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2019年11月1日(金)

"失敗しない男"に"着地王子"!?体操男子の新星が世界に挑む!

オリンピックでのメダル獲得数が日本最多の種目、体操。日本のお家芸ともいえる競技ですが、近年ではロシア・中国勢などの台頭によりその地位が脅かされています。
そのような中で期待されているのが、急成長する日本の若手選手たち。今後の日本の体操界を背負う新世代は一体どんな選手たちなのでしょうか。

失敗しない男、萱和磨

最初に紹介するのは萱和磨(かや・かずま)選手。2019年10月の世界選手権では平行棒で見事銅メダルを獲得しました。萱選手は、これまで数々のメダリストを輩出してきた体操の名門校、順天堂大学体操競技部で活躍し、今年の3月に卒業した期待の新星です。

萱選手は強靭な筋力が必要なつり輪と、柔軟性が求められるあん馬という、まったく異なる種目を得意とする選手。通常、筋肉はつけすぎると柔軟性が奪われるため、両方を強みにできる選手はこれまで日本にはいませんでした。

ミスをほとんどしないことで知られているため、“失敗しない男”という異名まで持つ萱選手。6種目すべてをこなすオールラウンダーで、お家芸復活にかける日本代表の中でも大きな役割を担っています。

2019年の世界選手権では、個人総合6位という好成績を収めた萱選手。東京オリンピックでは、「全種目できてチームを安心させられる存在になりたい」と語ります。

期待の体操兄弟、谷川航&翔

そして今、急成長を見せているのが、兄の谷川航(たにがわ・わたる)選手と弟の谷川翔(たにがわ・かける)選手。世界で活躍する体操兄弟なのです!

弟の谷川翔選手(左)と兄の航選手(右)

驚異の柔軟性が強みの弟・翔選手

弟の谷川翔選手の実力が発揮されたのが、2018年の全日本選手権。

体操は、技の難度が上がると0.1ずつ加算されるDスコアと、技の美しさを示すEスコアの合計点で得点が決まりますが、近年はトップ選手たちの技術が拮抗しているためDスコアでは差が付きにくくなっています。一方、Eスコアは10点からの減点式。姿勢や着地の乱れなどミスが少なければ高得点が稼げるため、Eスコアが勝敗を分けるといっても過言ではありません。

2018年の全日本選手権で、翔選手はEスコアで高得点をたたき出し圧倒的な強さを見せつけました。落下のリスクが高く、特に減点されやすいあん馬でも、美しい開脚姿勢を保ちながら前後左右自在に旋回。6種目とも減点の少ない美しい演技をみせました。なんと、11連覇を目指す王者・内村航平選手をEスコアでほぼすべて上回り、史上最年少の王者に輝いたのです。

その強さの秘訣が、体の柔軟性。

例えば、あん馬では旋回する時に勢いが付きすぎてミスにつながることが多いのですが、翔選手は旋回の速度が他の選手と比べても3割ほど遅く、ひとつひとつの技を大きくダイナミックに見せ、高いEスコアに繋げていました。

それを可能にしているのが、股関節を180度も開ける柔軟性。他の選手と比較しても、25度も大きく開いているのが分かります。実はこの股関節の可動域こそが抜群の安定感を生むカギなのです。

重心が傾いた瞬間、多くの選手はそれを修正できずに倒れてしまいますが、翔選手は瞬時に足を開くことでバランスを保ちます。通常はここまで足が開かないため、重心の“ずれ”に対応できません。それを翔選手は、股関節を巧みに使ってバランスをとることで技を成功させているのです。

強靭な筋力をもつ着地王子、兄・航選手

弟の特性が“柔”だとするなら、兄の航選手の強みは“剛”。その特性を活かし、跳躍の高さと完ぺきな着地で高いEスコアを誇ります。中でも得意の跳馬では、Dスコアが高い世界屈指の大技をこなし、かつEスコアも高得点。

航選手の踏切の瞬間を、世界最新のモーションキャプチャ技術で解析すると、踏板にかける力は最大500キロであることが判明。足腰の強靭な筋肉で平均的な選手の1.4倍のパワーを引き出し、高い跳躍につなげています。

