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2019年8月31日(土)

科学が解き明かすトップアスリートの脅威の身体能力と判断力

7人制ラグビー銀メダル イギリス主将 トム・ミッチェル選手

リオデジャネイロオリンピックで正式競技となり、日本代表の活躍で一躍注目を浴びた7人制ラグビー。15人制と同じ広いフィールドを7人でカバーするため、選手には相手を振り切るスピードと無尽蔵のスタミナ、さらに力強さ、瞬時の判断力が高いレベルで求められます。世界の一流プレーヤーの秘密に迫ります。

リオデジャネイロオリンピックの7人制ラグビーで、キャプテンとしてイギリスを銀メダルに導いたトム・ミッチェル選手も、そんなスーパーアスリートの1人。ミッチェル選手を最新のスポーツラボに招いて、その肉体と頭脳のパフォーマンスを測定します。


体脂肪率~サッカープレミアリーグの選手をさらに下回る引き締まった肉体~

ミッチェル選手は身長1メートル77センチ、体重は85.1キログラム。ガッチリとした体格です。検査の前に基礎データとして体脂肪率を測ります。体脂肪率が低ければ低いほど、筋肉の割合が高いことを示します。

アメリカン・フットボールの選手は平均で15.3%、サッカーのプレミア・リーグの選手は12.5%、ミッチェル選手の体脂肪率はさらに低い12.3%でした。

ミッチェル選手

普通の人と同じ生活とはいきませんね。テイクアウトで食事を済ませるなんて論外です。常に体のために最適な食事をとらないといけません。オリンピックの舞台に立つためには不可欠なんです。

筋持久力~激しいコンタクトを重ねても高いパフォーマンスを維持~

最初の測定は筋持久力。ミッチェル選手の肉体を支える太ももの筋肉が、どれだけ負荷に耐えられるかを測定します。7人制ラグビーでは車の衝突事故に匹敵するような激しいぶつかり合いが繰り返されます。太ももの筋肉が強じんでないと、全てのプレーのクオリティが落ちてしまいます。

ミッチェル選手の太ももは長時間負荷をかけ続けた後でも優れたパフォーマンスを維持。筋持久力に秀でていることがわかりました。

ミッチェル選手

ラグビーは体に大きな負荷がかかるスポーツです。“老後は体がガタガタだな”と仲間と言い合っていますよ。痛みで週末を寝て過ごすこともあります。練習後のアイシングは欠かせません。生活スタイルを変えることすらあります。

スピード~加速力は短距離トップランナーに迫る~

次は、ミッチェル選手の走るスピードを計測します。このテストではスタートから5メートルのタイムと、20メートルのタイムを計測。さらに足が地面に着いている時間、「接地タイム」も測ります。20メートルのタイム3秒08は、他のスポーツの選手と比べてずば抜けたタイムではありません。

しかし、短い距離でトップスピードに乗せる加速力に優れていることが、“接地タイム”の短さに表れていました。世界レベルの短距離ランナーと比べてもその差はわずか100分の3秒でした。

ミッチェル選手

急激な加速や方向転換は、ラグビーで大きな武器になります。それを生かして相手との間合いを作り、かわしていくのが私のスタイルです。

ミッチェル選手

子どものころは、あらゆるスポーツをやりました。サッカー、クリケット、バスケットボールにテニス。幸運だったのは父がラグビー好きだったこと。8歳の時に地元のクラブに入れてもらいました。そのおかげでラグビーが好きになったんです。ラグビーでは大柄な力自慢の選手もいれば、信じられないほど俊敏な選手もいます。私はその中間、全ての要素を兼ね備えることを目標にしてきました。それが私の“売り”ですね。

判断力~F1ドライバーと比べても格段に優れる~

試合で最高のパフォーマンスを発揮するためには、肉体のスピードだけではなく、的確な判断を下すスピードも必要です。この測定では、状況を正しく認識し、それに合わせた的確な判断にかかった時間を計測します。7人制ラグビーには、広いフィールドの中で敵味方のポジションを瞬時に認識し、その場面に最も適したプレーを選択する“ヒューマン・チェス”と呼ばれる頭脳戦の一面もあるのです。

ミッチェル選手は、サッカーの選手やF1のドライバーと比べても、格段に短い時間で正しい判断を下していました。この判断力はラグビー選手として大きな強みになっています。

瞬発力~走り高跳び五輪代表と、ほぼ同レベル~

最後は再びふくらはぎや太ももなどの筋肉に関する測定。短い時間に爆発的な力を出す「瞬発力」についてです。屈強なディフェンスを突破したり、タックルで相手を止めたりと、7人制ラグビーで勝敗の行方を左右する場面では瞬発力が必要不可欠です。

接地タイムは0.21秒、そこからのジャンプの滞空時間はおよそ0.5秒。これは走り高跳びのオリンピック代表と、ほぼ同じレベルといえます。
身体能力の高さを存分に発揮してくれたミッチェル選手ですが、オリンピックの前年、左足の骨折に見舞われたことがありました。

ミッチェル選手

ラグビー選手にとって、毎日練習を続け、大会を戦い抜く健康な体を維持することが一番難しいかもしれません。

大事なのは、トップアスリートとしての自覚

オリンピック種目で最もエキサイティングな競技のひとつである7人制ラグビー。その選手が、他の競技と比較しても優れたアスリートであることが証明されました。
しかしミッチェル選手は、大舞台で活躍するために必要な資質をもう一つ挙げています。

ミッチェル選手

大事なのは、トップアスリートとしての自覚です。普通の仕事と違い決まった就業時間はありません。食事のこと、必要な睡眠時間のことなども考えなければなりません。そんな生活に体と心を慣らすのは大変ですが、それが一番大切なんです。

驚異の身体能力に加え、自らを律しその力を最大限に生かそうとする強じんな精神力。それこそが、トム・ミッチェル選手を世界最高レベルのプレーヤーへと引き上げたのです。

※この記事はオリンピックチャンネルのVTRを再構成して制作しました。

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