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2019年9月25日(水)

肩甲骨で得点を量産!水球日本代表の若きエース・稲場悠介の強さ

東京オリンピックでメダル獲得を目指す水球男子日本代表「ポセイドンジャパン」。その若きポイントゲッターに期待が高まっています。富山県出身の稲場悠介選手。2000年生まれ、二十歳で東京オリンピックを迎えます。
2018年シーズン、高校3年生で日本代表に選出されてエースに抜擢されると、インドネシアで行われたアジア大会で得点王になり日本代表の銀メダルに大きく貢献しました。世界の強豪国が集まるワールドリーグ、2019インターコンチネンタルカップでも26得点を挙げ、2年連続で大会得点王に輝きました。「東京オリンピックでも得点王を取る」と明言する稲場選手、その得点力の秘密に迫ります。

水中で遠投50m!小柄なポイントゲッターの強靭(じん)な肩

稲場悠介選手

水球は水中で行うハンドボールのような競技です。7人対7人で相手ゴールを目指し8分間のピリオドを4回、合計得点の多い方が勝利となります。フィールド(プール)の大きさは縦30m、横20m。ハンドボールより縦が10m小さいですが、水深2m以上のプールで行われるため、選手たちは「巻き足」と呼ばれる独特の立ち泳ぎで泳ぎ続けながらプレーをしなければなりません。

しかも、選手は泳ぎながら激しいボディコンタクトを繰り返します。どうしても体格に勝る外国勢が有利で、日本代表は押され気味でした。しかし、その体格差を跳ね返し、世界と互角に戦える実力をつけているのが身長178cm、体重71kgの稲場選手、水球界では圧倒的に小柄なポイントゲッターなのです。

水球のポジションにはゴールキーパー(GK)以外に、相手のゴール前でパスを受け取ってシュートするフローター、相手のフローターを止めるフローターバック、ディフェンスをするとともにボールをフローターにパスをしたり、相手の隙をついてシュートすることもある左右両サイドのドライバー(フォワード)があります。稲場選手のポジションは左サイドのドライバー、相手チームのディフェンスの隙をついて、時速80kmを超える強烈なミドルシュートを放ちます。

稲場悠介選手

水球では、身長2m前後のフローターの選手がゴール正面にポジションを取り、相手のファウルを誘発する“パワープレー”で得点をするのが一般的な攻撃パターンです。ところが、稲場選手が加わったことでポセイドンジャパンの攻撃の幅は広がりました。ゴールから離れた左サイドのミドルレンジから放つ稲場選手の強烈なミドルシュートを武器に得点力を上げ、チームの勝利に大きく貢献しているのです。

稲場悠介選手

自分は、“キーパーと一対一の勝負”より、ディフェンスを抜いて、中間距離からミドルシュートを打つのが得意です。肩が強いのは自分の武器ですね。水球のフィールドの縦の長さが30m、プールの端から端は約50mの距離があるのですが、巻き足をしながらでも50mは遠投できます。

強烈なミドルシュートを生み出す肩甲骨

試合前、肩甲骨をほぐす稲場選手

水球のボールは、大きさも重さもサッカーボールとほぼ同じ。一般的には水球のフィールドの端から端に当たる35mを投げればすごいと評価されますが、稲場選手はその1.5倍近い距離を投げられることになります。

稲場選手は、なぜそれほど強烈なシュートを打てるのでしょうか。その秘密は稲場選手の独特のシュートフォームにあります。稲場選手のシュートフォームを詳しく見てみましょう。

稲場選手のダイナミックなミドルシュート

まず、「巻き足」を使って水面よりできるだけ高く跳ね上がり、上半身と腕を弓のようにしならせて力を溜めます。次に、体のしなりを一気に戻し、反動を使って勢いよくボールを投げます。

柔らかく可動域の広い肩甲骨が強烈なミドルシュートを生み出す

注目は、水の上に出た上半身の力だけでボールを投げている点です。体育館で行うハンドボールならば、助走をつけたり、床を蹴ることで下半身の力をボールに加えることができます。しかし、足のつかないプールで行われる水球では、助走をつけることも足を踏ん張ることもできません。では、どこからそんな力が生まれてくるのでしょう。
その秘密を解く鍵は、背中側の肩にある肩甲骨にあります。人一倍柔らかくて可動域が広い稲場選手の肩甲骨こそが、時速80kmを超えるボールスピードや50mを超える遠投を可能にしているのです。

柔らかくて可動域が広い稲場選手の肩甲骨

稲場悠介選手

普通は腕を早く振るとか、そういう方に意識が行くんだと思いますが、自分は肩甲骨を意識しています。腕や肘、肩に負担をかけず体全体を使ってシュートを打つためには肩甲骨の柔軟性や可動域、使い方が重要なんです。実は肩甲骨を意識するようになったのは、セルビアのプライノビッチという選手を見てからです。185cmと外国人選手としては小柄ですが、その選手のシュートを見たとき、「重要なのは肩甲骨の使い方だ」と気づいたんです。肩甲骨を有効に使えれば、強いシュートが打てると確信しました。

肩甲骨のパワーを増幅させる「フェイント」

さらに稲場選手には、強烈なミドルシュートの力をパワーアップさせる、とっておきのテクニックがあります。相手のディフェンスやゴールキーパーの守備のタイミングを外すために使う「フェイント」です。稲場選手は、フェイントの度にボールを持った腕を後ろにそらして大きく反動をつけ、その反動の力を使ってシュートを打っているのです。
試合前のウォーミングアップでも3回フェイントをしてからシュートするという動きを繰り返す稲場選手、この練習には「巻き足」のタイミングや肩甲骨の使い方など、シュートの際の一連の体の動きを確認するルーティンの意味合いもあると言います。

試合前のウォーミングアップでフェイントをする稲場選手

稲場悠介選手

自分はワンモーションでシュートを打つことはほとんどありません。シュートを打つ前に2回、3回とフェイントをするのですが、その度に肩甲骨を大きく動かして「巻き足」から生まれる下半身の力を増幅させています。肩甲骨をうまく使うことで、全身の力をボールに乗せています。

稲場悠介選手

自分のような小さな選手は腕の力だけでシュートを打っても絶対に強いシュートは打てません。そこで、肩甲骨の使い方、全身を使ってシュートを打つ身体の使い方を常に意識しています。練習でも、力を入れずにゆっくり体の使い方だけを確認する時間と、思い切りシュートを打つ時間を分けてトレーニングしています。

自国開催の東京オリンピックで、初のメダルを目指すポセイドンジャパン。大男たちがひしめくプールの中で、小柄な稲場選手がいかに得点を挙げてチームを勝利に導くのか。若きエース・稲場選手の活躍に期待が膨らみます。

                   
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