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2019年8月16日(金)

チャンスをつかみ取った男 白石黄良々「いだてん」たちの”つぶやき” -第9話-

陸上担当の記者やディレクターが発信する「いだてん」たちの“つぶやき” 。躍進が続く男子短距離界で成長著しい白石黄良々(きらら)が今回の主人公だ。

4月の出雲陸上・織田記念では、多田修平らを抑え2週連続で優勝。去年まで100mベストタイムが10秒32だった無名の男は、今季10秒19まで記録を伸ばし、憧れだった日本代表のリレーチームにも名を連ねた。「景色が変わった」という今シーズン、どのような変化があったのだろうか。

大舞台で任された 日本のアンカー

先月、男子短距離チームの面々はヨーロッパを転戦していた。個人の走力アップ、そして実戦を通してリレーの経験を積むことを目的にした約3週間の遠征だ。しかし、メンバーの常連である山縣や飯塚は病気や怪我で離脱。日本選手権で圧倒的な力を見せたサニブラウンもコンディション不良を理由に直前で回避した。これまでとは違うメンバー構成、新しい走順への挑戦。その中で“大抜擢”とも言える存在が白石だった。

総決算で出場したのが、ダイヤモンドリーグ・ロンドン大会。男子400メートルリレーで日本の第4走者を任された白石。千載一遇のチャンスに身震いを隠せなかった。

白石黄良々選手

競技場に入ったときに観客が多くて、今までにない感覚になったのを覚えていますね。


ウォーミングアップの時はあまり体が動いていなかったのですが、競技場で1本ダッシュした瞬間にすごく体が動き始めて自信が出ました。周りを気にせず自分の走りをすればいい勝負になるのかなと。

ダイヤモンドリーグ・ロンドン大会 桐生からバトンもらう

レースは、多田、小池、桐生と代表常連メンバーがバトンをつないだ。4走の白石は「これまでテレビで見ていた人」という桐生からスムーズにバトンを受け取る。伸びやかな走りで先頭を走るイギリスに次いで2位でフィニッシュ。タイムは37秒78。急造チームが日本歴代3位の好タイムをたたき出したのだ。

ダイヤモンドリーグ・ロンドン大会 多田 小池 桐生 白石(左から)

白石黄良々選手

(走りが)固くなるな!と自分に言い聞かせて走りました。


37秒台が出たのは嬉しかったですが、イギリスに負けたのは悔しかったです。

代表のリレーチームを率いる土江寛裕コーチは、“大抜擢”した白石の走りに興奮を隠せなかった。

土江寛裕コーチ

相当緊張したと思うのですが、白石くんよかったですよ!本当にうまく走ってくれて彼にとって大きな自信になると思います。


こういう言い方が適切かはわかりませんが、チームとしては“カードが1枚増えた”ということ、よかったと思います。

命名者は母 “黄良々”の由来とは

飛躍の秘密を語る前に、少し話を脱線させてほしい。私が白石を取材する上でまず気になったのは、その名前だ。黄に良という字を重ねた、黄良々(きらら)という名前。最初は読むことができなかった。しかし、1度聞いたら絶対に忘れないほどのインパクトある名前である。

命名者は母親だった。映画「幸福の黄色いハンカチ」の大ファンで、人に幸せを与えられる良い人になって欲しいという願いで名付けられたのだという。白石もこの名前を気に入っている。

白石黄良々選手

これまでの競技人生を振り返っても、競技力より名前で覚えてもらえることの方が多いんですよね。


自分としても、“白石くん”じゃなくて“黄良々くん”って呼ばれる方が嬉しいです。

転機は同学年のライバル

話を黄良々の飛躍の秘密に戻そう。社会人1年目の黄良々、学生時代は目立った成績を残す存在ではなかった。高校総体、そして大学の全日本インカレも出場はするものの、決勝に進んだことは1度もない。トップ選手の中で極めて異例の経歴だ。

しかし、大東文化大学ではその人望から主将を任され、理論派として定評のある佐藤真太郎さんの指導で走りの基礎やウエイトトレーニングを地道にこなしてきた。

雌伏の時を経てー。黄良々に今年、思わぬ転機が訪れることとなる。自己ベスト10秒07の多田修平が佐藤さんの指導を仰ぐことになり、大東文化大学に拠点を移すことになったのだ。

白石黄良々選手

(多田が来ると)聞いたときは少し驚きました。僕にとってはプラスしかないと思って、ありがたいなと感じました。


多田選手のようなトップ選手から盗めることを盗んで自分に当てはめていけば、もっと成長できるなと。

多田選手(中央)と走る白石(右)今年1月沖縄

23歳、同級生の黄良々と多田。グラウンドで一緒に練習することも多くなった。日本トップクラスの技術を肌で感じられる毎日が続いた。

特に刺激を受けたのはスタート局面。レース中盤から後半の加速が持ち味の黄良々、スタートはあまり得意ではない。一方の多田はスタート技術に定評のある選手。黄良々はその目で多田のスタートを研究し、自分の走りに落とし込めるように繰り返しイメージを膨らませていった。

白石黄良々選手

(多田選手と)同じ動きをするのは無理ですが、できる限り体現できればなと。短距離選手としてのタイプは全く異なるけど、お互いの良い部分を伸ばしつつ刺激を与えていければ2人とも速くなれると思っています。


彼は僕よりも多くの経験をしているので、まだまだ学ぶことがたくさんあるはずです。

きららとせいら トレーナーは兄

そんな黄良々を支えている特別な存在がいる。青に良と書く3つ上の兄、青良(せいら)さんだ。今年から所属企業と契約を結び、正式にトレーナーとなった。

兄の青良さん(右)と2ショット

試合や遠征に帯同し体のコンディションを整えたり、練習の映像を撮影しアドバイスを送るなど弟を陰からサポートしている。

練習で動画を撮る兄

幼い頃から一緒に育ってきた兄。4年前、同じタイミングで鹿児島を離れ上京した。現在、役割としてはトレーナーだが、それ以上の支えになっている。

白石黄良々選手

選手である以上は周りに弱い部分とかは見せられないんですけど、(兄は)僕の性格をよく理解しているので“不安”とか“悩み”を本音で話せます。


落ち込んだ時も気持ちを前向きにしてくれる言葉を投げかけてくれるし、メンタル面で大きな支えになっていますね。

黄良々がめざすのは日本選手4人目の9秒台。そして、東京オリンピックでの活躍。新国立競技場でキラキラと光り輝く走りを見せる日が刻一刻と近づいている気がしてならない。

「いだてんたちからのメッセージ」

東京オリンピックへの意気込みを語ってくれました。

※NHKでは、男子短距離チームの世界への挑戦を追った大型番組の放送を秋頃に予定しています。お楽しみに。

伊藤悠一

スポーツ番組部ディレクター。平成24年入局。和歌山局を経て、現在はスポーツ情報番組部で陸上短距離などを担当。自身も大学時代は競走部(陸上部)に所属し十種競技の選手。名前の由来は「周りにしばられることなく、自分の意志を持って物事に取り組んで欲しい」。

                   
※NHKサイトを離れます

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