読み込み中です...

2019年9月18日(水)

規格外の"左"で世界の頂点へ 若き天才ボクサー・堤駿斗の実力

東京五輪で金メダルが期待されている日本人ボクサーがいます。2016年、世界3階級を制覇したプロボクシングの井上尚弥選手でさえも成し得なかった「世界ユース選手権」優勝を日本人で初めて果たし、“史上最強の高校生”と言われた堤駿斗選手(1999年生まれ)です。堤選手は今、東洋大学に通う大学生、ロンドン五輪で48年ぶりの金メダルに輝いた村田諒太選手と同じ世界の頂点を東京五輪で目指します。若き天才ボクサー、堤駿斗選手の強さの秘密に迫ります。

半端ないスピードで確実にポイントを取る「左ジャブ」

ボクシングといえば、強烈なパンチがヒットして選手がマットに倒れる「ノックダウン」や、10秒たってもマットから立ち上がれない「K.O」=ノックアウトといったシーンを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。しかし、わずか3ラウンドで争うオリンピック競技、アマチュアボクシングは、ド派手なノックアウトよりもポイントで勝敗が決まるケースが多いのが特徴です。

相手の顔面やボディ(ベルトより上の胴体)のパンチを有効打とし、3ラウンドが終了した時点でポイントの高い選手が勝者となります。相手がノックダウンしても「K.O」に至らなければ、勝敗が決することはないので、相手を倒すパンチよりも、正確にパンチをヒットさせる技術が求められるのです。

確実にポイントを稼ぐ上で、堤選手が得意としているのが、相手との距離を測ったり、けん制したりするジャブです。左の拳で繰り出す速くて正確な“左ジャブ”は、相手にダメージを与える強さも兼ね備えていて、スパーリングで対戦したWBA世界バンタム級チャンピオンの井上尚弥選手からも絶賛されたほど。日本ボクシング連盟の菊池浩吉副会長も堤選手の「左ジャブ」を高く評価しています。

菊池浩吉 日本ボクシング連盟副会長

菊池浩吉副会長

アマチュアボクシングでは、ダウンは奪ってもあくまでワンヒットにすぎません。試合自体も3ラウンドしかありませんから、「スピーディーな技術合戦」になります。堤選手はこうしたスピーディーな展開でポイントを奪える左ジャブを持っています。加えてすごいのは、パンチに力があること。アマチュアではダウンにポイント以上の意味がないと言いましたが、パンチ力は相手の動きを止め、勇気を削ぐための武器になります。堤選手の左は速さだけでなくパワーもある。まれにみる逸材です。

ノックアウトが取れる強烈な「左ボディー」

しかし、堤選手は、2018年のアジア大会で壁にぶち当たりました。1回戦でモンゴルの選手にまさかの敗戦、高校1年生の時以来の黒星を喫したのです。東京五輪への試金石と考えていた大会での敗戦、堤選手がその屈辱から導き出したのは、左のパンチの強さを磨くことでした。

堤駿斗選手

堤駿斗選手

アマチュアだから軽く打つとか、パワーがなくてもいいとは思っていません。自分の理想のボクシングは、相手に当てさせずに自分が当てて倒すボクシングです。オリンピックでは左ジャブでポイントを奪うだけでは勝てない相手が出てくると思うので、パンチ力、相手の動きを止めるパンチの強化に取り組んでいます。

堤選手が強化に取り組んでいる相手の動きを止めるパンチ、それは、相手の胴体に打ち込む強烈な「ボディーブロー」です。実は、堤選手は、高校時代からたびたび「ボディーブロー」で、アマチュアボクシングでは珍しい「K.O」=ノックアウト勝ちを収めてきました。その「ボディーブロー」に磨きをかけようとしているのです。

堤駿斗選手

高校2年生までは自分のパンチが強いと思ったことはなかったのですが、3年生になってから相手をK.Oで倒すことも多くなってきて、自信がつきました。ボディーブローは、相手の動きを止めたり、遅くしたりする際にも有効だと思うので、左ジャブからの展開を早くして攻撃をたたみかけて、ボディーを打ち込めるような形に持っていきたいです。

パンチの威力を高める「体幹トレーニング」

強烈なパンチに磨きをかけるため、堤選手が長年取り組んでいるのが、体の内側の筋肉を鍛える「体幹トレーニング」です。体の奥にある「インナーマッスル」を鍛えて体幹を強くすると、パンチの威力の源となる腕や腹や背中などの筋肉のパフォーマンスが高まり、体全体の安定性も向上します。

堤駿斗選手

中学生の頃から特に体の内側の筋肉を鍛える体幹トレーニングに取り組んできました。上半身だけでなく下半身のインナーマッスルを鍛えることも大事です。外側の筋肉は普通の筋トレでついてくるんですけど、内側の筋肉は、ゆっくりした動きで静止するような特別な体幹トレーニングをしないと付かないんです。

そして、体幹の強さをパンチの威力に変えるのが、サンドバック打ちや、トレーナーのミット目がけてパンチを打つミット打ちといった実戦的なトレーニングです。堤選手は、パンチを打つ際にも体の内側の筋肉を効果的に使うことを意識していると言います。

堤駿斗選手

ウェイトトレーニングで筋肉量を増やすことも大切なのですが、パンチで打つ筋肉をつけるためには、やはりパンチを打つのが一番だと思います。特にサンドバックの打ち込みで体の内側の筋肉を意識しながらできるだけ強いパンチを打ち込むことを心がけています。

ボクシングには、「左を制する者は世界を制する」という格言があります。確実にポイントを稼ぐハイスピードの「左ジャブ」とノックアウトを狙う強烈な「ボディーブロー」。二つの“左”を武器に世界の頂点を目指す堤選手に注目です。

                   
※NHKサイトを離れます

関連記事

    人気の記事ランキング

      記事ランキングをもっと見る

      最新の記事