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2019年6月21日(金)

「飛び込み」金戸3きょうだい 3世代に受け継がれるDNAの正体!

高さ10mの台からプールに向かって真っ逆さまに飛び込み、空中で行う回転演技の美しさや入水時の水しぶきの少なさなどを競う採点競技、それが、華選手(1998年生まれ)、快選手(2001年生まれ)、凜選手(2003年生まれ)の金戸3きょうだいが挑戦している「飛び込み」です。

東京オリンピックを目指している金戸きょうだいの家族は、なんと親子3代続く「飛び込み」一家。父親の金戸恵太さんと母親の幸さん、そして恵太さんの父の俊介さんと母の久美子さんも五輪出場経験を持つオリンピアン。「飛び込み」一家に受け継がれるDNAの正体とは?祖父母世代から親世代へ、親世代から子世代へ。親として、コーチとして3選手を支える、金戸夫妻に聞きました。

プールではコーチ、更衣室を出たら親子に戻る

金戸恵太さん・幸さん

恵太さんと幸さんは共に1988年のソウル五輪、1992年のバルセロナ五輪、1996年のアトランタ五輪の3大会に出場した「飛び込み」のトップ選手です。そして、恵太さんのご両親も、1960年のローマ五輪と1964年の東京五輪の「飛び込み」に出場したオリンピアンです。オリンピアン2世って、どういう気持ちなんですか?

金戸恵太さん

金戸恵太さん

私が小学校5年生の時に、全国ジュニアオリンピックという18歳以下の大会が始まって、その第1回に出場したんです。私は13位でビリでしたが、他の選手4〜5人と一緒に水泳専門誌の取材を受けました。ことあるごとに「君もオリンピックを目指すんだろ?」と問われました。自分には実力もないのに取材の人が来るんです。親の影響ですね。こうしたことに反発していたので、小学校の作文に「オリンピックが大嫌い」と書いたこともありました。

3人のお子さんたちとっては、両親だけでなく祖父母もオリンピアンですから、重圧はかつての恵太さんよりも強いかもしれません。オリンピアンを両親に持ったことで嫌な思いをされたという恵太さんは、親としてお子さんたちにどう接していますか?

金戸恵太さん

自分が両親にされて嫌だったことは、子どもたちにしないようにしています。例えば、家では子どもたちと絶対に競技の話をしません。私の時は、家の中で父とよく大げんかをしたからです。プールではコーチと選手なので父の話を素直に聞きますが、家では親子ですから子どもも言いたいことをいう、そうすると意見がぶつかってしまうんですね。ですから私は、更衣室を出たらなるべく親子に戻るよう心がけて、競技の話はしないんです。

安心できる場所、聞いてあげられる場所を用意したい

金戸幸さん

ご夫婦お二人でコーチをされていますけれども、恵太さんと幸さんでは、指導の仕方や接し方に違いはあるのでしょうか?

金戸幸さん

3人とも最初は、私が教え始めました。幼いうちは楽しく教えて、とにかく辞めさせないようにと(笑)。でも、やはり母と子だとだんだん甘えが出てきちゃうんです。そこで、「あーもうそろそろだな」というタイミングで1人ずつ、厳しいパパコーチの方へ渡しました。今は、夫婦2人で3人のコーチをしていますけど、役割は微妙に違います。子どもたちはお父さんには厳しいこと言われても我慢しますが、私には泣きついてきたり、弱音を吐いたりしますね。主人が厳しく言っているときは、私は絶対に口を出しません。私は、子どもたちが安心できる場所、聞いてあげられる場所を常に用意してあげたいと思っています。

身体的な才能のDNAはお子さんに受け継がれても、飛び込み選手をめざす気持ちは、自然には受け継がれません。オリンピック選手を目指す志といいますか、モチベーションは、どのように伝えたのでしょうか?

金戸ファミリー3世代

金戸幸さん

私は夫の金戸家を見て、一家で同じ競技ができるって素晴らしいな、とずっと思っていたんです。ですから結婚する時は、神様が下さった幸運なチャンスを最大限生かすのが私の務めだと思いました。子どもができたら「飛び込み」をやらせる、と当然のように言っていました。そして、子どもが生まれると赤ちゃんの頃から、「飛び込み」が好きになるように色々と工夫しました。良く褒めるとかね。

金戸恵太さん

多少失敗しても「いいよ、いいよ、よくできたね」って褒めて、成功体験を多くしてあげました。失敗って一回でもすごく頭に残るものなので、特に日本人はね。成功を目指すことが楽しくて、失敗しても責められないっていう土台を作ってあげようと思ったんです。繰り返し褒めたことで3人とも自然に「飛び込み」が好きになりました。好きになると厳しい練習でも頑張れるようになります。そしていつの間にか、オリンピック選手を目指すようになったんです。

“一瞬の美”のために!毎日コツコツ繰り返すルーティン

ここで、ちょっとブレイク。金戸きょうだいの練習のひとコマをご紹介しましょう。「飛び込み」は、踏み切ってからわずか1.8秒で勝負が決まる“一瞬の美”の世界。その一瞬に心技体の能力のすべてを出し切るために欠かせないのが毎日コツコツと繰り返すルーティンです。飛び込み台にどう向かうのか、ルーティンはそこから始まっています。プールで行う一連の動作をルーティンにすることで、わずか1.8秒に実力のすべてが発揮できるようにするんだそうです。動画をご覧ください。

あの時、妻がメダルを取っていたら、今ほど懸命になっていない

次女 凜さん

毎日のルーティンには、コーチの恵太さんとのやり取りも組み込まれているんですね。「飛び込み」はメンタルの自己コントロールが欠かせないと言われます。メンタル面ではどのような指導をしていますか?

金戸恵太さん

「飛び込み」は、人生みたいで、うまくいくことがほとんどないんです。つらいし、怖いです。苦手なことを避けて長所だけを伸ばして、という取り組み方ではだめなんです。だから、こんな競技くらいで悩んでいるけど、将来お母ちゃんになって子ども産んで育てて家を支えて、そっちの方がよっぽど大変だよって言います。将来好きじゃない仕事に就くかも知れないよ、どうするの?と。苦手でも逃げずに向き合う姿勢は、人生においてとても大切なものだと思うので、ぜひ学んでほしいと思っています。

金戸ファミリーの東京2020の目標は、やはり、悲願のメダルですか?

金戸恵太さん

両親も私も妻も、オリンピックでメダルは取れませんでした。その悔しさを最も強く味わったのが妻、1996年のアトランタでメダルに手がかかるところまで行ったのに結果は6位だった。たぶん、その時の悔しい思いが私たちを突き動かしているんです。あの時妻がメダルをとっていたら、今ほど懸命にはなっていなかったかもしれません。オリンピックはすごくハードルが高い特別な大会ですが、「どうせやるならオリンピックに出るだけじゃなく、メダルを目指そう」「どうせメダルを目指すなら、金メダルを目指さなきゃ損じゃないか」と言っています。チャンピオンシップスポーツ、競技ですから、勝負には貪欲であるべきなんです。

親子3代に渡って受け継がれている「飛び込み」選手としての優れた身体能力のDNA、それは愛情に裏打ちされた厳しい指導によって初めての真価を発揮するもののようです。

                   
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