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2019年6月21日(金)

ラグビーの気になる話(32)ホイッスルが驚くべき方法で日本へ

ラグビーワールドカップ日本大会の開幕まで100日を切りました。優勝トロフィーも日本に到着し、国内の試合会場などをめぐるツアーも始まっています。そうしたなか、日本とロシアが対戦する開幕戦で使う『ホイッスル』が、いま、驚くべき方法でイギリスから日本へと運ばれています。

自転車で2万キロの旅

ジェームス・オーウェンさん (左) とロン・ルトランドさん (右)

『ホイッスル』を運ぶ役割を託されたのは、香港出身でラグビーの指導者の経験もあるジェームス・オーウェンさんと南アフリカ出身の起業家、ロン・ルトランドさん。

ロン・ルトランドさん

2人はおよそ2万キロの道のりを、なんと自転車で移動しているんです。ことし2月にイギリスのラグビーの聖地、トゥイッケナムスタジアムを出発。

ヨーロッパ、中東、中央アジア、東南アジアと27の国と地域を、およそ230日かけて進む壮大な計画です。

ロン・ルトランドさん(左)とジェームス・オーウェンさん

5月末、ネパールの首都カトマンズに到着した2人にテレビ電話で話を聞きました。

ジェームス・オーウェンさん

開幕戦を担当するレフェリーに手渡すまで、誰にも渡せないことになっているんです。


9月20日の金曜日、東京での開幕戦までね。日本に行くのは初めてなので、本当に待ち遠しいです。

そう話したオーウェンさんが取り出したのは、開幕戦で使われるホイッスルでした。表面には、英語で「開幕戦・日本対ロシア」と記されていました。

過酷な道のり、時には…

自転車をこぐのは1日あたり8時間ほど。舗装のはがれた道もあれば、雪道もあります。

標高4000メートルの山岳地帯を通ることも。

もちろん、テントで野宿する日もあります。過酷な旅に、心が折れそうになるときもあったと言います。

ジェームス・オーウェンさん

小さい頃から冒険心を持っていて、いつか大冒険してみたいとずっと思っていました。この旅は身体的、精神的、文化的な試練があります。食事にも順応しなければなりません。


しかし、一番大変なのは精神面だと思います。朝起きて、『ああ、今日もまた自転車をこぎ続けるのか』と思うことだってあります。

アジアの子どものために…

特定非営利活動 チャイルド・ファンド活動当時(本人提供)

それでもなぜ自転車でホイッスルを運ぶのか。オーウェンさんは、子どものとき、ラグビーの魅力にひかれ、選手や指導者の道を歩んできました。そうしたなかで携わったのが「チャイルド・ファンド」というNGOが行っていた慈善活動です。ラグビーを通して、貧困や不平等といった厳しい境遇にいるアジアの子どもたちがたくましく生きる力を養おうとしていました。

アジアで初めて開かれるワールドカップ日本大会を通して、世界の多くの人々に取り組みを知ってもらいたい。そうした思いが、ワールドカップを主催する「ワールドラグビー」や国際的に展開する宅配大手の「DHL」と一致し、ホイッスルを運ぶ大役を任せられたのです。

ジェームス・オーウェンさん

僕は人生のほとんどを東南アジアで過ごし、アジアは僕にとって特別な場所です。私たちは世界中の多くの場所で、子どもたちが遊べなくなっていることを忘れがちです。幼い頃から家庭や畑で働いていて、スポーツや遊ぶ権利が失われています。


僕にとってこの取り組みは、子どもたちが自分らしくいられる環境を提供するものであり、ラグビーを通じて遊びや安心感、生きていくための力を提供することが目標です。

大会の魅力を伝えながら

2人の自転車にはラグビーボールも積まれています。オーウェンさんとルトランドさんは旅先で現地の子どもたちとラグビーでふれあい、ワールドカップの魅力も伝えています。

「ラグビーは人と人を結びつけるのにはとても良い方法」と話すオーウェンさん。厳しい道のりですが、現地の人たちの笑顔に元気づけられると言います。

ワールドカップの開幕まで100日となった6月12日、2人はインド東部を走っていました。自転車の旅はこれから終盤。東南アジアに入って、9月初めには香港から船で大阪に到着する予定です。

2人の到着とともに、アジアへの思いが込められて旅してきたホイッスルの音が、日本代表のトライで高らかに響くことを期待せずにはいられません。

中村 大祐

スポーツニュース部 記者 平成18年に入局。奈良放送局の後、福岡放送局を経て、平成25年の夏に政治部に異動し、厚生労働省や防衛省などを担当。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて去年夏からスポーツニュース部に。高校・大学とラグビー部に所属し、ポジションはバックス。

                   
※NHKサイトを離れます

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