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2019年9月24日(火)

水球・日本代表をまるハダカに! "超攻撃型戦法" に迫る

長く世界のレベルから水をあけられていた水球・男子日本代表、「ポセイドンジャパン」が、東京五輪に向けて躍進を続けています。32年ぶりに出場を果たした2016年リオ五輪以降、世界大会で上位に食い込む勢いを見せ、2018年のアジア大会では準優勝に輝きました。状況を変えたのは、2012年男子日本代表監督に就任した大本洋嗣監督が提唱する“超攻撃型戦法”。ポセイドンジャパンの飛躍の原動力に迫ります。

海外の猛者との体格差を埋める「スピーディな攻撃」

水球は、水深2m以上のプールを泳ぎながら、7人対7人でゴールを奪い合うチームスポーツです。両手が使えるのはゴールキーパー(GK)だけ。他の6人は片手でしかボールを扱えません。水球はサッカーのオフサイドやバスケットボールの3秒ルールのようにゴール前で待ち構えることを禁止するルールがなく、攻撃時間内であればゴール前にとどまることが許されています。このため、体の大きい選手があらかじめゴール前にポジションを取り、そこにパスを集めて得点するパターンが常識的な戦い方とされてきました。体格に勝る欧米のチームが圧倒的に有利で、日本代表は長らく体格差という壁に阻まれてきました。

大本洋嗣監督

大本洋嗣監督

高さがないと世界には勝てないと考えて背の高い選手を集めたこともあります。ところが、日本がいくら大きな選手を揃えてもせいぜい平均身長184cmくらいなんです。世界は195cm程度が当たり前ですから、やっぱり小さくて相手にならない。それならば、高さに頼らない方法を追求するしか勝つ道はないと考えました。そこで、「スピーディーな攻撃」をチームの方針に据えたんです。

「攻撃的なディフェンス」が生み出す「スピーディーな攻撃」

大本監督が掲げる「スピーディーな攻撃」。それを可能にする鍵は、実は、守備(ディフェンス)にあリます。水球の一般的な守備は、攻撃側のプレーヤー1人に1人で対応するマンツーマンディフェンスです。パスを受けようとしている選手に密着することでパスをさせないようにけん制したり、パスミスを誘ったりします。「水中の格闘技」といわれるように、体をはった激しいボディーコンタクトで攻撃の選手の進路をふさぐことも少なくありません。

一方、ポセイドンジャパンの守備は、攻撃側の選手をマークして進路を妨害するのではなく、パスをカットできる位置にポジションを取ります。一見すると攻撃側の選手をフリーにしてしまうようですが、パスカットに成功すれば、速攻のチャンスが生まれます。
攻撃側の選手の進路をふさいで得点させない守備をするのではなく、素早い泳ぎで攻撃側のパスをカットし、相手が守備の体制を整える前に「スピーディーな攻撃」に転ずる、これこそが大本監督が打ち出した “超攻撃型戦法”なのです。

大本洋嗣監督

大本洋嗣監督

接近戦で相手ともみ合えば、体の大きな外国選手の方が有利です。だから日本はあえて競り合いをせず、スピード重視を選択しました。攻守がめまぐるしく変わるハイペースの勝負に持ち込むことで、攻撃の機会が増えて相手のペースを乱すこともできるんです。

“超攻撃型戦法”を支える、泳力とスタミナ

パスカットから素早く攻撃に転じてゴール前にボールを運び、ゴールを決める。この戦法を実現するために、大本監督が選手たちに要求したのは、圧倒的な泳力とスタミナです。パスをカットして速攻を決めるためには、水中で自在に方向を転換したり、相手チームの選手よりも長い距離を速く泳げる泳力やスタミナが欠かせないからです。
大本監督の要求に対してポセイドンジャパンの選手は、過酷な練習でこたえてきました。先頭に立ってチームのハードな練習を引っ張ってきた最年長のベテラン、志水祐介選手です。

志水祐介選手

志水祐介選手

実は、世界の強豪国はほとんど泳ぐ練習をしません。でも日本代表は、多いときには1日1万mくらい泳ぎます。50mプールを単に往復するだけでなく、時間を区切って全力で泳ぐインターバルトレーニングもやります。かなりきつい練習なので、海外の選手ならついて来られない選手も多いでしょうね。

通常、ポセイドンジャパンの練習は、「外国勢はほとんどしない」という泳ぎ込みから始まります。みっちりプールで汗を流したら昼食、長めの休憩を挟んで、午後はボールを使った練習やチームの戦術練習。
夜には日によってウエイトトレーニングや、水中で素早く方向転換するための泳ぎのトレーニングの時間が設けられています。それぞれの練習時間は長くありませんが、その練習密度は選手たちが思わず「きつい」と漏らすほどです。

志水祐介選手

水球の泳ぎは競泳とは違います。速く泳ぐだけでなく、ボールや相手の動きを見て、泳ぐスピードや方向を変えなければなりません。しかも、“超攻撃型戦法“では、意図的に攻守が入れ替わるテンポを速めているので体力の消耗は半端ありません。どうしても終盤はスタミナ切れになってくるので、手を挙げた姿勢で前後左右、あらゆる方向に向きを変えて泳ぐトレーニングも時間をかけて繰り返しています。

大本洋嗣監督

大本洋嗣監督

我々はもちろん勝利を目指していますが、同時に水球という競技の楽しみ方を変えたいと思っています。水中の格闘技のような肉弾戦よりも、攻守がめまぐるしく変わるテンポの速いゲーム展開の方が見ていて面白いでしょ。ポセイドンジャパンは、見ている人に「水球って面白い!」と感じてもらえる水球を目指しているんです。

“超攻撃型戦法”。それは、水球の常識を覆す「攻撃的なディフェンス」と、そこから生まれる「スピーディーな攻撃」です。世界の猛者を相手に素早く、縦横無尽にプール泳ぎ回るポセイドンジャパン、その勇姿から目が離せません。

                   
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