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2019年9月11日(水)

マラソン東京五輪への"一発勝負" MGCに挑む彼女たちの理由

いよいよ目前に迫ったMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)。オリンピックの花形種目のひとつ、マラソンの出場枠を争うこのレースには12人の女子選手が出場します。

今回は、その中でも注目を集める3人の選手に密着!彼女たちが走り続ける原動力とは一体何なのでしょう?

一発勝負の大舞台!“MGC” とは?

MGCは、マラソン日本代表選考のための新しいレースです。これまで、オリンピックの出場枠は複数のレースで総合的に判断されてきましたが、その基準があいまいだと度々物議をかもしてきました。

MGCはそうした課題を解消、レースの上位2名が自動的にオリンピックに内定するという規定になっています。選手にとってはまさに一発勝負の大舞台なのです!

鈴木亜由子選手

仕事も練習も“まじめでストイック”!

国立の名古屋大学を卒業し、普段は日本郵政で働いている鈴木亜由子選手(27歳)。地道な作業も手を抜かない鈴木選手について、同僚も「まじめでストイック」といいます。

その姿勢は練習にも表れていて、全体練習の30分前に姿を見せて自主練をこなし、全体練習が終わっても上半身を鍛えるため、メニューにない懸垂を始めます。

鈴木亜由子選手

目の前の課題にしっかり取り組んで、地道に積み上げていくことが大事かなと思っています。

厳しい練習に裏打ちされた安定した走り

これまで5000メートルや10000メートルの種目でオリンピックや世界選手権への出場経験がありましたが、マラソンは2018年8月の北海道マラソンで初めて挑戦しました。

この日の気温は約30度と厳しい暑さとなりましたが、鈴木選手のペースは落ちません。練習に裏打ちされた安定した走りを見せ、2位に2分半の差をつけ圧勝!

初めてマラソンに挑戦した2018年8月の北海道マラソン

さらに2019年2月、ハーフマラソンで野口みずきさんに迫る歴代3位の記録をマーク!この1年で大きな結果を残してきました。

鈴木亜由子選手

自分の強みは、暑さは得意ということと、あとは集中力は負けないかなと思っています。

リオ五輪、無念の欠場

めきめき頭角を現している鈴木選手ですが、ここに至るまでには、さまざまな苦労がありました。

鈴木選手が陸上を始めたのは小学校のころ。当時から圧倒的なスピードで注目を集めてきましたが、高校生の時には練習のし過ぎで2回も疲労骨折。真面目な性格が裏目に出てしまったのです。

けがを乗り越え、初めて立った世界最高峰の舞台、トラック種目の代表としてリオオリンピックに挑戦するも、直前のオーバーワークでまさかの疲労骨折。得意の10000メートルを欠場せざるを得ませんでした。

鈴木亜由子選手

その舞台に自分が立ったのに、その場に自分がいる実感がなかった。


それがすごく悲しくて、ああいう思いはしたくないし、必ず東京オリンピックの舞台にまた立って、納得のいく走りがしたいです。

大会直前MGCにかける思い

MGCを目前にした夏、鈴木選手は北海道で合宿に臨みました。本番が近づくにつれピッチを上げ練習をしますが、かつて疲労骨折した足に違和感が出ていました。

3年前のリオ大会の記憶が頭をよぎります。故障の不安については「日々ある」という鈴木選手。それでも「不安だ不安だと言って不安が払拭されることはないので、日々ほんとに後悔しないようにやることをやるだけですね」と語ります。

鈴木亜由子選手

マラソン走る前ってすごい“ああゴールしたい”って思うんですよね。“無事にゴールしたい”みたいな。


自分の走りがしっかりできてゴールできたら、きっと本当に東京オリンピックにつながるんだなって思うので、そういうレースができたらしたいです。

自分の限界と向き合いながら、鈴木選手はスタートラインに立とうとしています。

松田瑞生選手

明るく元気な大阪娘

優勝候補である鈴木選手の因縁のライバルが、24歳の松田瑞生選手。

一昨年の日本選手権10000メートルでは、松田選手が猛烈なラストスパートで鈴木選手に逆転勝利!トラック種目で激しくしのぎを削ってきたふたりが今度はマラソンに舞台を変え、オリンピックの切符を争います。

松田選手にマラソンを走る理由をたずねると「たくさんテレビに映れるじゃないですか、2時間半も。それが嬉しいからです。親が喜ぶんです。テレビに映ると」とおちゃめなコメント。

大阪生まれ、大阪育ち、底抜けに明るい性格です。

そんな松田選手の代名詞は“腹筋”。腹筋を鍛えるトレーニングを毎日10種類、合わせて1500回(!)も行っているのだそう。

この腹筋が生み出すのが松田選手最大の武器であるラストスパート。強靭な腹筋を活かしたぶれないフォームで最後まで力強い走りを持続します。

支えになってくれる母親の存在

周囲を明るくする笑顔が素敵な松田選手。そんな彼女の支えになっている存在が、母の明美さんです。中学で陸上をはじめた松田選手の応援に、全国各地にかけつけ、見守ってきました。

