読み込み中です...

2019年2月28日(木)

常識を破壊する!身長187cmのビッグクライマー・楢﨑明智

東京オリンピックから新たに採用された「スポーツクライミング」は、「ボルダリング」「スピード」「リード」の3種目の総合成績で争う「複合」で行われます。日本は「ボルダリング」では、2014年から世界ランキング5年連続1位(2019年1月発表)の強豪国ですが、登り方が大きく異なる「スピード」については、苦手意識を持つ選手が多いのが実情です。

そんな中、「複合」で活躍できる若手のホープとして注目されているのが、1999年生まれの楢﨑明智選手です。187cmの長身を生かしたダイナミックなクライミングスタイルで「ボルダリング」と「リード」に新風を吹き込むとともに「スピード」でも外国人選手に引けを取らない速さ見せつけています。

遠くのホールドに、ヒョイッと届くとかできるんです!

170cmの男性と比べると身長・リーチ共に差は歴然

楢﨑明智選手の持ち味は、187cmの長身と195cmのリーチです。日本男子オリンピック強化選手の平均身長約169cmを20cm近く上回っています。楢﨑明智選手はその大きな体を生かして他の選手なら届かないホールドをつかむことができます。壁を登る速さを競うスピードでも、ゴールに早くタッチした方が勝ちとなるため、身長とリーチの長さは有利に働きます。

楢﨑明智選手

身長は場面によって大きなメリットになります。例えばボルダリングでは、ホールドが近くに感じられると登りやすいですし、スピードではホールドを一手飛ばして進んだり、ほかの選手が苦労するような遠くのフットホールドにヒョイッと届くとかできるんです。

左:楢﨑明智選手(弟)右:楢﨑智亜選手(兄)

楢﨑明智選手の兄で、2016年にボルダリングW杯年間優勝、世界選手権で日本人初優勝を成し遂げた日本ボルダリング男子のエース、楢﨑智亜選手は弟をこう評します。

楢﨑智亜選手

みんなのイメージ通り、デカいんですよ(笑)。でも、それだけじゃない。例えば外国の体格がいい選手って、体重も重くて指の力が弱い傾向にあるんですけど、明智は軽いからホールドも持てますし、何より足の使い方がめっちゃうまい。繊細な動きが得意で、重心移動もすごいスムーズです。フィジカル面の安定感がもっと出てきたら、手がつけられなくなっちゃうんじゃないかって思いますよ。

“模範解答”ではなく、自分なりの“正解”を探す!

世界ユース選手権(2018年モスクワ)

ボルダリングでは、スタートからゴールまでのルートを“課題”と呼びます。それぞれのホールドをこう辿ればゴールに到達できるという、いわば“模範解答”が隠されているからです。このため、選手はホールドの位置を出番の直前まで見ることはできません。裏返しに配布された答案用紙を表にしてから問題を解き始めるように、制限時間内に“模範解答”を探しながら登っていくのです。

とはいえ、正解は一つでなく、他のルートで登っても構いません。こうした想定外のルートでゴールすることを“課題を壊す”といいますが、楢﨑選手は、この“課題を壊す”登り方を得意としているのです。

楢﨑明智選手

ホールドを設置して“課題”をつくるルートセッターの身長は大体170cm前後なんです。同じくらいの身長の選手にはちょうど良い間隔ですが、僕には狭い。ホールドをつかむ時にヒジが上がったり腰が引けてしまうこともあって、壁から重心が離れて落ちやすくなるんです。だから僕は、“模範解答”ではなく、自分なりの“正解”を探しながら登るようにしているんです。自分なりの“正解”でゴールに到達できると、“課題を壊せた!”って楽しい気持ちになりますよ(笑)。

しかし、 “課題”によっては、身長の高さやリーチの長さが、デメリットになることもあります。どうしても狭い間隔で設置されたホールドを辿らないと進めない場合があるからです。

楢﨑明智選手

そんな時に必要なのが、体の柔らかさと無理な体勢でも体を支えられる筋力です。僕は、壁に登ってホールドを持ったまま腕を伸ばしたり、腰より高い位置に足を上げたり、ボルダリングをしながら柔軟性や筋力を強化しています。最近は、バランスボールやヨガマットを使うこともあります。例えばスラブという90度より奥側に倒れている壁だとバランス力がとても重要になるからです。

「スピード」は、クライミングというより、陸上競技!?

2018年アジア選手権・楢﨑選手(左)

楢﨑選手は、日本人に馴染みの薄い「スピード」でも真価を発揮します。スピードは、高さ15mの壁をいかに速く登れるかを競うタイムレース。ホールドの数や位置が世界共通に定められているため、スピードの壁がある施設に遠征し、規定のコースで練習を繰り返しています。

強豪国は、ロシアや東ヨーロッパの国々です。背が低くリーチが短い選手は、ホールドを斜めに辿ってジグザクに登りますが、リーチが長い選手は、真上のホールドに手が届くため、直線的に登ることができて圧倒的に有利です。直線的に登るためには、上のホールドを手で掴んで体を引っ張り上げる腕力と、下のホールドを力強く蹴ってジャンプする脚力が必要で、有力選手の中にはボディービルダーがいるほど。ちなみに、男子の世界記録は5秒48(2017年4月)、日本記録は6秒92(2019年2月)です。

楢﨑明智選手

僕にとってスピードは、腕を使うというより足でホールドを蹴っ飛ばす感覚、スポーツクライミングというより、陸上競技のような印象です。子供の頃から陸上選手こそアスリートだと憧れてきたので、自分もその一人になった感じでメチャクチャ楽しいですね。(笑)フライングしたら一発アウトなので、緊張感はありますが、とても魅力的な種目です。

取材中の楢﨑選手は、ストイックな競技者というより天真爛漫なお兄さんという感じで、明るい笑顔が印象的でした。日本クライミング界に現れた“期待の新星”は、フィジカルに加えてメンタルでもスケールの大きな“ビッグクライマー”です。

                   
※NHKサイトを離れます

関連記事

    人気の記事ランキング

      記事ランキングをもっと見る

      最新の記事