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2019年4月22日(月)

桐生祥秀『9秒98 その先へ』「いだてん」たちの"つぶやき" -第4話-

陸上担当の記者やディレクターが発信する「いだてん」たちの“つぶやき”。今回は、男子100メートルの日本記録保持者、桐生祥秀の登場だ。

日本選手初の9秒台となる「9秒98」の衝撃から1年半あまり。さらなる記録更新が期待された昨シーズンは一転、不振にあえいだ。

群雄割拠の日本男子短距離陣。「日本最強」の称号を取り戻すため、今シーズンは「新生・桐生」がライバルたちの前に立ちはだかる、はずだ。

新生・桐生

桐生は、変わった。本人もコーチも、それを認める。目標である東京オリンピックのファイナリスト(決勝進出者)に向けた新たな姿だ。何が変わったのか、桐生は語る。

桐生祥秀選手

陸上のことを考えていることが多い。練習中もただ単に走るんじゃなくて、いろんなことを考えながら走るようになりましたね。

「考える」。どちらかと言えば、桐生のライバルで日本歴代2位、10秒00の記録を持つ山縣亮太の“代名詞”とも言えるフレーズだ。決して山縣を意識した行動ではないだろうが、その姿勢は取材に応じた3月下旬の練習でも見受けられた。

コーチが撮影した動画を食い入るように見つめ、自らの走りを分析する姿。

天性の動きと情熱で走る、いわば“感覚派”のスプリンターが、1本走るごとに動画を見て自らの動きを確認。次の1本に向け、いわば脳内で修正を図っているようだった。

大学時代から今も桐生が指導を受ける土江寛裕も、その変化に目を見張る。

土江寛裕コーチ

少しというか、かなり変わっています。陸上競技に対する意識も1年間ちょっと失敗したことによって随分変わった。プロとして、きちんと結果を残していかなくてはいけないという意識がさらに強くなった。

苦闘のシーズン

土江コーチが「失敗」と振り返った昨シーズン。その前のシーズン最終盤に「9秒98」をマークしたがゆえに、周囲の期待は当然高まったが、シーズンベストは10秒10。昨シーズン最大のレース、アジア大会の100メートル代表も逃した。

桐生祥秀選手

燃えるようなレースがなくて、結果も全然だめだった。レースについて『よし頑張るぞ』という欲がなかった。活躍できなかったことで、(イベントや表彰など)どこにも呼ばれず…。だから活躍して、どこかにいろいろ行きたいなというのがありますね。やっぱり競技をしているなら注目してもらいたい。

注目されてこそ、輝く。それが桐生らしさだ。

詳しく言えないけど…始めた

苦しさ、悔しさを経て取り組み始めたこともある。心=メンタルの強化だ。

どんなトレーニングなのか気になる。

ーーーメンタルトレーニングを始めたきっかけは?

桐生祥秀選手

ここから成長していく中でやりたいなっていうのがあったのでやっていますね。

「具体的に」と尋ねたところ「うまく説明できない」と話しながら一端を話してくれた。

桐生祥秀選手

人間としていろいろ成功している人の話を聞くのも大事だと思う。別に陸上選手でずっといるわけじゃないので…(陸上を)やめてからもメンタルっていうのは大事かなと思いますね。

好発進

心を鍛えて、整えて。迎えた先月、オーストラリアでのシーズン初戦。

10秒08。昨シーズンのベストよりもいいタイムだ。

桐生祥秀選手

去年のシーズンベストを超えられたのは大きい。まあ足は遅くなっていないというか、それでほっとする部分もある。(シーズンオフは)100メートルを走らないので(実際に)速くなっているかどうかはわからないもの。『あ、走れるな』という感じはありましたね。

さらに200メートルでも20秒39と高校3年生以来、6年ぶりに自己ベストを更新。上出来のシーズンの滑り出しだった。

桐生が一番 強い

オリンピックの「プレ・イヤー」となる今シーズン。今月(4月)下旬にはアジア選手権、秋には世界選手権とビッグイベントが続く。男子100メートルで自己ベストが10秒0台の選手がひしめく現状。唯一9秒台を持つ桐生の“現在地”を土江コーチに聞いた。土江は、男子短距離の日本代表でもコーチを務めている。

ーーー今回は桐生選手のコーチという立場で聞きたい。今の激戦の中をどう勝ち抜くかという観点で見て、桐生選手の存在をどうとらえているか?

土江寛裕コーチ

(代表のコーチという立場では)評価を言いづらい部分もあるが…それを全く置いておいて桐生を見て思うのは、『やっぱり桐生が一番強い』と、本当に思っている。しっかり桐生の能力を引き出せれば皆さんの期待に応えられるような走りは絶対にできると思っている。

無邪気さと大人の変化

高校3年生で「10秒01」をマークした時の無邪気な笑顔、それは今も変わらない。それから6年たった23歳の今、見せるのは「プロ」としての心の変化だ。両面併せ持つことこそ、人をひきつけてやまない、桐生の最大の魅力だと感じている。

桐生祥秀選手

ことしはどんなタイムが出るのかなという、わくわくが増えている。陸上が今楽しい。走っていて楽しいから考えるんじゃないですか。楽しくなかったら考えてもおもしろくない。

今シーズンの桐生に一番期待しているのは、桐生自身のようだった。

桐生選手の今季への意気込み(動画)

スポーツニュース部記者。平成15年入局。札幌局・山形局を経て現所属に。途中1年間はネットワーク報道部に所属。オリンピック取材は、ソチ・リオデジャネイロ・ピョンチャンの3大会を経験。自身は小学3年から大学まで野球一筋。

伊藤悠一

スポーツ番組部ディレクター。平成24年入局。和歌山局を経て、平成29年からスポーツ番組部で陸上・野球などを担当。自身も大学時代は競走部(陸上部)に所属し十種競技の選手。100mの自己記録は11秒31。

                   
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