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2019年8月21日(水)

歴代最強の男子バスケ 日本はW杯で勝てる? 佐々木クリスが解説

いよいよ8月31日より開幕するバスケットボールのワールドカップ。八村塁選手も話題となり、男子日本代表の活躍に期待する方もきっと多いことでしょう。飛ぶ鳥を落とす勢いの日本代表への期待感やワールドカップの楽しみ方を、国内外のバスケットボールを熟知する佐々木クリスさんに解説してもらいました。

日本が自力でワールドカップに出場するのは21年ぶりの快挙!!

2019年NBAドラフトにて、ワシントン・ウィザーズから1巡目指名を受け入団した八村塁選手

ーー現在の日本代表はどのようなチームなのでしょうか?

現在のバスケットボール男子日本代表チームは、渡邊雄太選手と八村塁選手の現役NBA選手を2人も擁し、史上最強の呼び声が高いチームです。2017年11月から1年3ヶ月に及んだワールドカップアジア予選は4連敗と苦しいスタートを切り、崖っぷちに立たされました。そのピンチを救ったのが八村選手と渡邊選手、そして身長210センチ、体重110キロの“ビッグマン”こと、帰化枠※のニック・ファジーカス選手です。彼らが合流した後は8連勝とV字回復を果たし、見事にワールドカップ出場を決めました。これ(予選を突破してのワールドカップ出場)は1998年以来、実に21年ぶりの快挙なんです!(日本での開催となった2006年は開催国枠として出場)。

※帰化枠:16歳以降に帰化した選手に適用される出場枠

NBAメンフィス・グリズリーズで活躍する渡邊雄太選手

ワールドカップを見れば来年のオリンピックがさらに楽しくなる

ーーバスケットボールにおけるワールドカップとはどういう大会でしょうか?

各大陸予選を勝ち抜いた32か国が参加する世界大会です。それぞれの国を背負い、プライドと威信に懸けた戦いがワールドカップです。また、東京オリンピックの予選も兼ねているところが非常に大事です。

オリンピックは12チームしか出場できませんが、ワールドカップは32チームと多く、4億5千万人の競技人口を誇るバスケゆえに、たくさんのチームに高いレベルで切磋琢磨する機会を設け、より多くの人たちにバスケットの魅力を伝えてくれます。FIBA(国際バスケットボール連盟)としても、間口を広げてより多くのファンを獲得するべく、新たにチャレンジしているのが今年のワールドカップです。サッカーのワールドカップと同じように、各大陸予選でははじめてホーム&アウェー形式が採用されました。その予選から続く熱気をそのままに、ワールドカップまで追いかけ、応援し続けたいファン心理を突いたことでこれまで以上の盛り上がりが期待できます。

最強のアメリカ・NBA軍団と予選で対決!!

ーーワールドカップの予選ラウンドで日本はトルコ、チェコ、そして世界最高峰と言われるアメリカの順で対戦が決まっています。今の勢いにのった日本代表であれば良い結果を期待できそうでしょうか?

ワールドカップがその予選を兼ねているとおり、オリンピックが最高峰の戦いであるとFIBAも位置づけています。そのため、バスケにとってワールドカップの重要度はオリンピックほど高いものではなく、来シーズンのリーグ戦に備えて今年のワールドカップを辞退する選手もいるのが現実です。その最たる例がアメリカです。現在17名発表されている候補選手を見ても、昨シーズンのNBAオールスター選手はケンバ・ウォーカー選手とカイル・ロウリー選手、クリス・ミドルトン選手の3人しかいません。オリンピックはもっと重要度が高く選手のモチベーションも高いので、来年の東京オリンピックでは、こぞってスーパースターがやってくると期待しています。

左からケンバ・ウォーカー選手、カイル・ロウリー選手、クリス・ミドルトン選手

ーーでは日本が勝利する可能性も期待できるということでしょうか?

2軍以下の選手で構成されていると言われるアメリカですが、選手自身はそう思われたくないでしょうし、自分が選ばれたワールドカップで負けたくない気持ちも大きいはずです。八村選手が「このメンバーのアメリカならば勝てるのではないかと思っている方がいたら、本当にそれは間違いです」と釘を刺すような発言がありましたが、それは僕も同じ心境です。たとえスーパースターが不在であっても、ほとんどがNBAのドラフト1巡目で指名された選手たちであり、世界No.1チームであることは変わりありません。それくらい予選ラウンドを勝ち抜くのは難しいです。いまの日本代表チームの評価ということでいうと、予選ラウンドの3試合だけではなく、すでに国内で行われている国際試合(バスケットボール日本代表国際試合)の結果を含め、総合的にみて判断する必要がありますね。

攻撃型の日本代表チーム、勝利の条件は?

ーー日本代表チームのどのようなところに注目していますか?

