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2019年5月15日(水)

卓球代表選考レース連続ドキュメント  第1回 "波乱"

2020年にメダルが期待される、卓球日本の選手たち。シングルス男子では、張本智和、丹羽孝希、水谷隼。女子では石川佳純、伊藤美誠、平野美宇。世界ランキング上位に名を連ねている彼らの前に今、「オリンピックよりも厳しい」とも言われる代表選考レースが立ちはだかっています。東京オリンピックのシングルスに出場できるのは、男女ともに来年1月時点の世界ランキングの上位ふたりだけ。

世界各地を転戦し、ポイントを奪い合う戦いの火ぶたが切って落とされました。

4月末、ハンガリーで行われた世界選手権はポイントが最も高い、選考レース序盤の山場でした。世界との戦いだけでなく、代表選考というもうひとつの戦いの重圧の中、大会に臨んだ選手たち。1つの勝利、1つの敗北が大きな意味を持つ代表選考レース。その舞台裏に密着しました。

開幕前日 運命のドロー

開幕前日、トーナメントの組み合わせを決める抽選会が行われました。会場入りする選手たち。伊藤選手と平野選手はスマートフォンで動画を撮りながら、年下の張本選手にちょっかいを出すなど、リラックスした表情。しかし、抽選会場に入ると徐々に空気が張り詰めていきました。

代表選考に関わる世界ランキングのポイントが最も大きい世界選手権。1試合勝ち上がるごとに、ポイントは高くなります。優勝者には3000ポイント。ベスト8でも1500ポイントとワールドツアーの準優勝に匹敵するビッグポイントを得られるチャンスがあります。

世界のトップが一堂に会する中、ひときわ存在感を放っていたのは中国選手です。男子の世界王者、馬龍。女子の世界王者、丁寧。彼ら以外にも、“卓球王国”から出場する選手たちは猛者ぞろい。日本選手たちにとって、負けたら終わりのトーナメントの何回戦で中国選手と当たるのか。それが、この抽選会の最大の関心事でした。

そして始まったドロー。石川選手と平野選手は、安堵した表情を見せます。共に準々決勝まで中国選手と対戦しない、まずまずの組み合わせ。順当に勝ち進めば1500ポイントが狙えます。対して、伊藤選手は厳しい組み合わせとなりました。日本選手で最も早い3回戦で中国選手と対戦する組み合わせに入ったのです。もし敗れれば、得られるポイントはわずか900。選考レースで遅れを取ることになります。それでも、取材に答えた伊藤選手は、「自分で引いたので、自分でしっかり勝ちます」と平常心を強調しました。

一方、男子の張本選手は思わず喜びの声をあげていました。準決勝まで中国選手と当たらないラッキー組み合わせとなったのです。去年のワールドツアー・グランドファイナルで最年少優勝を果たした張本選手。この大会、ベスト4での1950ポイントだけでなく、40年ぶりとなるメダル獲得も期待されました。

ビッグポイントを獲得し、代表選考レースを優位に進めるのは誰か。選手たちはいざ戦いの舞台へ臨みます。

大会4日目① 研究されていた伊藤

最も厳しい組み合わせとなった、伊藤美誠選手。サーブでポイントを重ねる得意の攻撃パターンで順当に勝ち上がります。

そして大会4日目。日本選手で誰よりも早く中国選手と戦う日を迎えました。

「自分らしさを全て出し切る。まだここで負けられない。」

しかしこの試合。伊藤選手のサーブは、ことごとく強いレシーブで返されます。得意のサーブが決まらず、波に乗れない伊藤選手。中国は伊藤選手の強みであるサーブを、徹底的に研究してきたのです。

中国選手

「伊藤は今とても強い選手。試合前に準備をして、戦術で伊藤を上回ることができた」。

伊藤選手

「(サーブが効いていない実感は)ありました。相手のレシーブミスがすごく少なかった。1点を取ることがすごく難しかったです。」

サーブが決まらず、打ち合いに持ち込まれると、パワーの違いを見せつけられます。相手の強打でポイントを奪われ、伊藤選手は3回戦敗退。得られたポイントは、僅か900にとどまりました。

