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2019年4月27日(土)

"プロの市民ランナー" 川内優輝の目標は?

公務員ランナーとして活躍してきた男子マラソンの川内優輝選手がプロランナーに転向後、初のマラソンとして今月アメリカで行われた伝統のボストンマラソンに出場。去年に続いての2連覇はなりませんでしたが、"プロの市民ランナー"として新たな一歩を踏み出しました。

ボストンはハイペースに付いていけず17位

川内優輝選手

目標の8位以内に入れなくて残念だったけれど、終盤粘って17位まで上がれたので及第点ですね。

レースを終えた川内は、悔しそうな表情でそう語った。前回大会優勝者、プロ転向初レース。2時間15分29秒で17位という結果に満足しているはずはない。

「前半からハイペースで、10キロ前後からきつくなってしまいました。国内レースでも高速レースの時にはそうなってしまうのですが・・・。力不足ですね」と反省が口をついた。

昨年は豪雨に加えて強風、そして春先というのに気温が5度を下回る悪条件だった。エリート選手たちが表情を曇らせる中、川内は寒さは苦手ではないのでチャンスがあると思った、と虎視眈々と上位につけ、メジャー初優勝を飾った。「去年はすべての条件が自分に味方しました」と話していたが、今年は気温も上がり、ハイペースに。年度末の3月に引き継ぎなどもあり、仕事に忙殺され、満足な練習が積めなかった川内にとっては苦しい展開だった。

加えて昨年覇者の川内は、現地入りしてから様々なイベントに参加を余儀なくされた。市民ランナーとの交流、記者会見、そしてボストンレッドソックスでの始球式など。最終調整は大丈夫だろうか、と周囲が心配になるほどだった。

川内優輝選手

(忙しかったのは)言い訳にはなりません。(前回優勝の)女子のリンデン選手はしっかり5位に入っていますし。そういったこともこなして、レースも走りきるのがプロだと思っています。

会話が進むにつれ、表情は明るさを取り戻していた。今大会の17位から後は上へ上へ、上がっていくだけ。そんなポジティブな覚悟にも感じられた。

"プロの市民ランナー"として持つ2つの夢

川内は公務員時代から「日本全国、そして世界のレースを走り、たくさんの方々と触れ合うのが夢、そして目標です」と話していた。

これまでもアメリカやイギリスなどはもちろん、エジプトや南アフリカ、オーストラリアなど世界中でいわゆる市民レースに参戦してきた。一方で、シカゴやボストン、ニューヨークなどのメジャーマラソンにも挑戦し、ボストンではタイトルも獲得した。プロに転向し、時間に自由や余裕が出てくるが、今後はどちらに比重を置くのだろう。川内は苦笑いしながらこう答える。

川内優輝選手

そうなんです。そこはすごく難しいところなんですよね。2つの気持ちがありますね。世界中を一つでも多く回りながらレースを走る、という市民ランナーに近い考えも夢としてありますが、一方で、ボストンマラソンのような世界最高の舞台でしっかりと勝負したいという気持ちもあります。


メジャーマラソンに挑戦する場合は、レース前後の調整が必要になってきますから、出たいレースへの制限が生まれてしまいますが。ただメジャーマラソンで勝つからこそ、小さなレースにも招待してもらえるので、うまく折り合いをつけながら両方の夢を追っていきたいです。

川内は市民ランナーたちが持つ夢と同じだ。一般的にプロランナーたちは、賞金レースや高額な出場料を期待できるレースを中心に、年間2本程度しかマラソンを走らない。しかし市民ランナーのなかには川内のように毎月フルマラソンに挑戦する人もいる。そしてタイムで出場資格が決まるボストンマラソンは市民ランナーの憧れの舞台だ。

両方の夢を追いかける川内には、プロランナーよりも「プロの市民ランナー」という称号がふさわしいかもしれない。

SNSで積極的に日常を発信

川内優輝選手のTwitterより

4月にプロ転向して以来、ツイッターでも川内節が炸裂している。ボストンマラソンに出場した際も、空港での飛行機遅延から、ドーピング検査の係員にほかの日本人選手にまちがわれたこと、招待選手が使うラウンジ、レースで着用するシューズ、ボストンレッドソックスでの始球式の様子でのドキドキしている様子、なぜかメディアガイドの紹介まで、細かくアップ。ツイッターのフォロワーが次のツイートを待ちきれない、そんなワクワクで溢れるものだった。

川内優輝選手

招待選手がどんな待遇を受けるのか、どういった環境なのかを皆さんにお伝えできればと思いました。

海外レースの経験のない実業団選手や市民ランナーたちが、ボストンに行ってみたい、楽しそう、そんな風に感じられるものだ。もちろんレースの結果もきちんと報告している。

川内優輝選手

結果が悪かったから黙ってしまってはプロではないと思うので、結果が良くても悪くてもしっかり発信していきたいです。また私のツイッターを通じて、マラソンの面白さ、奥深さを知ってほしいと思っています。

その言葉通り、レース前にはボストンマラソンの魅力が、レース後には自己分析、今後の対策がしっかりとツイートされていた。

ドーハ世界陸上も視野に入れて活動

今季、川内の目標の一つにドーハ世界陸上出場がある。また今後、ハイレベルなレースに対応していくためにスピードの強化も課題として挙げる。

川内優輝選手

5000mを13分台に戻さないと世界では戦えないと思っています。

夏には釧路で2ヶ月間の合宿を予定している。公務員時代にはできなかった念願の長期合宿になるが、そこで走りこみ、そしてスピード強化を行っていく。プロになっても川内の姿勢、立ち位置は変わらない。自分の強み、弱みを見つめ、コツコツと努力していく。変わっていくのは、これまで時間の制約があってできなかった練習への取り組み、そして練習時間が増えることだろう。

市民ランナーからプロ市民ランナーになった川内が、今後、市民ランナーとどんな交流をしていくのか、そして2つの夢をどう実現するのか楽しみだ。

及川彩子

スポーツライターとしてNY在住10年。陸上、サッカー、ゴルフなどをメインに、オリンピック・パラリンピックスポーツを幅広く取材。

                   
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