ワールドカップ予選までの戦い方を見ると、日本代表はオフェンス型のチームと言えます。確率高くシュートを決めたことで、強豪オーストラリアに勝つことができました。一番パフォーマンスが安定していたのはファジーカス選手です。平均27.2点を挙げましたが、これはアジア予選での得点ランキングNo.1。さらに八村選手も平均21.5点と高い数字を残しています。ワールドカップに出場するアジアの8チームの中で平均20点を超える選手は7人しかおらず、そのうちの2人を日本人が占める頼もしい存在です。加えて、ディフェンスが持ち味の渡邊選手が速攻の機会を作り、得点効率を上げてくれました。ワールドカップの舞台で、このオフェンス力を維持できるかに注目しています。

ーー日本が勝利するためのポイントはどのあたりでしょうか?

大きくても走れる八村選手と渡邊選手が、日本のスピードをさらに引き上げています。反面、ファジーカス選手がコートに出ているときに、世界の速いペースにどれだけついていけるか、そこが注目点です。NBAレベルですでに実力を証明している八村選手と渡邊選手は絶対にやってくれるでしょうから、その意味ではファジーカス選手がキーマンと言えますね。

ワールドカップでの勝利のカギを握るというニック・ファジーカス選手

ディフェンスの弱点はリバウンドと3ポイントシュート。世界と比較して日本人選手は身長が低いため、今の代表はゴールに近い位置でのシュートを相手に許さないために2人がかりで止めに入るなど、戦略的に人数をかけています。すると別の攻撃選手があいてしまいリバウンドを取られてしまうので、ここには外郭の選手が対応せざるを得なくなります。ところがリバウンドの成功率は相手を上回れる保証がなく、その上、外からの3ポイントシュートを打たれやすくなってしまいます。極めて難しい選択ですが、日本が相手よりもリバウンド数で上回ることができるか、または相手に3ポイントシュートを打たせずに確率を下げることができるかをポイントに見ていくと、日本の戦術がうまくいっているかどうかが分かります。

ワールドカップの前から真剣勝負は始まっている!

ーーワールドカップの見どころを教えてください。

ワールドカップは勝利した上位チームだけではなく、参加する32か国すべての順位を決定します。そのため、予選ラウンドの3戦だけではなく、たとえ決勝トーナメントへの出場を逃したとしても試合は続くので、最後まで大会を楽しむことができます。

また大会に先駆けて、ワールドカップに出場する4チームと対戦する国際試合も楽しみです。2019年2月時点のFIBAランキングで唯一、日本(48位)よりも下に位置するチュニジア(51位)は絶対に勝たなければならない相手です。初戦のニュージーランド(38位)に勝利したことでまずは最低ライン突破。今後さらなる強敵との対戦がますます楽しみになりました。

国際試合でのニュージーランド初戦は日本が99対89で制した。その後、2日目は87対104で敗れた

ーーワールドカップ前の国際試合から日本の挑戦ははじまっているのですね!注目はどの試合でしょうか?

世界ランキング22位のドイツは、ワールドカップ予選で対戦するトルコと同じようにフィジカルな戦いをするチームなので注目ですね。デニス・シュレーダー選手は世界レベルのポイントガードです。このシュレーダーを起点とするドイツに対し、日本がどれだけディフェンスで封じられるかがカギとなります。身長差を埋めるべく、ポイントガードにコンバートした192cmの田中大貴選手とのマッチアップも楽しみです。

8月12日のニュージーランド戦からポイントガードとして起用されている田中大貴選手

また、ゴール下での得点やディフェンス時のフィジカル勝負が求められるパワーフォワードというポジションを任されるドイツのダニエル・タイス選手は、日本代表のインサイド陣にとっては参考になる選手です。

ワールドカップは選手もファンも思いっきり楽しんでほしい

ーー国際強化試合からワールドカップまで、世界の強豪との真剣勝負を通じて、日本の現在地を知ることができますね。

ワールドカップへの出場を決めたこと、日本人NBA選手がいることで期待が高まっていますが、現実を見れば日本のランキングはまだ48位。このランキングを20位台に引き上げることができれば、世界の中で存在感を示し、子どもたちやメディアへの影響も変わってくるでしょう。勝利を得る機会はあると思っていますし、良いニュースをひとつでも多く届けることが大事です。

成功と失敗は多角的に見ていく必要があります。仮に予選で3連敗したとしても、その内容によっては成功したといえるケースも出てきます。選手たちもプレッシャーがあるとは思いますが、楽しむことが一番です。ワールドカップへの出場権を勝ち獲ったことで、すでにひとつの仕事を成し遂げたわけですから、これからの試合を思いっきり楽しんでほしいです。試合を観る方も勝ち負けだけではなく、まずはワールドカップという雰囲気を楽しみ、全力で日本代表を応援してください!

佐々木クリス

バスケットボールアナリスト。2017-18シーズンよりB.LEAGUE公認アナリスト。1980年、アメリカ・ニューヨーク生まれ、東京育ち。14歳のときに観たNBAに魅了され、自身もバスケットボール選手として活躍。大学時代にはインカレ優勝を経験し、千葉ジェッツの一員としてbjリーグでもプレー。2017年からNHK BS1の番組『熱血解剖!Bリーグ』に出演し、プレー解説を手がける。3年目の今年、番組は『熱血バスケ』にリニューアル、Bリーグをはじめ、日本代表など幅広くバスケットボールの魅力を伝えていく。(9月30日、放送開始予定)

                   
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