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2019年8月15日(木)

最も過酷な競技「近代五種」 日本女子メダル獲得へのシナリオ

「近代五種」は、一人の選手が1日にフェンシング、水泳、馬術、射撃+ランニング(レーザーラン)の5種目を行い、総合順位を競う競技です。東京調布市の武蔵野の森総合スポーツセンター(フェンシング・ランキングラウンド)と東京スタジアムで、男女それぞれ36人が世界で最も過酷な戦いを繰り広げます。実は、「近代五種」の日本女子代表候補3人は、いずれも世界のトップレベルに肩を並べる実力の持ち主、メダルの可能性もあると見られています。日本女子は、東京五輪にどう挑もうとしているのか、日本近代五種協会ナショナルチームの城竜也強化コーチに聞きました。

攻撃のタイミングと駆け引きに注目 朝長なつ美の剣さばき

朝長なつ美選手(右)

最初の種目フェンシングは、36選手による総当たり戦です。試合時間は1分で1本勝負、体格や攻守のスタイルが異なる相手35人全員とたて続けに戦います。勝率7割を基準点=250点として1勝すれば+6点、1敗すれば-6点で計算、35勝0敗ならば310点、0勝35敗ならば100点となります。全勝と全敗の差は210点、フェンシングの勝敗が最終順位に大きな影響を及ぼすため、最初から他の選手に差をつけられるチャンス、絶対に負けられない種目です。

朝長なつ美選手

この種目で注目したいのは、2016年のリオ五輪で13位に入り、2017年ワールドカップ第1戦で4位となった警視庁所属の朝長なつ美選手(1991年生)。城強化コーチが、特にフェンシングの成長が著しいと、その実力を高く評価する選手です。

城竜也強化コーチ

外国の選手に気迫負けせず攻めていける度胸が身についてきました。リオオリンピック出場選手だけに大舞台にも強く、さらに経験を積んだことでスピードはもちろん、相手の出鼻を狙うなど、攻撃のタイミングや駆け引きも向上し、1本にこだわる試合がしっかりできています。安定して5割以上の勝率を残すようになりました。さらに上積みし、コンスタントに勝率70%・250点を取れる選手になってほしいですね。

折り紙付きの泳力でポイント上乗せ アジア女王・島津玲奈

島津玲奈選手

2種目の水泳は200m自由形で競われます。2分30秒を基準タイム(250ポイント)とし、0.5秒タイムを縮めるごとに1ポイント(1秒で2ポイント)が加算、2分20秒ならば270ポイントとなります。ただ、世界のトップレベルの選手のほとんどが2分30秒以内で泳ぎ切るためタイムの差は小さく、フェンシングと違ってポイントの差がつきにくい種目ですが、逆に言えばとりこぼしのできない種目ともいえます。この種目を得意としているのは、元競泳選手の島津玲奈選手(1991年生)です。2017年にアジア選手権で優勝し、日本人初のアジア女王になりました。自衛隊体育学校所属、2019年ワールドカップ第2戦で8位に入賞した実力の持ち主です。

島津玲奈選手

城竜也強化コーチ

高校まで競泳選手だった島津選手は、水泳には絶対の自信を持っていて、スタートから積極的なレースができます。自分のペースを守って、タイムの落ち込みがほとんどないことが強みです。国際大会に出場する選手のなかでも、泳力では5本の指に入るレベルといっていいでしょう。水泳はポイント差がつきにくい種目ではありますが、高ポイントをキープできるので、あとの種目が有利に進められます。

