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2019年3月14日(木)

ボルダリング ルートセッターが演出する"クライミングショー"

「ボルダリング」は、ホールドと呼ばれる小さな突起物を手がかりに高さ5mの壁を登る競技です。ゴールのホールドを両手でつかめば完登、4つあるコースを制限時間内にいくつ完登できるか競います。

選手が登るコースは、“課題”と呼ばれます。大小さまざまな形のホールドをこう辿ればゴールに到達できるといういわば“模範解答”が隠されているからです。選手の登り方やコース取りを思い描きながら“課題”をつくるのは、ルートセッターと呼ばれるコースづくりのプロ。

ホールドの配置を通して“課題”を出すルートセッターと、ホールドの配置からその意図を読み解き、“模範解答”を導き出す選手。垂直にそりたつ壁を舞台にルートセッターと選手が頭脳戦を繰り広げる種目、それがボルダリングです。

ルートセッターVS選手 あくなき頭脳戦!

競技の直前に登り方を考える選手

ボルダリングの競技大会には、100人ほどの選手が出場します。2グループに分かれて“課題”に挑戦、上位20名が準決勝に進み、そのうち6人が決勝に進出する仕組みです。予選、準決勝、決勝、ルートセッターは、それぞれどのような“課題”を選手に課すのでしょうか。国際大会でその重責を担える国際資格を持つ平嶋元さんに聞きました。ちなみに、この資格を持つ日本人ルートセッターは平嶋さんを含めて5人しかいません。

国際ルートセッターとして活躍する平嶋元さん

ルートセッター・平嶋元さん

予選は確認テストみたいなものですね。ひとつ一つの“課題”でクライマーに必要な能力を試します。予選で問うのは主に基礎力です。パワー、持久力、柔軟性、バランスなどです。模範解答になる設定で“課題”は組み上げられていますが、それをどのように登るかは選手次第です。自分なりの登り方で攻略する選手もいます。決して一つではない正解を導き出すのもクライミングの魅力の一つです。

コースの下見の時間には選手同士で話し合うことも

予選を通過した20人の選手が対戦する準決勝には、大会を通じて最も難しい“課題”が並ぶと平嶋さんは言います。ボルダリングの日本人選手の実力は世界一といわれます。選手層が厚く、実力も拮抗しているため、選手を振るい落とすために難易度が自然に上がるのだそうです。

ルートセッター・平嶋元さん

準決勝には基礎的なスキルを組み合わせないと解けない応用問題が並びます。応用力や複合力や総合力を駆使しないと登ることはできません。ジャンプを要求する“課題”ひとつをとっても、足場の悪いところから飛ぶような、いじわるで複雑なホールドの配置になっていて、思考力も問われるんです。

決勝は、会場全体が盛り上がるエンターテイメント!?

Climb Park Base Camp入間店で開催された「THE NORTH FACE CUP 2019」(2019年3月)

基礎力、応用力をともに兼ね備えた精鋭6人だけが出場できる決勝。それは、ボルダリングの魅力を演出するエンターテイメントです。

ボルダリングの会場には、競技中もDJ(ディスクジョッキー)による“ノリの良い”音楽がながれています。MC(司会者)はマイクを使って選手を紹介したり、ルールを解説したり、時には観客に声援を促したり、巧みな話術で選手と観客をひとつにしていきます。プロジェクションマッピングや派手な照明を使った演出もあります。ショーアップされた雰囲気はおしゃれなアーバンスポーツ、これぞスポーツエンターテインメントです。

こうした雰囲気の中でルートセッターが選手に課すのは、観客を魅了する最高のパフォーマンス。“課題”を通して、よりエキサイティングで、よりアクロバティックなクライミングを演出するのです。

ルートセッター・平嶋元さん

競技大会ですから、決勝の役割は優勝者を決めることですが、ボルダリングでは、観客と一体となった見せ場を演出することも同じくらい大事なことなんです。登れるのか、登れないのか、瀬戸際の攻防が繰り広げられると、観客の視線は選手の動きにくぎ付けになり、否が応でも会場は盛り上がっていきます。選手の能力を引き出しながら、どうしたらそのような舞台を作れるのか、自分のクライマーとしての経験やスキルを生かしながら、いつも試行錯誤しています。

まるで演劇の舞台! その一体感がボルダリングの醍醐味!

ボルダリングで会場のボルテージが頂点に達するのは、決勝で競う6人のうち一人だけが壁の最も高い位置にあるホールドにつかまりながら観客の声援に応えるその時です。次第に熱を帯びていく会場、その熱量に触発されて表情を変えていく選手。会場からは「ガンバ!」というエールが飛び、声援が大きな塊となって選手の挑戦を後押します。そして、会場のボルテージが最高潮に達するその瞬間を迎えるのです。

ホールドの角度を少し変えるだけで難易度も変わると語る平嶋さん

ルートセッター・平嶋元さん

私たちルートセッターは、選手から最高のパフォーマンスを引き出すために“課題”を考えますが、私たちの力だけでは不十分です。私たちが考えた”課題“を選手が思いがけない方法で超えていくときにこそ、本当のドラマが生まれるんです。選手と観客が一体となって創り出すドラマ、そのきっかけに自分が関わっているのだと感じた瞬間がルートセッターにとって、至福のときです。

ルートセッターは、筋書きを用意する演出家、選手はドラマを演じる役者、そして、役者である選手に声援を送りパフォーマンスに花を添える観客。まるで演劇の舞台のようなステージの魅力、それがボルダリングの醍醐味なのです。

                   
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