読み込み中です...

2019年9月17日(火)

五輪金メダルも夢じゃない!リレーで日本が勝つための勝利の条件

2017年9月に桐生祥秀選手が男子100メートルで日本人初の9秒台となる9秒98を出して以来、勢いが止まらない陸上・短距離。先立つ2016年リオオリンピックでは、400mリレーチームが銀メダルを獲得し、その躍進を予感させました。これは東京オリンピックでのリレー金メダルも夢じゃない!?そこで100m走と400mリレーで、世界最速を目指すために必要な3つの「勝利の条件」を分析しました。

勝利の条件①減速させない走りを極める

2019年6月の日本選手権で100m王者となったサニブラウン アブデル・ハキーム選手。その決勝での走りを分析すると、スタートで出遅れたにも関わらず40m地点で逆転したサニブラウン選手の強さの秘密が明らかになりました。

スタートでの反応では、サニブラウン選手は8人中7番目と出遅れた

最初のポイントは、「顔の向き」にありました。100m走の選手がスタートした直後、顔を下に向けているのを見たことはありませんか?あれは、スタート時の前傾姿勢から体が起き上がってしまうのを抑えるための姿勢なのです。上体が立ってしまうと、地面を後ろに蹴る力が上向きになってしまい、前に進む力が削がれてしまいます。

上体が立つと、地面を蹴る力が上に向いてしまう

30m地点で顔を上げた桐生祥秀選手に比べて、サニブラウン選手は前傾姿勢が保てるギリギリの40m地点まで顔を下げて走っています。

30mを過ぎ、顔を上げる桐生選手と下を向いたままのサニブラウン選手

「ストライド(1歩の歩幅の大きさ)」と「ピッチ(1秒間の歩数)」のバランスも鍵となってきます。通常、ストライドが伸びるとピッチが下がってしまいます。大きく脚を広げると、どうしても次の1歩までに時間がかかってしまいますよね。逆に、ピッチを上げるとストライドが小さくなります。そのため、この2つの相反する要素のバランスが大事になってくるのですが、データから、サニブラウン選手はこのバランスが巧みであることが見えてきました。

ピッチを落とさずにストライドを伸ばすサニブラウン選手

次は、「トップスピード到達点」に注目してみます。文字通り、どの地点で最高速度に達したかという記録ですが、桐生選手が61mなのに対しサニブラウン選手は65mです。一見すると、先にトップスピードに達した桐生選手の方が速そうだと思いますよね?しかし、100m走ではトップスピードに達してからゴールまでどのくらい減速するかの勝負なのだとか。なので、ピークが後ろにくるほどスピードが落とさずに走ることができるんです。

サニブラウン選手のほうがトップスピードに到達するのが遅い分、減速区間も短い

勝利の条件②推進力を高め、スピードを維持する

続いては、2018年8月に開催されたダイヤモンドリーグで、9秒79の記録を出し優勝したアメリカのクリスチャン・コールマン選手。現在、世界ランキング1位、東京オリンピックの金メダル最有力候補と言われる彼の強さの秘密とは一体なんなのでしょうか。

先ほどと同じように分析を進めたところ、サニブラウン選手の方がより後ろでトップスピードに達していたことがわかりました。では、なぜコールマン選手はあのような記録が出せたのか?それは、トップスピードに達した後もそのスピードを維持し続ける「低い走り」に秘密があったのです。

コールマン選手は、2位の選手と比べて腰の上下動が少ない

コールマン選手の走る時の姿勢を見てみると、腰の位置があまり変わらず、重心の上下動が小さいですよね。通常、地面を蹴って走ると蹴った力で上に浮いてしまいます。彼は、その浮いてしまう力を抑えて走っているのです。

コールマン選手は地面を蹴る際に、膝が伸びきっていない

そのために着目すべきが、「膝」。地面を蹴ると、普通は膝が伸びてしまいます。コールマン選手は、膝が伸びきる前に脚を引き出すことで、よりコンパクトな走り方をしているのです。この走り方には、腸腰筋という筋肉が大きく関係しています。

脚を前に引き出すために重要な役割を持つ腸腰筋

腸腰筋とは背骨と骨盤、そして太ももをつなぐ筋肉で、主に後ろに蹴り出した脚を前に持ってくる時に使われます。この強靭な筋力でコールマン選手は、弾むような走りではなくスライドするような無駄のない走りを実現できているのです。

勝利の条件③個々の能力を生かした走順

2019年5月の世界リレー大会で、400mリレー日本代表にまさかの悲劇が起こりました。日本はトップを維持していたにも関わらず、3走・小池祐貴選手から4走・桐生祥秀選手へのバトンパスでバトンが宙に浮いてしまい予選敗退となってしまったのです。バトンパスで高い評価を受けている日本代表であるだけに、驚きと落胆は大きかったでしょう。

世界リレーでまさかのバトンミス 予選敗退となった

しかし、その1週間後に行われたゴールデングランプリ。同じメンバーで挑んだリレーチームは、2位のアメリカを大きく引き離して優勝しました。勝利のカギとなったのは「バトンパスのミスを防ぐこと」と「適性にあった走順」です。

まず、バトンパスでのミスを防ぐために日本陸上競技連盟の強化/科学委員会とチームは、それまでに失敗してきた映像を見て、話し合いを重ねました。

そしてもうひとつのカギである走順。選手の走り方や特性を生かした区間を走ることで初めて、チームとしての力が発揮できます。優勝したゴールデングランプリでの走順を見ていきましょう。

まずは、唯一スターティングブロックから走ることになる1走。この1走を任されたのが多田修平選手。持ち味である鋭いスタートから中盤にかけての加速力は、最初に他のチームを引き離す大きな武器になるでしょう。

400mリレー 第1走者 多田修平選手

2走は、前後のバトンの受け渡しをどこで行うかによって走る距離が異なり、最長で130mを走ることになる区間です。そのため、速いスピードをどれだけ維持できるかが重要となります。そこで、2走はスピードの持久力に評価の高い山縣亮太選手が走りました。

400mリレー 第2走者 山縣亮太選手

3走の小池祐貴選手は、2018年アジア大会200mで金メダルを獲得しています。カーブを含むコースが得意な小池選手が、その技術を生かせるポジションです。

400mリレー 第3走者 小池祐貴選手

そして、アンカーの桐生祥秀選手。彼のスピードはもちろんのこと、前に他国の選手がいた時に抜ける爆発力がある選手だと評価を受けています。

400mリレー 第4走者 桐生祥秀選手

さらに来年の東京オリンピックに向けて、注目されるのがサニブラウン選手のリレーへの起用です。好記録を出し、リレー日本代表候補にも選ばれています。しかし、起用されるかどうかはバトンパスにかかっています。

アメリカで練習をするサニブラウン選手は、オーバーハンドパスという手のひらを上向きにして渡す方法しか経験がありません。

2019年6月全米大学選手権、オーバーハンドパスでバトンを受け取るサニブラウン選手

一方で、日本代表はスピードを落とさずにバトンを渡せるアンダーハンドパスを採用しています。このアンダーハンドパスを習得できれば、起用される可能性も高いかもしれません。

日本は走る姿勢のまま自然にバトンを渡すことが出来るアンダーハンドパスを強みとしている

走り方の姿勢からスピード変化まで、細かい分析をしてみるとさまざまなところに勝利の条件が隠されていました。人類最速の男を決める100m走、個性とチームワークが融合する400mリレー。レースも成長のスピードも速い日本人選手に置いていかれないようご注意を!

                   
※NHKサイトを離れます

関連記事

    人気の記事ランキング

      記事ランキングをもっと見る

      最新の記事