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2019年3月13日(水)

"攻め"のチームに!カーリング中部電力が1年で大進化!?

中部電力は2月のカーリング日本選手権で、予選(参加9チームの総当たり戦)から決勝まで全勝し、完全優勝。ピョンチャンオリンピックで銅メダルを獲得したロコ・ソラーレとも3戦していますが、いずれも勝利しました。中部電力の圧倒的な強さの裏には、この一年の大きな変化が影響しているのだとか。何が変わったのか?世界選手権でその強さを発揮することが出来るのか?元中部電力の市川さんならではの視点で解説してもらいます!

スキルアップ&ポジション変更で “攻め”のチームに

――カーリング日本選手権では、中部電力が予選を含めて全勝という圧倒的な強さを見せました。市川さんから見て、強さの理由はどこにあると思いますか?

市川さん「ポジションを変更したことによる影響が大きいと思います。メンタルが強い北澤育恵選手がプレッシャーのかかりやすいフォースにマッチしていて、彼女を中心に全体の攻めのスキルが上がりました」

――カーリングチームの多くはフォースが司令塔であるスキップを兼ねています。フォースの北澤選手ではなく、セカンドの中嶋星奈選手がスキップを務めることでどのようなメリットがあるんでしょうか?

市川さん「セカンドのメリットというよりは、得点につながりやすいフォースを務める北澤選手がスイープもやる、というのが一番大きな効果だと思います。通常、スキップを務めるフォースはスイープをしないので、氷の状況が読みづらいんですよね。数字だけの情報で投げないといけない。でもスイープをすることで氷と石の状況を体感した上でドローを投げることができる。スイープをすることで、ウエイト(投球のスピード/力)の感覚をつかみやすくなるということですね」

――北澤選手としては、スキップとして戦略を考えることに専念するよりも、点につながるフォースとしてドローの精度を上げたかったんですね。

スイープをするフォースの北澤育恵選手

市川さん「あとは戦略の幅も広がりました。日本はもともとディフェンシブなチームが多く、中部電力も例外ではありませんでした。しかし、ポジションの変更があってからは攻めの戦略に変わったように見えます。
フリーズ(ハウス内にあるストーンにぴったりくっつけるショット)の精度も上がりましたね」

――フリーズの精度が上がると、どのような影響があるんでしょうか?

市川さん「フリーズの精度が上がると自チームのストーンが出づらくなり、ハウス内にストーンの数が増えるので、大量得点に繋がりやすくなります。松村千秋選手はフリーズの精度がとても高かったですし、それをフォースの北澤選手が確実に決めたのも優勝のカギとなったのではないでしょうか」

――チーム全体が攻めの姿勢に変わったことで、中部電力はより強くなったのですね。
ピョンチャンオリンピックにSC軽井沢クラブのメンバーとして出場した両角友佑さんが昨年からコーチを務めていますが、それもチームに影響を与えたのでしょうか。

市川さん「攻めの戦略に変わったのは両角コーチの影響が大きいです。攻めのスタイルといってもいろいろありますが、より男子の形に近いものになったかなと。たとえば、少しだけ相手の石を押す“ソフトウエイト”というショットを使って、より攻めのバリエーションが増えました」

――全体のスキルが上がったことに加え、両角コーチの影響があったというわけですね。

市川さん「そういうことです!個人のスキルと戦術が上手くマッチしたように思います」

両角友佑コーチ

――市川さんが日本選手権を見て、特に印象的な変化はどの辺りですか?

市川さん「まず、作戦が大きく変わったことですね。そして、それと同じくらいポジション変更の影響も大きいです。
最年少ながら読みが的確で、上手くチームのバランスを取れる中嶋星奈選手がスキップになったこと、松村選手がフォースからサードになって得意のスイープをする機会が増えたこと。さらに、メンタルに波がない北澤選手がフォースを務めることでミスが起きても冷静にリカバリーできるようになったため、相手チームとの得点差が開いていかないのが大きかったです」

市川さんだから知る!中部電力の4人ってどんな選手?

中部電力の各選手について、それぞれの人柄やポジションとの適性について教えてください。まず、リードの石郷岡葉純(いしごうおかはすみ)選手はどんな選手ですか?

リード 石郷岡葉純選手

市川さん「普段はとってもおしゃべりで明るく、かつリードに必要な安定感も兼ね備えている選手です。氷に乗るとクールで落ち着いているのが彼女の強みです。」

――オンとオフの切り替えが上手ということですか?

市川さん「そうですね。リードはできるだけ安定して投げることが重要なので、切り替えが上手な彼女に今のポジションは合っていると思います。大切な一投目を確実に決めてくれるので安心感がありますね。実際は、氷から降りるとチームで一番のおしゃべりなんですけど(笑)」

――セカンドとスキップを務める中嶋星奈選手について教えてください。

セカンド/スキップ 中嶋星奈選手

市川さん「ジュニアの頃から上手くて、どのポジションでもこなせる選手です。ソフトウエイト系のショットを駆使できるのが彼女の強みですね」

――スキップを務めているということは、戦略を立てるのが上手ということですか?

