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2019年8月19日(月)

記憶障害も年齢も乗り越える パラサイクリング・杉浦佳子

45歳のときに自転車レースで転倒。記憶が途切れる高次脳機能障害や、右半身まひなどの障害に直面することとなった杉浦佳子選手。リハビリの過程でパラサイクリングと出会い、事故の翌年から2年連続で世界選手権優勝を果たしています。事故当時のこと、記憶を取り戻し、再びレースの世界に戻るためのリハビリやトレーニング、そして、現在取り組んでいる認知症に関する講演活動についても語っていただきました。聞き手は増田明美さんです。

何の違和感もなく、自転車競技に戻った。

45歳で趣味として始めた自転車のロードレース。しかし杉浦選手は、2度目に出場したレースで転倒してしまいます。脳挫傷、外傷性くも膜下出血、頭蓋骨や鎖骨の粉砕骨折…医師から「治らない」と言われるほどの事故だったそうです。

「最初は会話もできなかったみたいですし、記憶も一切なくて。父親にも『どちら様ですか?』って言ったみたいです。」

事故による高次脳機能障害のため、脳の「言語と記憶」という分野に障害が残りました。絵本や友達のSNS投稿を見たり、計算や漢字のドリルに取り組んだりするなど、視覚的な情報と文字を組み合わせたものに触れることで、少しずつ言葉を思い出していったそうです。

そんな過酷な経験をしながらも、同じ自転車競技であるパラサイクリングにチャレンジしようと思ったのはどうしてなのでしょうか。

「何の違和感もなく、自転車に戻ったんです。記憶が全くないので、事故の記憶もないんです。だから、怖いとかがなくて。集中治療室から出たあと、すぐにリハビリの車いすでエアロバイクの所まで連れていってもらって『自転車やりましょう』って感じでした。記憶障害だったのが逆によかったのかも。」

あえて「怖い」と思う場所でトレーニングを行う

自分の強みについて、杉浦選手は「素直さ」だと話します。

「自分だとあまり分かんないですが、素直だと言われます。だから、コーチから行けるって言われたら行く、みたいな。アタックをかけろって言われたら、アタックをかけるみたいな感じです。」

2018年10月 アジアパラ 自転車 女子 トラック C1-2-3 500m 決勝(杉浦選手のクラスはC3/片まひ)

一方で、やはり「事故の瞬間を思い出したら競技ができなくなるのでは」という不安もあったと話します。そのため、コーチの指導方針で、あえて「怖い」と思う場所でのトレーニングを重ねてきたそうです。

「若干下りのコースで前輪がロックして転倒しているので、下りに対してトラウマみたいなのがあるんじゃないかと。それに、事故後は三半規管が壊れてしまってバランス感がなくて、曲がれなかったんですね。だから、コーナーがある下り坂まで行って、10回上って10回下るっていうトレーニングをやりました。」

日常生活で障害の影響を感じつつも、講演活動も積極的に行う

パラサイクリング選手として第一線で活躍する杉浦選手ですが、その一方で、日常生活ではまだ障害の影響を感じることがあるそうです。

「今も忘れっぽいです。時々混乱すると、誰かがわかんなくなっちゃうこともあるみたいです。初めてお会いする人だと思って『はじめまして』って言うと、『いや、3回目です』って言われちゃったりとか。(笑)」

杉浦選手は最初に、認知症のテストを受けたといいます。

「最初にやったそのテストが0点で、完全な認知症状態だったんですが、それから言語聴覚士の先生やリハビリの先生がついてくれてトレーニングしていった結果、今の状態には戻ることができています。」

自身の経験をもとに、現在は、認知症に関する講演活動なども行っています。

「講演やセミナーなどでは『こういう言葉で言っても分からないけど、こういうふうに言ってくれると分かるよ』と認知症の人が理解しやすい話し方などを伝えています。」

年齢にあらがっていくのが面白い

2018年には、最も活躍したパラサイクリング選手の1人としてUCI(国際自転車競技連合)の「Para-Cycling Award」を受賞するなど、めざましい活躍ぶりを見せる杉浦選手。今後、東京パラリンピックで勝つために必要なものを問われると、「努力と根性と若さ」だと答えました。

2018年10月 アジアパラ同レース 表彰式より

「年を取っていけば、モチベーションも、体力も、筋力も落ちていくと思うんですね。自分がどれだけこの年齢にあらがっていけるのか。そこが自分にとっては見せどころといいますか、面白いかなって思います。」



※この記事は以下の番組から作成しています。
2018年12月14日放送「増田明美のキキスギ?」
内容は放送時のものとなります。

                   
※NHKサイトを離れます

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