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2019年10月2日(水)

世界最高水準の「射形」 アーチェリー・古川高晴"射の極意"

日本のアーチェリーといえばこの人、古川高晴選手(1984年青森県生まれ)です。2004年のアテネ大会から4回連続オリンピックに出場し、ロンドン五輪の銀メダルで一躍脚光を浴びました。5度目の出場となる東京五輪では、日本のエースとして、自身2つ目の、もう1つ上のメダルを目指します。古川選手の特徴は、世界最高水準といわれる美しいフォーム=「射形」です。ベテランのアーチャー(アーチェリープレーヤー)が追い求める“理想の射”とは。古川高晴選手に“射の極意”を聞きました。

10点を外さないフォームを何度でも繰り返せる高い「再現性」

オリンピックのアーチェリーは、70m離れた場所から直径122cmの的に向かって矢を放ち、どれだけ中心に近い位置を射抜けたのかを競います。的の中心から黄、赤、青、黒、白の同心円が広がっていて、黄色は10点と9点、赤は8点と7点という風に外側に行くほど得点は下がり、白の外側の部分は1点です。ちなみに、最高点の10点が得られるエリアの直径はわずか12.2cm、音楽CDとほぼ同じ大きさです。

一方、矢を射る弓の重さは約2kg。選手は、それを片手で持ち、矢をつがえ、引いた矢を放つ一連の動作を繰り返します。走ったり、跳んだり、格闘したりといった派手な体の動きはありませんが、10点を続けるためには、同じフォームを何度でも繰り返すことができる「再現性」が不可欠です。弓を持つ腕の親指の付け根の向き、弦を引く手と顎(あご)の位置、弦を引く腕の肘の高さなど、矢を放つための一連のフォームがほんのわずかでもズレると、70m先の的にあたるとき、矢は中心から外れてしまうからです。

古川高晴選手

古川高晴選手

アーチェリーは、まったく同じ動作を繰り返すことができれば、矢は必ず同じところに行きます。風の影響はもちろん頭に入れますが、100本矢を放ったら、100本ともまったく同じフォームで打てるのが理想なんです。以前、矢を射るところを動画で撮って、重ねてもらったことがあるのですが、ほとんど重なっていて、ズレはありませんでした。1mmでもズレたら9点になってしまう世界。フォームの再現性を高めるために練習を積み重ねています。

高い「再現性」を生み出す、世界最高水準の美しい「射形」

ロンドン五輪で銀メダルに輝いた古川選手(左)

世界のトップ選手の中でも「再現性」が高く、安定して高得点が維持できると評価されている古川選手。その高い「再現性」の秘密は、古川選手の弓を射るフォーム=「射形」にあります。世界最高水準といわれる美しい「射形」を詳しく見てみましょう。

矢を弓につがえた後、的の中心に照準を合わせる動作です。左脇の辺りを中心に左右の腕が対称になっています。弓を押す左腕と弦を引く右腕の力が均等になった理想的な「射形」です。この時、弦が、顎(あご)と唇、鼻の3点に触れている点もポイントです。

矢を放った直後の姿勢です。アーチェリーでは、引き手の指を離すのではなく、自然に離れるのが良いフォームとされています。矢を放つ前の写真と比べても、腕がやや後ろに動いている以外は、体のどの部分もほとんど動いていません。古川選手の世界最高水準といわれる美しい「射形」は、アーチェリーの基本に沿ったお手本のようなフォームなのです。

1日450本の打ち込みが「再現性」の高いフォームをつくる

オリンピックのアーチェリーは、屋外で行われます。雨や風や周囲の環境の変化に動じず、再現性の高い美しいフォームを繰り返すには、集中力を切らさない精神力や自分の心をコントロールするメンタルの強さが必要です。しかし、古川選手は特別なメンタルトレーニングは行なっていません。古川選手が突き詰めようとしているのは、再現性の高いフォームです。意識をしなくても理想の射形になるよう、午前9時から午後5時まで、毎日400~450本の打ち込みを繰り返します。

古川選手が毎日射数を数えるカウンタ-

古川高晴選手

矢を放つ本数が多ければ多いほど体に染みこませることができると思っています。大学を卒業してから30歳までは、毎日600射は打っていました。体力や筋力は落ちていないんですけど、疲労からの回復力が落ちてきて、次の日に回復しないまま打ち込むことで練習の質が下がることに気がついて、いまの400~450本という数に落ち着きました。

しかも古川選手は、実戦さながらの緊張感の中で打ち込みを行います。矢を放つ一連の動作に要する時間は1射あたりおよそ20秒、4分間で6本の矢を射るという試合と同じ状況で練習します。大会と同じ緊張感で矢を射ることで、成功しても失敗しても集中力を切らさず、平常心で次の射に移るという基本の動作を体に覚え込ませているのです。

古川高晴選手

矢を離す前に「あっ、ミスするな」と思うようならダメなんです。「あっ、これは10点だな」と分かるときがあるのですが、そのフォームをいつでも再現できるようにしなければなりません。そのために毎日の打ち込みで理想の射形を繰り返しています。そうすることで、自分のテクニック、フォーム、そして点数に自信をつくっていくんです。

銀メダルに輝き歓喜の雄叫びを上げる古川選手(2012年ロンドン五輪)

古川選手は、2012年のロンドン五輪で銀メダルに輝いたものの、2016年のリオ五輪は8位という不本意な結果に終わりました。東京でリベンジを果たしたいという強い気持ちで、連日、打ち込みに汗を流しています。世界の誰よりも再現性の高い美しい「射形」で二度目のメダルを射止めることができるか、古川選手の奮闘が続いています。

                   
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