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2019年10月11日(金)

ラグビーワールドカップで日本を支える"桜ジャージ"のヒミツ

世界各国の屈強で勇猛な男たちが、日本で熱戦を繰り広げるラグビーワールドカップ2019。日本代表チームは、1次リーグ・グループAで優勝候補・アイルランドを倒して見事3連勝!!日本中を熱狂の渦へと導いています。

そんな輝かしい結果の裏側に、選手たちの努力や秀逸なチーム戦術があったことはもちろんですが、胸に桜のエンブレムがあしらわれた日本代表のユニフォーム、通称“桜ジャージ”も今回の快進撃の一翼を担っているらしいとの情報をキャッチ。その秘密を探るべく、開発担当者に直撃取材を敢行しました!

お話を伺ったのは、世界的なラグビーブランドで長年にわたって桜ジャージの開発を担当されている石塚正行さん。2019ジャージでは開発総責任者を務めています。桜ジャージのすべてを知るキーマンから明かされた、見た目からはわからないそのスゴさとは…。

日本代表ジャージ開発総責任者 石塚正行(いしづか・まさゆき)さん

2019桜ジャージは「世界で勝つためのジャージ」

──今大会で代表選手が着ている桜ジャージについて、まずは開発の経緯を教えてください。

石塚:2019ジャージ開発の第一歩として、まずは代表選手にインタビューをさせてもらったんです。2015ジャージで満足できなかった点を聞いて、そこを改善していこうと思っていたのですが、実はネガティブな意見がまったく出てこなくって…。うれしい反面、思惑がはずれてしまいました(苦笑)。

──2015ジャージといえば、南アフリカから大金星をあげた2015年のワールドカップで選手たちが着ていたタイプですね。

石塚:はい。選手たちにとってそれだけ満足度の高いジャージならばと、2015ジャージをベンチマークとして開発に着手することになりました。もともと2015ジャージは「歴代最高のジャージ」と言われていて、それを超えることが今回の至上命題になったんです。そして、それは「世界で戦うためのジャージ」ではなく「世界で勝つためのジャージ」を作るということでもありました。そこで、ラグビージャージの基本機能である耐久性・軽量性・運動性・快適性のすべてを向上させるとともに、“3つの矛盾”を解消する新たなジャージを開発することにしました。

新ジャージ開発に立ちはだかった3つの矛盾

1.耐久性と軽量性
厚い生地で作れば耐久性が高まるが、重くなる。


2.耐久性と速乾性
厚い生地は汗や雨が乾きにくい。薄くすると耐久性が弱まる。


3.伸縮性とフィット性
伸びすぎると敵につかまれやすく、フィットしすぎると窮屈になる。

左が2015、右が2019のジャージ。パッと見ではストライプのデザインの違いしかわかりませんが…

歴代最高ジャージを超えるための4つの工夫

世界No.1のジャージを目指すべく、その開発はシルエット・素材・デザインなどなどの細部にまでこだわったとのこと。石塚さんのお話から明らかになった、2019桜ジャージの「4つのスゴさ」をまとめてみました!

①ポジションごとにシルエットを変更!

ラグビーでは、ポジションによって求められるプレーが異なり、それに合わせて選手の体型も変わります。2015ジャージでも、フロントロー用とそれ以外のポジション用という2種類のシルエットが用意されていましたが、2019ジャージではさらに「フロントロー用」「セカンドロー・バックロー用」「バックス用」に分け、全部で3種類のシルエットを開発!スクラムで相手と直接組み合うフロントローには耐久性とホールド感を、相手をかわしてトライを狙うバックスには軽量性と“つかまれにくさ”を、その中間的な役割のセカンドロー・バックローには両者のバランスをもたらすよう、三様のシルエットが用意されました。

左から順にフロントロー用、セカンドロー・バックロー用、バックス用

②フォワードとバックスで素材を変更!

2015ジャージでは、フロントローとそれ以外のポジションでシルエットを変えながらも、素材は同じものを使っていたそう。2019ジャージでは、より高みを目指して素材を一新!耐久性に優れたフォワード用と、軽量性に優れたバックス用でベースの素材を変えて、選手のパフォーマンスをサポートしているんです。ちなみに、糸の原料選定から開発、編み方にまで徹底的にこだわり抜き、約2年間で50種類にのぼる素材のテストを実施したとのこと…!それぞれのポジションに最適な素材が使われた結果、耐久性・軽量性・運動性・快適性のすべてが向上したのです。

左が身体を保護するホールド感や耐久性に優れた「経編(たてあみ)」のフォワード用素材、右が軽量性と耐久性を両立した「丸編(まるあみ)」のバックス用素材

③異素材を組み合わせてプレーをサポート!