市川さん「なんでもひとりで決めるというよりは、“これとこれがあるけど、どっちがいいと思う?”という提案をして話し合い、投げたいウエイトは投げ手に決めさせるようなタイプ。これが今の中部電力にマッチしていると思います。最年少ということもあり、他の選手の意見を尊重しながら作戦を立てていくタイプですね」

――チームのバランスを取りながら戦略を考えているんですね。

市川さん「そうです。彼女はいじられキャラというか、愛されキャラなので(笑)。一方的に指示を出していくタイプではありません。カーリングは皆でやるスポーツなので、それぞれが投げたいショットもあるはず。上手くバランスを取ってやっているなという印象ですね」

――サードの松村千秋選手はどうでしょうか?

サード 松村千秋選手

市川さん「彼女の明るさや姉御肌な部分がチーム内のコミュニケーションの“キモ”となっています。チームの中ではお姉さん的なポジションです。性格がサバサバしていて、上手にみんなをまとめているように思います」

――お姉さん的なポジションなんですか?

市川さん「はい、包容力があるっていえばいいんでしょうか。全てのポジションを経験しているので、それぞれの気持ちを分かっている部分も大きいです。ナチュラルにチームをまとめるコミュニケ―ション能力があります。いろいろ経験してきた中で、サードという一番ハマるポジションを見つけたような感じです」

――市川さんから見て、サードは松村選手に合っていると?

市川さん「はい。サードは石を3、4つ動かさなければいけない状況も多く、それなりにパワーが要求されますが、彼女はそれも持っていますし、正確性もあるので」

――フォースの北澤育恵選手について教えてください。

フォース 北澤育恵選手

市川さん「他のポジションでも輝いていましたが、フォースになってさらに輝きを増しましたね。最後に投げるのはとてもプレッシャーを感じます。しかし、彼女はメンタルが本当に強いです。日本選手権でも表情ひとつ変えずひょうひょうと投げていましたから」

――もともとメンタルが強い選手なんですか?

市川さん「フォースを務めるようになって、彼女のメンタルの強さがより顕著に実感できるようになったイメージです。波がないのはもちろん、ミスをしても引きずらないですし、自分でリカバリーできてしまう。今回の日本選手権を見て本当に驚きました!」

――市川さんのお話を聞くと、中部電力はそれぞれが異なった個性を持っているチームだということがわかります。
今シーズンは清水絵美さんが一線を退き、マネジメントに移りましたが、日本選手権ではリザーブとして登録されていました。リザーブの影響は大きいのでしょうか?

市川さん「清水さんは世話好きでお母さんのような存在です。私と一緒にプレーしていた頃から、年下なのに“お母さん”でしたし(笑)。そんな清水さんがチームに帯同していることで安心感はあると思いますね。プレー中以外は5人で過ごすので、5人目の影響ってとても大きいんです」

両角友佑コーチとリザーブ清水絵美選手

いつもどおりの試合運びができれば上位入賞も!アジア勢にも注目!

ピョンチャンオリンピックでの日本(ロコ・ソラーレ)の銅メダルが大変話題になりましたが、日本は世界で見るとどのあたりのポジションにいるんでしょうか?

市川さん「強豪国はスイス、スウェーデン、カナダです。その次に韓国、ロシア、日本、スコットランドが続くような状況ですね。なので、まずは韓国やロシアに勝って第2グループから抜き出せるか、そして先頭集団の強豪国に追いつけるか、が今後の見どころです。3月16日からはじまる世界選手権では、韓国やロシアに勝てればベスト4を狙えるのではないかと思います」

――ベスト4!韓国、ロシア、スコットランドに勝つためには何が必要だと思いますか?

市川さん「日本選手権を見た印象だと、相手に引っ張られた試合展開になることがあったので、まずは会場の雰囲気に飲まれないことが大切です。攻めるなら攻める!というように、自分たちのプレーをいつもどおりにできるかどうかがカギになります」

――日本のカーリングのレベルは上がっているんでしょうか?

市川さん「確実に上がっています!毎年レベルが上がっているなと感じますが、今年の日本選手権は特にそれが顕著でした。実際、世界ランキングをみても順位は上がっていますよ」

ーー世界選手権ではどんなところに注目して見ると楽しめそうですか?

市川さん「中部電力は誰かが抜きん出ているわけでも、誰かが引っ張っているわけでもありません。しかし、高い総合力が魅力のチームです。4人それぞれの個性やチームワークに注目して見るとおもしろいですよ。
また、日本以外ではアジア勢の活躍にも注目したいところです。アジア自体のレベルが上がってきているんですが、とくに韓国は代表が若いチームに変わってもしっかり結果を残しているので、国全体のレベルが上がっていると言えますね。実力的には日本とそれほど差はないですが、勝負強さやここぞというときの集中力、ピークの持って行き方が上手いなと思います」

3月16日からデンマークで開催されるカーリング女子世界選手権では、アジアのチームがヨーロッパやカナダなどの強豪国にどこまで食い込めるかが最大のみどころとなりそうです。
ポジションや戦略の変更でチーム全体が強化された中部電力は、世界の大舞台でどれだけ力を発揮できるでしょうか。選手の個性や戦略に注目しながら応援しましょう!

市川美余(いちかわ みよ)

長野県出身、1989年生まれ。
元カーリング女子日本代表・元中部電力カーリング部主将。
7歳からカーリングをはじめ、2005年の日本ジュニアカーリング選手権で優勝。
高校卒業後の2008年に中部電力に入社し、カーリング部に所属。
2011〜2014年、日本カーリング選手権4連覇。
日本カーリング界の人気を支えるも2014年に引退し、現在は1児の母。

                   
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