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2019年5月13日(月)

DJとMCが選手と観客をつなぐ!?
"アーバンスポーツの流儀"

東京オリンピック2020は、オリンピックの長い歴史に新しい潮流を生み出す画期的な大会になるかもしれない。スケートボード、BMX、スポーツクライミングなどのアーバンスポーツと呼ばれる競技が新たに採用されたからだ。「アーバン」=「都市型」スポーツと呼ばれるだけあって、競技は街中にある公園を模した“パーク”や突起物が設置された人工壁で行われる。競技場内は、まるで屋外のクラブイベントか音楽フェスのよう。選手と観客がつながり、会場が一体になって盛り上がる。アーバンスポーツに共通しているのは、音楽担当のDJと、進行役のMCの存在だ。20~30代の若い世代をひきつけるアーバンスポーツの魅力、“体育会系”のノリとは一線を画す“アーバンスポーツの流儀”に追った。

DJは音楽で選手と会場を盛り上げる演出家

ブースからはDJが選曲した音楽が流れ、競技中は英語と日本語の入り混じるテンポのよいMCが会場を盛り上げる。 “アーバンスポーツの祭典”『FISE広島』(2019年4月19~21日)のボルダリング会場でDJを務めたDJ RENさんは、アーバンスポーツと音楽の親和性、相乗効果を意識しながら選曲していると言う。

DJ RENさん

同じスポーツクライミングでも、速さを競う「スピード」はひたすらテンポの速い曲でいいのですが、選手が最適なルートを考える“間”がある「ボルダリング」では、ちょっとスローダウンする瞬間があったりします。選手が考えている間は同じリズムをキープして、次のアクションを起こす瞬間に動きのある曲調に変えるんです。以前、世界のトップ選手のひとりである野中生萌選手から、『登っているとき、めちゃくちゃテンションが上がりました!』と言ってもらったことがあります。音楽のキックと選手のキック、動きがピッタリ重なったときは、DJとしても快感です。

ボルダリング会場を盛り上げるDJ RENさん

ボルダリングでは、1分か1分半で曲を変えるとDJ RENさんは言う。曲と曲のテンポを合わせ、複数の曲をスムーズにつないでいくのがDJの腕の見せ所。DJ RENさんは、DJの大会で日本チャンピオンに輝くなど、海外からもそのスキルを評価されているスゴ腕DJだ。

DJ RENさん

ボルダリングの場合は、1時間に50曲から60曲は使います。普段クラブでDJをするのと、アーバンスポーツに合わせて回すのは全然違いますね。主役はあくまでも選手で、DJは脇役として盛り上げる立場ですが、観戦している人たちも含めた会場の一体感をつくることは心がけています。選手を応援しながら、音楽も楽しんでもらえるとうれしいですね。

「自分らしさの表現」を応援する元ブレイクダンサーMC

会場を盛り上げるMCはアーバンスポーツに不可欠

『FISE広島』のボルダリング会場でMCを務めたのは、かつてブレイクダンサーだったという高島三鈴さん。十代のころからブレイクダンスに夢中だった高島さんは、現役時代に訪れたアメリカ・ロサンゼルスで“アーバンスポーツの風”に衝撃を受けた。帰国後、ブレイクダンスのコンテストで準優勝を果たすなど活躍できたのは、アーバンスポーツの魅力に触れて自分の殻を破ることができたからだという。ブレイクダンスも2024年のパリオリンピックに『ブレイキン』として採用が見込まれているアーバンスポーツの一つ。高島さんはMCとして、アーバンスポーツ選手が競技場で繰り広げる「自分らしさの表現」を応援しているという。

MCを務めた高島三鈴さん

高島三鈴さん

ダンスに取り組む中で、悩んだこともあったのですが、ストリートで思い思いに踊っているロスの若者たちの姿を見て、「もっと自分のスタイルでやっていいんだ」と吹っ切れました。自分の殻を破ることができました。ブレイクダンスに限らず、若い世代が自分たちのスタイルで挑戦するってステキですよね。それがアーバンスポーツなんです。私はブレイクダンスに打ち込んでいたころのスピリットを持ちながら、MCとしてアーバンスポーツをまだよく知らない一般の人たちに魅力を伝えたい、一緒に応援できるムードを盛り上げたいなと思っています。

オリンピックに広がる?「共感・友情・一体感」の価値観

選手の頑張りを傍観者として応援するのではなく、一緒になって盛り上げる。常識に縛られず自分なりのスタイルで自由に楽しむ。DJとMCが語ってくれた”アーバンスポーツの流儀”は選手たちのマインドにも色濃く反映されている。アーバンスポーツの選手には、観客の応援に感謝するだけではなく、観客と一緒に一体感を味わえたことに感謝する選手が実に多い。『FISE広島』のブレイクダンス男子で金メダルを獲得したSHIGEKIX(シゲキックス)選手もその一人だ。

SHIGEKIX選手

SHIGEKIX選手

いいムーブをすると素直に反応してくれて、やっていて盛り上がりました。日本選手に対してだけでなく、海外の選手にも同じように声援を送ってくれました。いい大会だなあ、と感じました。

競技の違いを超えて選手同士が友情をはぐくみ、励まし合うのもアーバンスポーツの特徴だ。SHIGEKIX選手は試合後のインタビューで、BMXのメダル候補として注目を集めている中村輪夢選手との交流について語った。

SHIGEKIX選手

輪夢選手とは同い年で、プライベートでも親しいんです。今日もメールで連絡を取り合っていました。競技は違うけれど、お互いに高め合える仲間の力を借りて今日の結果を獲得できました。

メダルが期待される日本の中村輪夢

競技であり勝負だから、勝ち負けは当然ある。それは変わらない。しかしそれ以上に、互いに触発し合い、共感をどれだけ高め合えるか、見ている観衆とどれだけ一体感を醸成できるか、それらが重視されるのがアーバンスポーツだ。DJやMCが選手と観客の間に入ることで、観客は選手に声援を送るだけの存在ではなく、一緒になって大会をつくり上げる“当事者”になる。つまり、選手と観客の心の距離も近いのだ。

アーバンスポーツが持ち込んだ新たな潮流は、スポーツが持つ本来の価値観を再びオリンピックの舞台に引き出してくれるかもしれない。

(取材・文 小林信也)

                   
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