ベースの素材だけでは解消できないこともあるので、異素材を組み合わせて運動追随性や快適性を高めているとのこと。それにより、ラグビーならではの動作を効果的にサポートできるようになりました。2015ジャージも異素材を組み合わせたハイブリッド仕様でしたが、2019ジャージでは袖(体にフィットする素材で相手からのつかみ防止)、脇(ストレッチ性に優れた素材で可動域アップ)、肩(滑り止め効果のある素材でタックルでのズレ防止)に異素材を採用しています。

こんな細かいところまで気配りできるのも、実際に着用する選手の声を生かしているからこそ!

④日本の精神性と誇りを表現するデザイン!

“JAPAN WAY”をコンセプトに日本らしさを追求した2015ジャージ。2019ジャージでは、この日本らしさをモチーフとして継承しつつ、「日本人のもつスピリット“武士道精神”で世界と戦う」という意味合いを込めて「兜:KABUTO」をコンセプトに掲げて作られたのだそう。赤と白の“日の丸”カラー、兜の前立てをイメージしたフロントのストライプ、勝利を祈願する吉祥文様をあしらった地紋など、随所に刻まれている日本らしさが印象的ですね。また、フロントの兜の前立てを模したストライプには「体を大きく見せる」、バックの富士山をモチーフにしたストライプには「後方から追う相手に速さを感じさせる」という錯視効果があるのも見逃せません。

前後のストライプの違い、皆さん気づいていましたか?単純な“見た目”だけではなく、心理状態まで考えられた意匠には脱帽の一言です!

フロントのストライプは兜の前立てをイメージして左右に角度がつけられました(左) 真っ白に見える部分もよく見ると細かなあしらいが施され、勝利への願いが込められています(右)

すべては日本の勝利のために

──2019ジャージには高い機能性と日本人の想いがふんだんに盛り込まれているんですね。ちなみに、ここまでこだわると苦労することも多かったのでは?

石塚:そうですね、あげればキリがないですが…(笑)。桜ジャージはこれまで、過去のジャージをベースに「改善」を加えて作られてきたのですが、今回は最高の評価を得ていた2015ジャージを「凌駕」しなければなりませんでした。ですので、すべてをクリアにしてフラットな状態から作り始めました。細かい部分というより、とにかくそこが大変でしたね。

これまでの桜ジャージを知っている石塚さんも「過去最高の出来」と太鼓判

──そうして完成した桜ジャージですが、選手に着てもらったときの反応はいかがでしたか?

石塚:初めはとてもドキドキしました。絶対の自信はあったのですが、実際にはどうかなぁ…と。ですが、宮崎合宿のときにリーチ マイケル選手が「ここまで動きやすいジャージを着たのは初めてだ」とおっしゃってくれて、本当にうれしかったですね!

キャプテンを務めるリーチ マイケル選手は、今大会でもプレーとメンタルの両面で日本代表を支えています

日本代表の勝利のために、選手はもちろんコーチやスタッフなど、チーム全体で最大限の努力をされているかと思いますが、桜ジャージを開発する私たちも同じ気持ちです。そのために私たちにできることは、選手たちが自身のプレーに集中できるよう、快適な着心地と有効な機能をバランスよく盛り込むこと。そこには、ジャージに貢献できる領域が絶対にあると思っているので、とことん突き詰めて、考え抜いて作っています。着ていただいて、すぐにそれを感じ取ってくださったのは、開発者冥利に尽きますね。

劇的トライの裏には桜ジャージあり!

──石塚さんは、今回のワールドカップをどう見ていますか?

石塚:もちろん桜ジャージのことが気にはなりますが、そこは一旦置いておいて、まずは無我夢中で応援しています(笑)。もちろんジャージのことも、観戦後に録画をくまなくチェックして検証していますよ。今のところ不具合などは出ていないようなので、ホッとしています。

──開幕戦から3連勝と、結果もついてきていますし、桜ジャージもそこに貢献できているということでしょうか?

石塚:ひとつ、うれしいお話をいただいていまして…。ラグビー協会の方から「ロシア戦での松島幸太朗選手の2トライ目はジャージのおかげだよ」って。ヨシッ!と思いましたね(笑)。「あと1センチか2センチ、ジャージに余裕があったら掴まれていたかもしれない」という話なんですけど、我々もまさに、代表選手はそういう次元で勝負していると考えていたので。動きやすさや着心地を保ったうえで、その1センチ・2センチのフィット性を高められるか──妥協せず、こだわり抜いた甲斐がありましたね。

松島幸太朗選手

日本代表チームは、初の決勝トーナメント進出をかけて10月13日(日)にスコットランドと激突します。前回大会では惨敗を喫した強豪を相手に、世界で勝つために作られた桜ジャージを身にまとって、日本代表選手たちは戦います。皆さんも心をひとつに勝利を願い、栄光の歴史の目撃者になってみませんか?



ユニフォーム資料提供:カンタベリーオブニュージーランドジャパン

                   
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