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2019年8月29日(木)

ボート日本代表の強化策を徹底解剖 "フランス式メソッド"の正体

東京五輪のボート競技は、クルーの人数と操るオールの数によって男女それぞれ7種目が行われます。日本代表=「クルージャパン」は、体格差によるハンデがほとんどない「軽量級ダブルスカル(2人乗り)」に照準を合わせて強化を行ってきました。強化策の柱は、2016年のリオ五輪後から取り入れたフランス式メソッドです。東京五輪で初の表彰台をねらう「クルージャパン」の強化策について、日本ボート協会の長畑芳仁強化委員長に聞きました。

フランス式メソッドで「ボート流ジャパンウェイ」を築く

2018年アジア大会での武田匡弘・宮浦真之ペア

Q: ボート競技の中で唯一体重制限(男子72.5kg以下、女子59kg以下)がある「軽量級ダブルスカル」は、小柄な日本人選手が海外勢と互角に戦える種目です。これまでのオリンピックの最高成績は男子6位、女子9位ですが、2018年のアジア大会では男子の武田匡弘・宮浦真之ペアが金メダルに輝き、女子の高島美晴・瀧本日向子ペアも4位に入りました。フランス式強化策の成果でしょうか?

金メダルを獲得した武田匡弘・宮浦真之ペア(2018年アジア大会)

長畑芳仁 強化委員長

フランスから軽量級金メダリストのギザビエ・ドルフマン氏を招き、フランス式を取り入れたわけですが、我々は長期間負け続けたマインドを「can’t do=できない」から「can do=できる」に変えて10年間進化し続けるためのマインドセットをしっかりしようと取り組んでいます。つまり、2020東京オリンピックとその後を見据えた長期的な視野で強化に取り組んでいまして、フランス式メソッドをやり続ける中で「ボート流ジャパンウェイ」を構築して2020年以降の発展につなげていきたいと考えています。

日本ボート協会 長畑芳仁強化委員長

「こぐ」数を減らして、「こぎ」の質を高める

Q:ボートは、両足を固定した状態で前後にスライドするシートに座り、膝を曲げたり伸ばしたりしながら水上の2000mのコースを滑走するとてもタフな競技です。日本人選手の課題は、後半に失速してしまう点ですが、フランス式強化策でこの課題をどのように克服しようとしているのでしょうか?

レンジ(こぎ幅)…オールで水中をこぐ幅のこと

長畑芳仁 強化委員長

少し専門的になりますが、一言で言えば、「ストローク」の質を高めるということです。1分間にオールをこぐ回数を「レート」といいますが、以前の22を17に減らしました。ストロークの数を減らすとスピードが落ちるわけですが、その分、1回にこぐ幅「レンジ」を広げました。レースでは同じレートでこいでも勝者と敗者が出ますよね。その差は、こぐ「強さ」の差です。「低レート」で「強く」こぐ、この練習に取り組むことで、ストロークの質が上がり、後半もスピードが維持できるようになってきたんです。

長畑芳仁 強化委員長

2000mのコースのうち、スタートダッシュとラストスパートは瞬発力が不可欠ですが、残りの約8割は持久力の勝負です。そこで、持久力を強化する筋力トレーニングに取り組んできました。すごく重い物を瞬間的に持ち上げるのではなく、さほど重くなくても長時間上げ続けるトレーニングです。私の世代はベンチプレス120kgなんて当たり前でしたが、最近の選手は100kgも上げられません。その代りに42kgを70回、120回と反復してやっています。サーキットトレーニングというのですが、約2時間、筋肉を刺激し続ける相当にタフでつらいトレーニングです。

クルージャパン「軽量級ダブルスカル」の精鋭たち

東京五輪でメダル獲得を狙う「軽量級ダブルスカル」で、日本ボート協会が有力な代表候補としている選手をご紹介しましょう。まずは男子4人。

頼りになるリーダー 池田裕紀(いけだ・ゆうき)

脚力と体幹能力が強く、安定したスピードでこぎ続けられる持久力が持ち味。チーム最年長で頼りになるリーダー的存在。1988年生、静岡県出身

ボート界のオールラウンダー 西村光生(にしむら・みつお)

全日本選手権でダブルスカルをはじめ、エイト、舵手なしフォアでも優勝の万能選手。力強いオールさばきが最大の武器。1990年生、愛媛県出身

軽量級の勝負師 佐藤翔(さとう・かける)

2015年のユニバーシアード大会で軽量級フォア・金メダルを獲得。強靭な肉体とメンタルの強さを合わせ持ち、レースの駆け引きにも長ける。1994年生、岩手県出身

アジアNo.1のエース 武田匡弘(たけだ・まさひろ)

2018年のアジア大会で金メダルに輝いた日本男子のエース。自身のSNSでネコの姿を公開する愛猫家。1996年生、福井県出身

ボート日本代表 大林邦彦コーチ

ボート日本代表 大林邦彦コーチ

「低レート」にするとストローク1本が重いんです。せっかく加速しても次のストロークまでにスピードが落ちるので、再び加速しなければならないからです。体への負荷が大きくなる分、体力と技術共にレベルアップが期待できるので、ストロークの効率性に成果が出ています。更に効率性を高めて東京五輪に向かっていけたらと思います。

次に、女子はこちらの4選手。

驚異のストローク 上田佳奈子(うえだ・かなこ)

パワフルでスピード感あふれるストロークが武器。2019年のワールドカップⅠで5位入賞し飛躍を続ける。1989年生、滋賀県出身

日本女子の絶対女王 大石綾美(おおいし・あやみ)

リオ五輪に出場し、全日本選手権では3連覇を成し遂げた。長い手足を生かしたストロークは世界トップクラス。1991年生、愛知県出身

ボート界を代表する理系女子 山領夏実(やまりょう・なつみ)

熊本大学工学部建築学科卒の“リケジョ”。物理学を使って効率的なこぎ方を導き出す。1991年生、福岡県出身

ラスト500mの女王 冨田千愛(とみた・ちあき)

リオ五輪では大石綾美選手とペアを組んだ。ラスト500mで驚異の追い上げを見せる持久力は折り紙つき。1993年生、鳥取県出身

ボート日本代表 吉田理子コーチ

ボート日本代表 吉田理子コーチ

女子軽量級は、あとちょっとでメダルに手が届くかどうかというところまで来ています。でも、そのレベルが一番きっ抗しているので、一歩抜け出さないとメダルには届きません。東京五輪では、初のファイナルA(1〜6位までの決勝戦)に進出して、ぜひメダルを狙って欲しいと願っています。

チーム力で初のメダルを目指す

西村光生選手(左)・ 池田裕紀選手(右)

Q:長期間に渡って非常にタフなトレーニングを続けるのは、肉体面はもちろんメンタルの面でもかなりの強さが必要です。大林コーチも吉田コーチもフランス式強化策に手応えを感じていらっしゃいますが、長畑強化委員長はいかがでしょうか?

長畑芳仁 強化委員長

フランス式メソッドを教えてくれているギザビエ氏はもちろん、海外の監督やコーチからも「日本人は世界で最もタフな練習に耐えられる。他のどの国も真似することはできない」と言われます。日本人の真面目さや愚直に取り組む姿勢に加えて、互いに支え合い励まし合うチームワークがあるからだと思います。こうした日本の特性を生かして強化を続け、東京五輪では、初のメダル獲得を目指します。メダル獲得こそがボートの知名度アップとその後の発展、普及に直結すると確信しています。

                   
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