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2019年9月17日(火)

男子顔負けの強烈パンチで初メダルへ 女子ボクシング・並木月海

女子ボクシングといえば、お笑いコンビ「南海キャンディーズ」の「しずちゃん」こと山崎静代さんが、ロンドン五輪出場を目指したことを思い出す方も多いでしょう。「しずちゃん」が果たせなかった五輪出場の夢をつかみ、しかもメダル有力候補とされる選手が現れました。並木月海(なみきつきみ、1998年 千葉県出身)選手です。2018年の世界選手権で銅メダルを獲得、競争が激しいフライ級で世界トップレベルの実力を誇ります。並木選手の武器は、男子顔負けの強烈なパンチ、スピードのあるフットワークで俊敏に動き、重いパンチを相手の顔面に確実にヒットさせます。並木選手の強さの秘密を取材しました。

リーチの短さをフットワークで補う

女子ボクシングが五輪の正式種目に採用されたのは、2012年のロンドン大会から。日本女子は、東京五輪で初出場、初メダルを目指します。階級は、フライ級(51kgまで)、フェザー級(57kgまで)、ライト級(60kgまで)、ウェルター級(69kgまで)、ミドル級(75kgまで)の5つ、並木選手は一番軽いフライ級です。

オリンピックのボクシング競技は、3ラウンド制で行われます。ノックアウトのような派手なプレーよりも、ポイントで勝負が決まることが多いのが特徴です。相手の顔面やボディに有効なパンチを当て、ラウンドごとにジャッジが採点、3ラウンドが終了した時点でポイントの高い選手が勝者となります。

このため、パンチを正確にヒットさせて確実にポイントを稼ぐ必要があるのですが、並木選手の身長は153cm、同じフライ級の中でも小柄でリーチが短いため、相手に接近して、間合いを詰めないとパンチが届きません。並木選手はこの不利な状況を、鍛え抜かれたスピードのあるフットワークで補っています。

並木月海選手

並木月海選手

国際大会では、私より小さい選手と戦ったことがありません。手足も私より全然長いんです。そういう相手と戦うとき、相手が私に届きそうで届かない距離で向き合いながら、相手の間合いに入ってパンチを打ちます。相手のパンチをもらわずに、間合いに入るスピードと、それを繰り返すスタミナが必要ですが、自信はあります。

空手とキックボクシングで培った「前に出る力」

スピードのあるフットワークを体に覚えこませるために練習で繰り返すのは、相手の間合いに入るタイミングの測り方です。前に出て相手の懐に入るには、一瞬のタイミングを逃さないことが大事ですが、パンチを当てたいという気持ちが強すぎると、防御がおろそかになり、無防備な状態でパンチをもらうこともあります。5歳から始めた極真空手や小学校3年生から学んだキックボクシングを通して培われた「前に出る力」が、並木選手の軽快なフットワークを支えているのです。

ミット打ちでも一気に間合いを詰める練習を繰り返す

並木月海選手

世界の舞台で勝つためには、前に出続けながら相手のパンチをもらわない技術が必要です。相手の懐に入ってパンチを打って、見えないところからパンチを打って、小さいので前に出て行って、背の高い選手がやれないようなボクシングをしたいと思っています。

控えめな女の子が放つ強烈なパンチ

ハードパンチが並木選手最大の武器

2012年ロンドン大会と2016年リオ大会でメダルを獲得したのは、欧米などの体格の大きい選手でした。小柄な並木選手がその中に食い込むための最大の武器は、持ち前の強烈なパンチです。その威力は、ミットで受けるコーチの掌が赤く腫れ上がるほど。日本ボクシング連盟の菊池浩吉副会長は、並木選手の前に出る攻撃的なファイトスタイルと男子顔負けの強烈なパンチならば、欧米の大型ファイターとも互角に戦えると太鼓判を押します。

菊池浩吉 日本ボクシング連盟副会長

菊池浩吉副会長

並木選手は、ボクサーのタイプで言えば、「ファイター」タイプの選手です。ウエイトの乗ったストロングパンチは男子顔負け。アマチュア・ボクシングは「パンチ力は関係ない、どれだけパンチが当たったかのポイントだ」という言い方をよくされますが、パンチが効けば、もちろんジャッジの印象に影響します。並木選手のパンチは、ポイント獲得にも、判定にも有利に働く大きな武器です。

前に出る力を強化するトレーニング

並木選手は、パンチ力を強化するための特別な筋力トレーニングは行なっていません。あくまで、ボクシングの動きの中で、筋力を鍛えています。取材に訪れた時は、自分の体に巻き付けたゴムチューブを男性コーチに引っ張ってもらいながら、サンドバッグ打ちを繰り返していました。このトレーニングを行うことで、腕だけでなく下半身の力を効率よくパンチに乗せることができるようになると話してくれました。

並木月海選手

重い物を持ったウェイトトレーニングをしているとか、ものすごく筋トレをしているとか、そういうことはありません。それでも、パンチ力には自信があります。パンチ力が強い理由は、自分ではボクシングでついた筋肉があるからだと思っています。

子どもの頃の並木選手は、母親の陰に隠れて小さくなっているような、引っ込み思案の女の子だったそうです。そして格闘技をしていない時の並木選手は今も、控えめでおとなしい女の子のままです。しかし、リングに上がって“格闘技のスイッチ”が入ると表情が一変、強烈なパンチが牙をむくのです。控えめな並木選手を格闘技へと駆り立てるもの、それは、国の代表として脚光を浴びながら戦う“オリンピックの大舞台”の存在です。

並木月海選手

中学校1年生のとき「女の子らしくなろう」と思って一度格闘技をやめたんです。1年間は格闘技のない生活をしましたが、物足りなくなって、近くのボクシング・ジムに通い始めました。最初は体を動かすつもりだったのですが、女子ボクシングがオリンピック種目に決まってからは、本気でやり始めました。東京での金メダルは、少し前までは「夢」でしたが、いまこの練習を積み上げていけばつかめるところまで来ている、夢が目標に変わったと感じています。私、格闘技のときだけは、人前に出ることも目立つことも嫌じゃないんです。

日本人女子ボクサーとして初めての五輪出場、そしてメダルへ。並木選手は、その思いを胸に、今日も汗を流します。

                   
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