読み込み中です...

2019年8月23日(金)

「球数制限」を考える ②医師たちからの提言

ことしも熱いドラマの連続となった高校野球。

しかし同時に、熱戦が続けば続くほど、選手の疲労やケガを心配する声が上がっています。

特に議論に上がるのが、ピッチャーの「投げ過ぎ」を防ぐ「球数制限」という言葉。

高野連も今年4月に有識者会議を発足させ、けが防止のための具体的な検討を始めていますが、この「球数制限」は果たして選手を守る決め手になるのか。2回シリーズで考えます。

第2回は、医師の立場から若い選手たちを守ろうとする人たちからの提言です。

ケガを防ぐ5つの要素

「球数制限だけで、一人一人の選手のけがをみんな予防するというのは、難しいと感じています。」

医師の馬見塚尚孝さんは、現在の「球数制限」という言葉が独り歩きした現状に、そう警鐘を鳴らします。

馬見塚さんは、国内では珍しい野球医学の専門家。神奈川県にある馬見塚さんのクリニックには日々多くの野球少年たちがやってきます。医師の立場から見て、投手の故障を防ぐには、球数制限だけでない「複数の要素」に目を向けなければいけないと言います。

馬見塚医師

実際に外来には、投球数をすごく制限しているのに肘を痛めたり肩を痛めたりした選手が来ています。投手の故障を予防するためには、私は5つの要素があると考えています。

馬見塚さんが考える、ケガを予防するための5つの要素。
投球数だけではなく、全力で投げたのか軽く投げたのかといった投球の強度や、連投による疲労が残っていないかといったコンディション。そしてフォームの良し悪しといった投球動作や、身長や骨の成熟が十分かどうかといった個人差。この5つ要素を全体として考えていく必要があるといいます。

馬見塚医師

5つの要素が関係しますから、投球数以外にもぜひ注目してほしいです。もし投球数を増やしたいのなら、何か他の要素を良くしていかなきゃいけない。例えば投球フォームを改善するとか、強度を下げるために力を抜いて脱力して投げるとかですね。

そして、この5つの要素を踏まえた上でさらに必要なのは、選手や指導者の意識改革ではないかと提言します。

馬見塚医師

監督に権限が集中する、ありがちなチームの形を変えることが大事だと思います。選手自身が自立をして自分の体を守る意識を持つこと。そして指導者もそれを尊重する態度を持つ事が大切なのではないでしょうか。

野球少年の肘に迫る危機

今、投手の投げ過ぎ防止に関わる議論の中心にあるのは高校野球です。しかし、もっと前の小中学生の段階からケアする事が重要だという認識が広まってきています。

今年、全日本軟式野球連盟が発表した調査結果によると、高校で肘を痛める選手の90%が「再発」であること。さらに、初めて肘を痛める年齢は、11歳から12歳が多いということがわかりました。

小中学生の段階でのケガを放置してしまう事で、事実上将来の夢を奪われてしまう子どもたちが後を絶たないという現状。少年野球の現場では、新たな取り組みが始まっています。

少年たちの異常を見逃すな

8月18日に神宮球場で開幕した、小学生の軟式野球全国大会。この大会に合わせて、成長段階の子どもたちを守るための取り組みが行われました。

今年から全日本軟式野球連盟は、900人を超えるすべての選手を対象に「検診」を開始。痛みを隠し無理をしてしまう子供たちがいないか、ケガを未然に見つけるのが狙いです。

痛みや違和感がないか、医師や理学療法士が子どもたちを1人ずつ問診し、エコー検査で肘の状態に異常がないか調べていきます。

診察が始まってしばらくして、今回の取り組みを中心になって進めた医師・古島弘三さんは危機感をあらわにしていました。

古島医師

障害だらけです。まだ1、2チームしか診てないですけど、正常な子の方が少ないくらいです。

子どもたちの中には医師から「じん帯と骨がはがれそうになっている」、「大会後に病院を受診してほしい」と告げられるなど、肘に異常が疑われるケースが少なくありませんでした。

医師の古島さんは、少年野球の指導者の意識改革が必要だと警鐘を鳴らしました。

古島医師

大事なのはこの子たちが障害なく野球を続けていく事。そうすればどこかで才能が開花するかもしれない。そういう可能性を摘み取らない事が、指導者の役割じゃないかと思います。

軟式野球連盟では、今大会から投手の1日の投球数を70球までに制限しました。さらに1日の練習は3時間以内、1年間の試合数は100試合以内などのガイドラインを設置し、包括的にけがの予防を進めていくとしています。


野球離れが進んでいると言われる中で、若い選手たちをどう守っていくのか。球数制限に限らず、指導者をはじめとした野球に関わる大人たちの意識改革が求められています。

思いきり野球がしたいという球児たちの思いを守るために、「球数制限」の議論を重要な一歩として、選手、指導者、保護者、そして野球ファンたちも考えを深めていかなければいけないのではないでしょうか。

                   
※NHKサイトを離れます

関連記事

    人気の記事ランキング

      記事ランキングをもっと見る

      最新の記事