスマッシュを低い弾道で打ち抜くという、極めて難度の高い技術を自分のものにしようと考えていました。

伊藤選手

「どういうボールでもスマッシュを打てるようにする。今はスマッシュが4割しか入っていないので、負けている。6割、7割と成功率を上げていけるようにしていきたい」

決断の成否は…

10月のスウェーデンオープン。伊藤選手の「決断」の正否が問われる戦いがありました。

準決勝、相手は中国の孫穎莎(そん・えいさ)選手。今、最も勢いがある選手と言われています。伊藤選手にとっては、選考レースの序盤、4月の世界選手権で敗れた相手です。

序盤は激しく打ち合う展開で、孫選手の強打。さらに逆を突く巧みなレシーブでポイントを奪われ、2ゲームを連取されます。しかし、ここから試合は伊藤選手のペースへ。流れを引き寄せたのは、練習で取り組んできたスマッシュでした。

勝負所で次々とスマッシュを決めて、怒とうの4ゲーム連取。強敵を下した伊藤選手はこの大会準優勝。さらに翌週のドイツオープンでも準優勝し、ポイントを大幅に加算。ランキングで頭一つ抜け出しました。

伊藤選手

「自分で切符を取りに行くという思いで、この1年間頑張ってきたので。自分のものは自分で取るって感じですね」。



10月20日時点でのポイントは次の通り。

男子は張本選手が抜け出し、水谷選手と丹羽選手が2番手を争う状況です。

残りの大会はあとわずか。12月には大きなポイントが獲得できるグランドファイナルが控えています。果たして代表2枠に入るのは誰か。まだまだ目が離せません。

                   
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