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2019年8月14日(水)

最後まで勝負が分からない「近代五種」 日本女子メダルの可能性

「近代五種」は、フェンシング、水泳、馬術、射撃+ランニング(レーザーラン <射撃+800m>×4周)の5種目を通して、アスリートの総合的な能力を競う複合競技です。1日で行われる5種目すべてで好成績を収めるのは至難の業。フェンシングの調子が良くても水泳や馬術で順位を落としたり、フェンシングや水泳が振るわなくても馬術やレーザーランで一気に挽回することもあります。最後まで勝負の行方が分からず、誰がメダルを取ってもおかしくない競技「近代五種」。日本女子のメダルの可能性を日本近代五種協会ナショナルチームの城竜也強化コーチに聞きました。

世界トップレベルに肩を並べる3人娘

世界のトップ選手数人が国際大会の度に上位を競い合う、多くの競技でそんな構図が見られます。しかし、「近代五種」は違います。特に女子個人は大混戦状態が続いています。2019年に行われたワールドカップ5大会の成績を見ると優勝者は大会ごとにすべて異なり、表彰台に2回上がった選手は、リトアニアのアサダウスカイテ選手ただ1人。優勝した選手全員が次の大会では大きく順位を下げ、10位以下に落ちるケースもありました。

実力がきっ抗する日本人選手3人もこの大混戦状態の渦中にいます。2017年のワールドカップ第1戦で4位に入った朝長なつ美選手(警視庁)、2018年のワールドカップ第5戦(ファイナル)6位の山中詩乃選手(自衛隊体育学校)、2019年第3戦8位、2017年アジア女王の島津玲奈選手(自衛隊体育学校)で、山中選手が1990年生まれ、島津選手と朝長選手が1991年生まれとともに同世代です。城竜也強化コーチは、この3人の日本人選手にもメダルの可能性は十分にあるといいます。

日本近代五種協会ナショナルチーム 城竜也強化コーチ

城竜也強化コーチ

オリンピックやワールドカップといった大きな国際大会でトップ10に入ったことのある選手全員にメダル獲得の可能性があると言っても過言ではありません。東京五輪の出場枠は1か国最大2人ですが、日本の女子選手は3人とも世界のトップ10に入る実力をつけてきていますので、誰が代表になっても十分にメダルの可能性があります。

バリエーションに富んだ過酷な種目が混戦を生む

最後まで大混戦となる「近代五種」。その最大の理由は、バリエーションに富んだ5種目の総合得点で争うという競技そのものの特性にあります。5種目それぞれ、競技場も、使う器具も、求められる能力も異なります。スピードやスタミナといったフィジカルの能力や技術はもちろん、フェンシングでは相手との駆け引き、馬術では馬の個性を見抜きコントロールする感性、射撃では集中力が不可欠です。ひとつの種目が終わったら結果が良くても悪くてもすぐに気持ちを切り替えて、次の種目に向かえるメンタルの強さも必要です。選手には得意種目と苦手種目があり、しかも調子は種目ごとに変化するため、ひと種目ごとに順位の大きな変動が起きるのです。

  • フェンシング 山中選手VS朝長選手(2019年ワールドカップ ファイナル)
  • レーザーランのスタート 朝長選手(2019年ワールドカップ ファイナル)
城竜也強化コーチ

1日で全く異なる5種目を戦うため体全体に疲労が蓄積し、その疲労はメンタルにも影響を及ぼします。1種目を終えて次の種目に移るインターバルでどう疲労を取り、気持ちを切り換えるかが重要ですが、有力選手でもそれがうまくいくとは限りません。近代五種は、“キング・オブ・スポーツ”といわれますが、その過酷さゆえに最後までデッドヒートが繰り返されます。誰が優勝するか最後まで分からない、最高にスリリングな競技なんです。

混戦に拍車をかける“魔の種目”馬術

山中詩乃選手

実力ではどうにもならない要素もあります。順位の入れ替わりが激しいのが馬術です。選手が乗る馬は、大会開催国で調達され、抽選で選手に割り当てられます。選手が馬と顔を合わせるのはなんと競技開始の20分前。どんな気性やクセを持った馬なのか、どうすれば指示通りに動いてくれるのか、選手は十分につかみきれないまま、いわばぶっつけ本番で競技に臨まなくてはなりません。

城竜也強化コーチ

馬主さんによって基本的な調教が行われた馬が集められるわけですが、用意されている馬は、乗りやすい馬ばかりではありません。事前のリサーチは欠かせませんが、実際、騎乗してみて気性やクセが選手のリズムと合わないこともあります。選手によっては当たりはずれがあり、「運」次第という側面も否定できないのです。

馬術は、いかに選手と馬が呼吸を合わせられるかが鍵。世界のトップレベルの選手でも初対面の馬の扱いに手こずることが少なくありません。すなわち、選手の能力の差がハッキリと明暗を分ける種目でもあります。

城竜也強化コーチ(右)

城竜也強化コーチ

競技が行われるコースは人馬にとっても初めてのコースで、20分のウォーミングアップでは障害物をうまく飛べなかったり、怖がって障害物を逃避してしまうこともあります。でも、慣れるにしたがってミスは減ります。馬の数は全部で20頭ほど、選手は36人なので、馬は違う選手を乗せて2回走ることになりますが、2回目は明らかにミスが少なくなるんです。ですから、2回目に騎乗できるよう馬術の前のフェンシングと水泳の合計点で上位18位以内に入ることが大切です。

城強化コーチは、国際大会で10位に入る実力がある日本人3選手ならば、5種目を1日で戦いきるフィジカルと技術は十分に持っていると太鼓判を押します。あとはピーキング(体力・気力)のあわせ方、本番でその実力をどれだけ発揮できるかだといいます。そして能力だけでなく、「運」を味方につけられるかも重要なファクター。最後の種目「レーザーラン」のゴールテープを最初に切るのは誰か。最後までワクワクが止まらない最高にスリリングな競技「近代五種」、女子の決戦は2020年8月7日(金)です。

                   
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