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2019年6月29日(土)

走り高跳び・戸邉直人『研究者との二刀流で臨む2020』「いだてん」たちの”つぶやき” -第8話-

陸上担当の記者やディレクターが発信する「いだてん」たちの“つぶやき”。今回はトラックを離れ、初めてのフィールド種目。走り高跳びの戸邉直人にスポットを当てる。

戸邉はことし2月、ドイツで行われた室内の大会で2メートル35センチを跳び、13年ぶりに日本記録を更新した27歳。選手としてだけでなく研究者としての顔も併せ持つ異色のジャンパーだ。走り高跳びと誰よりも深く向き合い、自らの成長につなげてきた戸邉の最終目標とは。

メダルも狙える!世界トップレベルの実力

世界3位。現在の戸邉の実力を端的に表すのが、国際陸上競技連盟がことしから導入した世界ランキング制度だ。戸邉はことし日本新記録となる2メートル35センチをマークしたこともあって、現在世界の3番手のポイントを獲得している(6月26日現在)。

では2メートル35センチとはどれくらいの高さなのか。比較してみるとバレーボール男子のネットの高さは2メートル43センチ。街にある電話ボックスの高さは2メートル5センチと30センチも低い。これだけでもその凄さがお分かり頂けるだろう。

戸邉直人選手

普通は、飛び越えようと思わない高さですよね(笑)。


街を歩いたりしてても『2メートル30とか40とかちょうどそのあたりかな』と思うのは、つい探してしまうので職業病みたいなものです。

ロンドンオリンピックでは銀メダル、リオデジャネイロ大会では銅メダルに相当する記録で、東京オリンピックでのメダル獲得も十分視野に入れられる実力を持っているのだ。そんな戸邉が目指すのは、自己記録を5センチ上回る2メートル40センチ。オリンピックではまだ誰も跳んだことのない高さだ。

戸邉直人選手

決勝の舞台で2メートル40を超えて、金メダルを取ってということができれば、本当に最高ですね。

研究者との二刀流で成長

ことし4月、私たち取材クルーは取材のため戸邉の母校で練習拠点でもある筑波大学を訪れた。あいにくこの日は雨。練習の撮影は無理かなと考えていたら、案内されたのは屋内の研究室。

数十メートルのトラックが敷かれ、部屋の中央を取り囲むように多くのカメラが設置された部屋だった。

戸邉直人選手

ここは実験室というか、ふだんはここで動作分析をしたりするような部屋です。

実験室でどんな練習をするのか。しばらく様子を見ていると、1メートル30センチの高さに設定したハードルを並べ、跳び始めた。

身長1メートル70センチの記者の胸まであるような高さを難なく跳んでいく。しかも、ただ飛び越えるだけではない。地面から1メートル以上の高さ台の上から飛び降りて、その反発を利用してハードルを越えていく。全く見たことない練習だったので、狙いを聞いた。

戸邉直人選手

走り高跳びの踏み切りでは足におよそ1トンの力がかかるんです。


それに耐えて、跳ね返すだけのパワーを鍛えるためのメニューです。

戸邊は大学院で走り高跳びを研究し、博士号を取得。選手と研究者の二刀流を続けてきた。みずからが実験台となって、跳躍動作を詳しく解析。目標を跳ぶために理論上必要な助走や踏み切り位置を割り出していく。この繰り返しこそが、戸邉の成長を支えてきた。

戸邉直人選手

トレーニングする中でいろいろ迷うこともあるんですが、そういう時にデータに1つの答えがあるというか。それを自分で探せるというのは明らかな強みだと思ってます。

2メートル40センチへの試行錯誤

こうして、戸邉が2メートル40センチを跳ぶために導き出したのが、踏み切りの位置を30センチ手前にずらすこと。ちょうど1足分をこれまでよりバーの手前で踏み切ることで、大きな放物線を描こうというものだ。大胆に思えるような変更も、すべて根拠に基づいているため戸邉に迷いはない。

戸邉直人選手

踏み切る場所が違うことでバーの見え方も変わるので、助走やそれ以降の動きも変わってきます。


まさに全体を変える作業です。

この日の練習の最後、戸邊はバーを目標の2メートル40センチに設定した。まだ跳んだことのない未知の世界だが、目を慣らして成功のイメージをつかんでいく。陸上競技で、自分の目標とする記録を実際に目の前で感じることができるのは、高跳びならではだ。

戸邉直人選手

いざ試合で、この高さに挑戦するとなった時にびびってしまったら絶対跳べません。


逆に調子がいいとバーが低く見えることもある。スタートの時点でバーがどう見えるかで、もう勝負は始まっていると思います。高跳びはそういう競技です。

日本選手権で4年ぶり3回目の優勝を果たした戸邉。まずはことし秋の世界選手権の代表内定を得た。来年の東京オリンピックは28歳で迎える。前回、リオデジャネイロ大会の直前にケガをして出場を逃した戸邉にとっては初めてのオリンピック。誰よりも走り高跳びと向き合ってきた競技人生の集大成として見据えるのは、頂点だ。

戸邉直人選手

自分の名前が戸邉(とべ)というのもあって、走り高跳びという競技は自分ですごく好きだと思っていて。


自分の競技者としてのピークで迎えられるオリンピックは2020年だと思っているので、最高の舞台で2メートル40センチという最高の目標を達成できたら本当にうれしいですね。

山本脩太

スポーツニュース部記者。平成22年入局。高知局・広島局を経て現所属。ピョンチャンオリンピックではスキー担当。中高時代は陸上部。最も好きだったのは、800メートルリレー。

                   
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