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2019年10月9日(水)

馬場馬術 観戦前に知っておきたい気品あふれる華麗なステップ

オリンピックで行われる馬術競技は「馬場馬術」「総合馬術」「障害馬術」の3種目、いずれも選手と馬との信頼関係が欠かせません。中でも、馬の動き(演技)の美しさと正確さを競う「馬場馬術」は、馬が自ら演技しているように見えるほど高く評価されると言われます。この気品あふれる馬場馬術を思う存分楽しむには、人と馬が一体となって演じる華麗なステップの基本を知ることが重要です。東京オリンピックでの活躍も期待される林伸伍選手に馬場馬術の魅力と、華麗な演技の見方を教えていただきました。

見る者を魅了する“動きの美しさと正確さ”

馬場馬術・団体金メダル(2018年ジャカルタアジア大会)

馬場馬術は、20m×60mの長方形アリーナ内で行われます。「常歩(なみあし)」「速歩(はやあし)」「駈歩(かけあし)」と呼ばれる3種類の歩き方を基本に、様々なステップを踏んだり、図形を描いたりします。演技内容が決まっている「規定演技」と、決められた技(エレメンツ)を自由に構成して音楽をつけて行う「自由演技」があります。

馬術文化が浸透している欧米の国々がオリンピックでも毎回好成績を収める種目ですが、アジア勢では日本代表も負けていません。2014年インチョンアジア大会で団体銀メダル、2018年のジャカルタアジア大会では団体金メダルに輝きました。

馬場馬術・団体銀メダル(2014年インチョンアジア大会)

その日本代表の一人が、林伸伍選手(1985年札幌生まれ)です。2014年アジア大会の団体銀メダルに貢献し、2018年の世界選手権では日本人最高位の46位の成績を収めました。国内では、2014年、2016年、2018年の全日本馬場馬術選手権を制しています。これまで偶数年に良い結果を出してきた林選手、2020年の東京オリンピックに出場して日本の多くの人々に馬術の魅力を伝えたいと、ギアを上げて練習に取り組んでいます。

林伸伍選手

林伸伍選手

馬場馬術の自由演技では、馬が自らの意思で音楽に合わせて、なめらかでダイナミックに動いているように見せることが重要です。ただ実際、馬は音楽を理解していませんし、やらなければいけないステップや動きを覚えているわけでもありません。選手が出す指示に従って動いているのです。最小限の動きで指示を出し、馬が自然に動いているかのように見せるスキルが選手には求められます。そのことを頭の片隅におきながら観戦していただくと、より馬場馬術を楽しんでいただけると思います。

観戦前に知っておきたい代表的なステップ

林選手によると、馬への指示は、脚の動きや手綱、馬上での体重移動などで行うとのこと。とはいえ、突然指示を出しても馬は動いてくれないため、選手は、馬が「お、次はこのステップをやるんだな」と心構えできるような、予備動作をすることが大事だと言います。それでは、馬場馬術の代表的なステップを動画でおさえていきましょう。

1つ目は、「ハーフパス」というステップです。馬が、脚を交差させながら、斜めに移動していきます。正面から見ると“欽ちゃん走り”をしているよう。審査員の評価のポイントは、リズム感とキレイな脚の交差です。林選手の脚にも注目してください。進行方向側の脚で馬の腹を圧迫しつつ、外側の脚はやや後ろに引く姿勢で、馬に指示を出しています。

次は、「ピルーエット」というステップ、後ろ脚を中心にして、その場で360度回転するステップです。一定の歩幅で一周を6〜8歩で回ります。選手は後ろに体重をかけて回りたい方向の内側の脚で馬の腹を圧迫しています。

最後は、「ピアッフェ」という最高難度のステップです。前進せずに、その場で足踏み。一定のリズムで脚を高く上げ、いきいきとした動きができているかが、評価のポイントです。本来は“前に進みたい!”馬が、前進気勢を維持しながらその場にとどまって足踏みをしなければならないので、馬にとっては我慢が必要な難しい動作です。選手は、両脚を少し後ろに引いて馬に指示を出します。

林伸伍選手

馬は「予備動作+運動(ステップ)」のセットで教えられています。「ピアッフェ」の場合、馬は勢いよく歩いている状態からいきなり足踏みをする動作には移れないので、ステップに入る前にワンクッション、予備動作を入れるんです。そうすることで、馬は準備ができて、気持ちよく、ステップを踏みたくなる体勢になるんです。

林選手とエクゥィスクリアウォーター号

林選手は、エクゥィスクリアウォーター号とコンビを組み、世界選手権などで好成績を収めてきました。しかし、エクゥィスクリアウォーター号は、2018年9月に高齢のため引退しました。新しいパートナーと東京五輪を目指すことになる林選手、最高の馬と、東京の最高の舞台で、人馬一体となった馬術のすばらしさを日本中に伝えたいと、燃えています。

林伸伍選手

馬場馬術では、フィギュアスケートの選手のような、しなやかでダイナミックな体の動きが馬に求められるのですが、そういった動きのクオリティは、実は、馬が生まれ持った歩様(歩き方)でほとんど決まってしまいます。ですから、素晴らしい素質を持った馬とタッグを組むことが重要なんです。ただ、馬の素質だけでは勝てません。地道に調教を積み重ねながら、日々の世話などを通じてコミュニケーションをはかることもまた重要です。僕たち選手の経験と技術はもちろんですが、選手と馬が信頼関係を築いていくことが何よりも大切なんです。

2020年の東京五輪の馬場馬術は、1964年の東京五輪と同じ東京都世田谷区の馬事公苑で個人戦と団体戦が行われます。日本代表の活躍はもちろん、世界のトップ騎手と名馬が繰り広げる気品にあふれる華麗な演技をお見逃しなく。

                   
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