さらに、その後の回転にも秘密があります。通常、空中では体に遠心力が働いて、頭と足が逆方向に引っ張られます。この状態から膝を伸ばしたまま、体を起こすには50キロのおもりをかかえて起こすのと同じ力が必要。この技ができる選手はほとんどいませんが、それを航選手は人並外れた腹筋の力で可能にしているのです。

ライバル同士!あらゆる面で対照的な兄弟

“柔”の弟と“剛”の兄。ふたりは同じ環境で育ってきたにも関わらず、あらゆる面で対照的です。弟の翔選手は練習中も陽気なのに対して、兄の航選手は寡黙そのもの。一人黙々とメニューをこなします。

暗い部屋が好きという兄・航選手と、明るい部屋を好む弟・翔選手

練習以外でも兄弟は対照的。部屋もこんなに違います。

兄弟なのにまるで正反対。でもそこにこそふたりが強くなった理由があるのです。

兄の航選手が体操を始めたのは、小学校1年生の時。近所の体操教室に入ると、みるみる頭角を現しました。コーチや生徒全員で倒立の時間を競い合った時も、最後まで逆立ちしていられたのは一番幼い航選手だったそう。

しかし、弟の翔選手が体操を始めると、状況は一変。翔選手が生まれつき持っていた人並外れた柔軟性は、体操をするうえで大きな武器となりました。そして、航選手が中学3年生の時に出場した全国大会で、中学1年生の翔選手に負けてしまうのです。その後、翔選手は中学生日本一にかけあがっていきました。

「すごい悔しかった。先を越されたなというか。僕はできなかったんで、そこまで柔らかくなかった。そこ(柔軟性)じゃ勝てないというか。他のところで勝とう」

兄の航選手は地道な努力を続けます。自宅前の急な坂道を小学3年生から7年間毎日走りこみ、その努力は高度な技を教わるようになった高校生の時に花開きました。走り込みで育んだ強靭な筋力や足腰が強みとなり、次々と大技をマスターしていったのです。

そして、高校3年生のとき1年生の弟や同世代のライバルである白井選手や萱選手を下し日本一の座を勝ち取りました。

一方、弟の翔選手も「お兄ちゃんに勝てれば、他のやつに負けてもいい」と言うほど、ライバル意識を燃やしています。対照的なふたりが互いに競い合うことで、それぞれの強みを生かした技が生まれたのかもしれません。

立ちはだかる最強の壁・中国

若手の選手の成長が目覚ましい日本体操界。そんな日本代表チームにとって大きな壁となっているのが中国の選手たちです。

2018年8月に行われたアジア大会では、中国のエース肖若騰(しょう・じゃくとう)選手が大技を難なく決め、Dスコア、Eスコアともに高得点をマーク。他の中国代表選手も次々と高得点をたたき出しました。そして先日の世界選手権でも個人総合4位、種目別ではゆかで3位、平行棒で4位という結果を残しました。

これまで技の難度Dスコアを重視していた中国ですが、技の難度を高いままに、日本のお家芸だったはずの美しさ、Eスコアも伸ばしてきたのです。

その秘密は国をあげた選手の育成制度にあります。

中国ではトップの代表チームの下に、選手を育てるための育成施設が各省や市にくまなくあり、授業料や生活費や食費が無料。体操に専念できる環境が整えられており、小学生のうちから難度の高い技を習得させています。

また、全国にある数百の幼稚園を体操の指定校に認定し、才能のある児童を見つけ出して、高度な養成施設に引き上げるという試みも。まさに、国ぐるみで体操強化に力を入れているのです。

若手選手の進化が問われる世界選手権

立ちはだかる強敵に日本勢も負けてはいられません。エースの内村航平選手、白井健三選手を欠き、若手主体で挑んだ2019年の世界選手権。萱選手がチームを引っ張り、団体3位の結果を残しました。1位はロシア、2位は中国。

大会後、萱選手は「エースとして自分が日本を引っ張り、東京オリンピックでは金メダルを取りたい。」と話しました。

2020年のオリンピックでは王座を獲得することが出来るのか。これからの活躍に注目です!

                   
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