伊藤選手

「3回戦で負けてしまったのはすごく悔しいです。今でも日本人選手が全員戦っていますし、それを見ると本当に、ものすごく悔しいですけど。すごい、差をつけられてしまった、日本人選手に差をつけられてしまったと思うので、これから死ぬ気で試合に臨みたいと思います。」

大会4日目② 百戦錬磨・石川の迷い

その日の夜。伊藤選手が進めなかった4回戦に石川佳純選手が臨みました。

相手は香港の選手。この試合に勝てば、中国選手が待つ準々決勝。負けるわけにはいかない試合です。

最終ゲーム、石川選手は5点のリードを奪い、勝利へ大きく近づいていました。

しかし、ここで石川選手のプレーに、迷いが出ます。レシーブを浮かせてしまうミス。ここから相手の怒とうの追い上げを許してしまいます。

石川選手

「緊張していないところだったら、何でもないサーブでした。強く打てばいいのか、ゆっくりコースを攻めればいいのか迷ってしまったんです。」

勝利を目前にして連続失点で、9対9の同点。勝利までお互いあと2ポイントと勝負の場面…。強打でポイントを狙った石川選手のレシーブは、アウト。9対10。相手のマッチポイント。

石川選手

「ちょっと判断を間違えたなと思います。強く打つ必要なかったかなと…。」

そのまま押し切られ、石川選手は4回戦敗退で1200ポイント。

国際大会での経験も豊富で百選錬磨の石川選手でさえも、代表争いの重圧の中で結果を残すことができませんでした。

大会4日目③ 追う平野 日本勢最大のポイント

ランキング上位のふたりが敗れる中、ベスト8まで進んだのは、平野美宇選手でした。平野選手は現在世界ランキングで、石川選手と伊藤選手の後塵を拝しています。

追いかける立場の平野選手が、勢いよくトーナメントを勝ち上がります。

平野選手

「大きい大会でしっかり、結果を残せたことは自信になったので。自分は日本で3番目なので、2番目以内に入りたい。」

石川選手が敗れた4回戦も突破。準々決勝で中国選手に敗れたものの、女子で最も大きな1500ポイントを手にしました。

大会4日目④ 最大の波乱 張本の涙

しかし、今大会最大の波乱は男子4回戦で起こりました。試合後の張本智和選手。涙をこらえられず、嗚咽交じりの声を絞り出していました。

張本選手

「楽しかったです…昨日までは。昨日まではすごい楽しかったです。たった1回の負けが、悔しくてたまらないです。」

張本選手は、4回戦で世界157位の選手にゲームカウント2-4でまさかの敗退。思い切り向かってくる相手に、得意のバックハンド「チキータ」を封じられての敗戦でした。得られたポイントは、1200。中国選手と戦うことすらできませんでした。

勝って当たり前と思われるプレッシャーの中、代表選考レースの厳しさを突きつけられたのです。

一方、男子の他の選手は。水谷隼選手は3回戦で敗れ、900ポイント。丹羽孝希選手は準々決勝まで進み、男子最大の1500ポイントを獲得。その丹羽選手の準々決勝、観客席にはじっと試合を見つめる張本選手の姿がありました。

張本選手

「丹羽さんや水谷さんよりも上の成績を出さなければいけない。素直に全力で応援はできなかったです。」

張本選手

「ほかの選手も今まで以上にやる気があって、試合に対する姿勢も強くなって、自分もこれまで以上に強い気持ちで挑まなければいけないと思います。自分にしか味わえない貴重な経験として、これからこの悔しい気持ちを次の勝利に変えられるようにもっと成長したいと思います。」

し烈な戦いはこれから…

世界選手権を終えて反映された世界ランキング。

男子は、
4位に張本選手。
12位に丹羽選手。
13位に水谷選手。

女子は、
6位に石川選手。
7位に伊藤選手。
9位に平野選手。
日本選手の中の順位に入れ替わりはありませんでした。

代表選考レースは今年の12月までの約20大会、世界を転戦していく長丁場。東京五輪を目指す戦いは、まだ始まったばかりです。



代表選考ドキュメント。次回は7月、過酷な夏の連戦に密着する予定です。

                   
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