明美さんに松田選手の性格を聞くと、「めちゃめちゃネガティブやで」と笑います。

実は弱気な性格だという松田選手。

高校1年と2年の時に出場した全国大会では大舞台の重圧に負け、大会で思うような結果を出すことができませんでした。そんな松田選手に向けて明美さんが送った言葉が、“やる気 根気 元気 瑞生”。

“やる気 根気 元気 瑞生” 母の言葉をハチマキの裏に 

努力してきたことを信じ、楽しく走ってほしいと背中を押したのです。この言葉は当時つけていたハチマキの裏にも書かれています。そして高校3年生の時、お母さんの言葉を胸に信じて走り、インターハイ6位入賞を果たしました。

自分を支え続けてくれるお母さんを喜ばせたい。その最高の舞台が東京オリンピックです。

日本選手権では無念の10位

松田選手は2019年5月、MGCで鍵となるスパート力を試すため、日本選手権の10000メートルに出場。明美さんも応援にかけつけました。

しかし、ライバルの鈴木選手がペースを上げるも、松田選手はついていけません。

どんどん順位を落とし結果は10位。鈴木選手は2位でした。

大会後、明美さんは娘が出てくるのをじっと待っていました。

「今まででいちばん練習してきたのに、いちばんあかんかった」とお母さんにしがみつく松田選手。のしかかるMGCの重圧。松田選手はその大きさに苦しんでいました。

日本選手権の後、走る気になれず練習を休んでいた松田選手。お母さんの明美さんのもとに帰りました。待っていたのは、松田選手が大好きな料理。陸上を始めたころから、お母さんが栄養学を学んで作ってくれたメニューでした。

松田瑞生選手

あんまり陸上の話せずに私の好きな食べ物をなんでも作ってくれたり、自分が自然体でいられるようにしてくれるのがいちばんありがたいですね。

最後の合宿で思い描いた走り

元気をチャージした松田選手は、MGCに向けてアメリカでの最後の合宿へと向かいました。合宿中、繰り返し見ていたのは、明美さんが作ってくれた手料理の写真が並ぶ日記です。

合宿の後半、松田選手はMGC本番を想定した重要な40キロ走の練習に挑みました。

最後の5キロで一気にスピードアップするという過酷な設定にも関わらず、ラストスパートでぐんぐんペースを上げていき、最後の1キロで最も速い3分13秒を記録!MGCで思い描く走りをやり遂げました。

松田瑞生選手

前までは“ああ、いよいよやなあ”みたいなちょっとマイナスな意味のいよいよという感じだったんですけど、今は結構レースは楽しめるんじゃないかなって思います。


きっとお母さんは叫んでいると思うのでずっと、レース後に泣いている姿が思い浮かびます。最高の結果を残して恩返しがしたいです。

自分の目標のため、そして母への思いを胸に夢の舞台へと挑みます。

福士加代子選手

試練の連続だったこれまでの道のり

最後の注目選手は、虎視眈々とMGCで勝利を狙う福士加代子選手。37歳です。

常に笑顔で飾らない人柄。所属チームのメンバーとともに合宿を続けていました。

福士選手はMGC出場選手最年長。これまでのマラソン人生、さまざまな試練と戦ってきました。

2007年、日本選手権10000メートルで優勝

福士選手は圧倒的なスピードでトラックの女王と呼ばれ、日本選手権の10000メートルで6連覇という輝かしい成績を残してきました。

ところが、その後マラソンに転向したものの、終盤までスタミナが持たず失速するレースが続きました。

リオ五輪での福士選手 04年アテネ大会から4大会連続で出場した

メダル獲得を宣言して出場したリオオリンピックも結果は14位。現役引退も考えましたが、このままでは終われないとリオ大会以来3年ぶりにマラソンを走ることを決断。

今年3月の名古屋ウィメンズマラソンでMGC出場権を獲得

執念で自己ベストに次ぐタイムをたたき出し、MGC出場権をつかみとったのです。すべては東京オリンピックで最後に納得の走りをするため。福士選手は今回の大会にマラソン人生をかけています。

MGC前、最後のレースを棄権 それでもあきらめない

ところが、MGCを前にした最後の実戦となる10000メートルのレースで、福士選手はアクシデントに見舞われます。レースの半分を過ぎた時に、自らコースを外れて途中棄権。じつは、大会前の合宿で足を痛めていたのです。

福士選手

膝の動きが悪くなって。いつものダメになるパターン、これ出たらダメだなっていうのがあった。これ以上やってもロクな走りにならないから

それでもあきらめない福士選手。何度も挫折を味わってきたマラソン人生、苦しみながら、もがきながら走り続けてきました。

福士加代子選手

今いちばんしんどいっちゃしんどいですね。やめちゃいけない、やんなきゃいけないところのその繰り返しですね。


全然自分の理想通りにならないからまあ嫌ですね。嫌ですけど、やっちゃったから、はまっちゃってますよね。この道を選んじゃったのでもうこれしかないですよね。これからこうやって積み重ねていくしかないね。

それぞれの思いを胸に挑む42.195キロの道のり。誰が東京オリンピックの出場権を獲得するのか。9月15日のMGC、選手たちの熱い戦いから目が離せません!

                   
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