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2019年4月18日(木)

キャプテン熊谷紗希が語る "なでしこの現在地"

サッカー女子のワールドカップ開幕まで2か月を切りました。2大会ぶりの優勝を目指す日本代表「なでしこジャパン」は、今月、ヨーロッパに遠征し、世界トップクラスの強豪と強化試合を戦いました。ワールドカップ開催国で世界ランキング4位のフランスには1対3で完敗、世界2位のドイツとは2対2で引き分けたものの、多くの課題を突きつけられました。

キャプテンの熊谷紗希選手は、なでしこの現在地をどう考えているのでしょうか。

遠征を終えたキャプテンに密着

熊谷選手は、ドイツとの強化試合の翌日、知人に会うため、フランクフルトに向かっていました。車でおよそ3時間の道のりに密着。ワールドカップに臨む最終メンバー発表前最後の遠征を終え、大会への思いを新たにしていました。

熊谷紗希選手

ワールドカップは、日本でサッカーをしている女の子たちが目指す場所であってほしい。そういった意味では、なでしこジャパンの結果はすごく重要だと思う。勝ち進むためには運も実力も必要だけど、最大限準備するというのが、今の私たちにできるすべてのことだと考えている。


優勝という目標を掲げているが、1つ1つ勝ち上がっていかないとそこにたどり着けない。あと2か月、初戦に向けていい準備をし、そこから1つ1つステップアップし、優勝できたらいい。

若手から"中心選手"へ なでしこでの歩み

熊谷選手 (左) サッカー女子W杯決勝 (2011年)

熊谷選手は、札幌市出身の28歳。身体能力の高さをいかした守備が持ち味のセンターバックで、日本が初優勝した2011年のワールドカップでは、弱冠20歳ながらレギュラーとして活躍しました。アメリカとの死闘を繰り広げた決勝では、ペナルティーキックのキッカーを任され、優勝を決めるシュートを成功させました。

リヨンでプレーする熊谷選手

大会後は、活躍の場を海外に求め、ドイツのフランクフルトで2年間プレーしたあと、世界で指折りの強豪クラブ、フランスのリヨンに移籍しました。レギュラーも獲得するなど、各国の代表と切磋琢磨(せっさたくま)して、技術を磨いてきました。

目指す"キャプテン像"とは

日本代表では、高倉麻子監督のもと、おととしからキャプテンを務めています。なでしこのキャプテンは、澤穂希さん、宮間あや選手が受け継いできました。熊谷選手はどんなキャプテンを目指しているのでしょうか?

(左から) 宮間選手 大野選手 澤選手 熊谷選手 (2014年)

熊谷紗希選手

澤さんやあやさん(宮間選手)も、私たちが若いときは大変な思いを絶対してきている。プレーで引っ張ってくれるタイプの澤さんと、ピッチの外でもチームのことを気にかけてくれるあやさんは、本当に尊敬する存在で、自分もそうなれたら嬉しいけど、同じことをしようとは思っていない。


澤さんやあやさんから学んだことを自分の形にしてチームをまとめていけたらいい。私はこうなりたいというキャプテン像はない。キャプテンとか、キャプテンじゃないとか関係なく、苦しい時にみんなを助けられるような存在になれたらいい。

2人とは違うタイプで

確かに、熊谷選手は、強烈なカリスマ性を発揮した澤さんや宮間選手とは少し違ったタイプに映ります。去年12月、NHKの番組、サンデースポーツに出演してもらったとき、肉が大好きであることを明かされたり、代表の後輩選手から「おっちょこちょいなところはあるんです」と指摘されると、ほほを赤らめて、照れていました。

力強いプレーを見せる一方で、若い選手からも愛される性格です。特に、今のチームは、今回のヨーロッパ遠征のメンバーを見ても、25歳以下の選手が、22人のうち17人をしめるなど、高倉監督も次々と新しい選手にチャンスを与えてきたこともあり、試合で一緒にプレーするメンバーも猫の目のように変わってきました。

こうしたチームをまとめるのは、至難の業とも言えますが、熊谷選手がキャプテンだからこそ、選手の輪を重視する今のチームカラーになったと言えます。

熊谷紗希選手

メンバーが毎回違うのは、チームとして合わせていくうえでかなり難しさはあるが、言い訳にはならないし、選ばれたメンバーでやるしかない。実際積み上げていく難しさはあります。


でも別に若い子だからどうこうというのは全くないですし、実際チームの中で、もちろん対等とは言わないけど、ピッチの上で思ったことは年下の子でも言えるようなチームではあると思うし、その点は特に問題を感じたことはない。みんなで話せるチームをつくっていきたい。

遠征の受け止めは?