馬の気性やクセを見抜く感性は天下一品 山中詩乃

山中詩乃選手

馬術は、全長400~450mのコースに設置された12障害(15飛越)を制限時間内に跳び越える種目。ミスなく時間内に完走すれば満点の300ポイントが得られますが、障害を跳ばなかったり、バーを落としたりすると300点から減点されます。ちなみに馬が障害を落とすと-7点、馬が障害を逃避したり落馬すると-10点、2回落馬すると失格となり、ポイントは0点となってしまいます。
実は、世界のトップ選手でもミスが頻発し、大きく減点される選手も少なくありません。近代五種で使用される馬は、抽選で選手に割り当てられます。選手は、貸与された初対面の馬を馴らしながら障害を越えなければなりません。しかも選手が馬と顔を合わせるのは、競技開始のなんと20分前、馬の気性もクセも十分に分からないまま、競技に突入することになるので順位の入れ替わりの激しい種目です。

山中詩乃選手

馬術を得意としているのは、自衛隊体育学校所属の山中選手(1990年生)です。2012年のロンドンオリンピックに日本女子選手で初めて出場、2018年のワールドカップファイナルで6位、2019年ワールドカップファイナルでは13位に入るなど、国際大会でも安定して実力を発揮できる選手です。

城竜也強化コーチ

山中選手の馬を乗りこなす技術は、馬術の指導をしている私から見ても世界のトップクラス、天下一品です。特に優れているのは、20分間の試乗で馬の性格や特性を見抜く感性。初めての馬と短い時間で呼吸を合わせて、馬の邪魔をせず気持ち良くコースを走らせることができるミスの少ない選手です。抽選で難しい馬に当たっても、彼女なら乗りこなす可能性が高いですね。さらに、日々のトレーニングで様々なタイプの馬に騎乗しているので、馬の能力を最大限に生かす技術を持ち、どんなタイプの馬でも乗りこなすことができるのも強みです。体重が軽く、馬の負担が少ない点も有利ですね。

3選手とも得意のレーザーラン、トップと40秒以内なら逆転もある

  • 朝長なつ美選手
  • 山中詩乃選手

最後の種目レーザーランは、それまでの3種目の合計ポイントをタイムに換算して(1点=1秒)、上位の選手から時間差でスタートします。スタートしてすぐのところに射撃エリアがあり、10m先の的に5発命中させなければなりません。制限時間は50秒、クリアしてもしなくても次の800m走に移ります。スピードと持久力の両方が問われる800mランと高い集中力が求められる射撃、このセットを4回繰り返し、着順を競います。射撃の後にいかに気持ちを切り換えてランにのぞめるか、800mを走った後にどれだけ早く呼吸を整え集中し射撃に向き合えるか。アスリートの総合力が問われるタフな種目です。

島津玲奈選手

城竜也強化コーチ

重要なのは1回目の射撃をできるだけノーミスでクリアすることです。回が進むにつれて呼吸は荒くなり筋肉には乳酸が溜まり、射撃の精度は落ちていく。レーザーピストルは軽量化されていますが、それでも1㎏近くあります。4回目などは、ピストルを支えるのが辛くて腕が振るえるほどです。しかし、1回目のフレッシュで息も乱れていない状態であればスムーズな射撃ができます。良い流れが生まれ、ランで前を行く選手を抜こうという気持ちになり、2回目以降の射撃も攻めの姿勢で臨める。その結果、順位をあげることができるのです。

島津選手(左)と朝長選手(右)、城強化コーチ(後列右から2人目)。2018年アジア大会

城竜也強化コーチ

3選手とも走力に自信を持っています。特に山中選手は元陸上競技選手で、ランニング能力は海外勢から一目置かれるほど。フェンシング、水泳、馬術の3種目で上位に食らいつき、好位置でレーザーランのスタートを迎えれば上位進出が確実に見えてきます。前の選手を追い抜こうという攻めの気持ちが生まれるからです。スタート順が10位前後、なおかつトップとのタイム差が40秒以内の位置にいれば期待大。メダルの可能性が十分にあると思っています。

東京五輪に出場できるのは各国最大2名。誰が出場してもメダル獲得の可能性があると城コーチが太鼓判を押す「近代五種」女子3人娘に期待が高まります。

                   
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