そんなキャプテンは、今回の遠征をどのように受け止めたのでしょうか?2試合で合わせて5失点、そのうち4失点は、同じようにサイドから崩されました。日本の弱点をさらけ出してしまいました。

後半、フランスに3点目を奪われピッチに倒れ込む熊谷選手

特に最初のフランス戦では、開始直後、右サイドから攻めてきた選手に対して、誰もプレッシャーにいかず、簡単にクロスボールを上げられると、熊谷選手が1対1の攻防に競り負け、ゴールを決められてしまいました。浮き足だった日本は、その後もサイド攻撃への対応が修正できず、一方的な展開に持ち込まれ、失点を重ねました。

熊谷紗希選手

あれだけサイドを崩されて、クロスボールをあげられると中央の守備は苦しい。サイド攻撃の対策は、チームの課題になったと思うし、単純に1対1で勝てないとか、球際で勝てないというのも課題として浮かび上がった。開始直後の失点で、自分たちが飲まれる形になって相手に勢いをつけさせてしまった。立ち上がりに失点したら、あれぐらい厳しい展開になるということを痛感した。


あとは、フランスが高い技術で、ボールを動かしてきた。最後まで、うまく順応できなかったのも厳しかった。そのような状況の中でも、どこで変えるのかというのはチームでも自分でもやらなければいけないところだと思う。

試された修正力

ワールドカップで戦う相手も日本の弱点をついてくることが予想されるだけに、どう修正していくかが2戦目のドイツ戦に向けたテーマになりました。

選手たちは危機感を持ち、毎日、試合の映像を見ながら、熊谷選手を中心に話し合いを繰り返しました。特に守備では、ボールを持っている選手に体を寄せることやマークの受け渡しなどでの約束事を明確にしました。

清水梨紗選手

右サイドバックの清水梨紗選手は「紗希さん(熊谷選手)がまとめてくれて、約束事、決まり事がはっきりした」と振り返っていました。

そして迎えたドイツ戦。選手どうしの距離感や役割に改善が見られ、相手のパスコースをうまく消していました。相手へのマークもサイドバックの選手に加え、中盤の選手が連係して、サイドから簡単にクロスボールをあげさせない工夫が見られました。

しかも、この試合では、相手のゴールキーパーのミスを着実にいかして、過去13回の対戦で1回しか勝ったことがない相手に、2度もリードする展開に持ち込みました。結局は、後半に入ってから、守備の集中力が続かず、引き分けとなりましたが、地力で上回る相手から勝利をたぐり寄せる形がかいま見えました。

熊谷紗希選手

フランス戦よりドイツ戦の方がよくなったし、試合の中で修正できることもあったという点は大きな収穫だった。


ドイツ戦の前半はうまく相手をはめてボールを奪えていた場面は多くあったと思う。その点はみんなで集まってどうやって戦おう、どういうチャレンジしていこうかを話し合えた成果だと思う。

一歩一歩成長を期待して

ワールドカップに向けて、克服しなければいけない課題はまだまだたくさんあるのが現状です。ただ、選手たちは、この時期に強い相手と戦うことができたことを前向きにとらえたいと話しています。

優勝、準優勝という結果を残したここ2大会も、日本は、前評判が高かったわけではありませんが、キャプテンを中心にチームが結束して、勝ち上がっていきました。今回は、熊谷選手を中心にどう修正力を発揮するか、成長しながら優勝を目指していくチームを追い続けたいと思います。

鈴木笑

スポーツニュース部記者。平成23年入局。函館局 札幌局 報道局遊軍プロジェクトを経て、現所属サッカー担当。

                   
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