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2019年2月28日(木)

進化する「スポーツ×科学」 今明かされる栄光への秘話シリーズ「スポーツ平成史・オリンピック」第4回

まもなく幕を閉じる、「平成」という時代。サンデースポーツ2020では、2月から4週にわたってスポーツの平成史を振り返ります。
2月10日放送回のテーマは「オリンピック」。

数々のドラマと感動を生み、平成を彩った4年に1度のスポーツの祭典、オリンピック。急速に進化を遂げる世界のライバルたちを前に、日本のアスリートは試行錯誤を繰り返し、メダルをつかみ取ってきました。

平成の30年でスポーツはどう進化をし、そして次の時代、どこへ向かってゆくのか。有森裕子さんと荻原健司さんという二人のメダリストと共に見ていきます。

今回は、今やメダル獲得に不可欠とも言われる要素となった、「スポーツと科学」の進化について。日本がオリンピックでのメダル数を増やしていくまでには、当初は距離があったアスリートと科学者たちが「チーム」となっていく、知られざる秘話がありました。

劇的な進化!スポーツ科学

Windows95など家庭にパソコンが普及し始めた、平成初期。スポーツに科学を取り入れようとする動きが進みました。

しかし、当時の動作解析では、単純な線で動きを表現するのが精一杯。そこからの進歩は目覚ましいものでした。

平成初期の動作解析

動作解析は平面から3Dへ。空気抵抗や筋肉の動きなどあらゆるものが可視化され、今や平成のアスリートに科学はなくてはならないものとなったのです。

現在の動作解析

遠かったアスリートと科学の距離…

スポーツ科学の進化を支えたのが平成13年に274億円をかけて作られた「国立スポーツ科学センター」。

この場所を拠点として、アスリートを科学で支えるということは今では当たり前となっていますが、当初は苦労もありました。

施設の設立当初から関わる松尾彰文さん。当時、研究者の分析に興味を持たない選手が多かったというのです。

松尾彰文さん

データフィードバックミーティングなんかしてても、じゃあ次どうしましょうって言った時、「ああ僕いいです」と。「自分でやりますから」って。自分の経験とかコーチのアドバイスを自分のものにしてやってきて、記録が出たことに自信持ってる人たちですからね。

科学に背を向けていたアスリート、実はこの人もそうでした。

陸上短距離でオリンピック4大会出場の朝原宣治さんです。

朝原宣治さん

ただ測ってるだけ、測定してるだけでね。なんの意味があるのかなって言う気持ちは正直あったかもしれないです。選手側もどういうデータが欲しいのかとか、多分想像がつかないような状況だったんじゃないかなと思うんですね。

アスリートと科学の「チーム力」アップへ

そんな朝原さんのために松尾さんが作った資料があります。

朝原宣治さん

これすごい題名ですよね。サポート・朝原選手の疑問に答える、って。

スタートから8歩目までの足の位置を視覚化。選手の感覚と計測したデータをすり合わせるためのものです。8歩目の距離が最も伸びたのは、一番右のパターンだと一目でわかるようになっています。

難しい数字を使わずにいかに分析結果を伝えるか。松尾さんたちの試行錯誤の結果でした。

松尾彰文さん

僕らはやっぱりグラフが好きなんですね。この辺で速度上がってますよ、ピッチ上がってますよって。でも、朝原さんは「足跡」を見て、「あっこれ一番分かりやすい」って言いましてね。これは感覚の違いだなって。こういう目線を研究者はやっぱり忘れちゃいけないなと思います。

朝原宣治さん

感覚+データというか、そういうしっかりとした現象が目に見える形で現れた事で、雲の中を探るような形から、ある程度道筋が見えやすくなったと思います。やっぱりその中には発見があるんですね。こんな楽に走ってるのにすごいタイムで通過してる!とかね。

研究者とアスリートがひとつのチームとなって戦う。
松尾さんは練習場に足を運んで、その場でデータをフィードバックすることもありました。リレー練習では、バトンパスをよりスムーズにするために、バトンの渡し手と受け手の動きを、その場で2画面で見ることのできる新たなシステムも導入しました。

そして、平成20年の北京大会。
多くの人が感動のシーンとして記憶している、男子400メートルリレー。朝原さんたち日本チームは史上初のメダル獲得を果たしました。データに裏打ちされた高速バトンパスで、強豪国と渡り合ったのです。

アンカーの朝原さんは結果が発表された瞬間バトンを放り投げ、チームのメンバーと抱き合い喜びを爆発させました。

朝原さんたちアスリートと、松尾さんたち研究者が「チーム」となって取り組んできたことが、オリンピックの舞台で結実した瞬間でした。

数字と感覚の一致

「スポーツ×科学」の黎明期にオリンピックに出場、その後指導や普及の現場に立ってきた有森さんと荻原さんは、「チーム」がデータを駆使してメダル獲得を目指すようになった平成の時代の変化をどうみているのでしょうか。

大越
有森さんはVTRを見ながら、朝原さんが語られていた「感覚とデータを一致させる」ことに非常に納得されていましたね。

有森
そうですね、やっぱり最終的に私たちアスリートって、まずイメージがあって、そこから体を動かす事になるので。単にデータとか数字とかを出されても、なかなかイメージが湧かないんですよ。体のイメージも動きのイメージも。なので、そこがきちんと見えて、イメージできて、「こういう動きをすればいいんだ」とわかって、やっと納得できるので。申し訳ないですけど、データだけを見せられたら、「ありがとうございます…」となってうまく使えないかもしれないです。

大越
荻原さんは、指導者としても今活動されてる中で、科学的なデータをチームみんなで共有する努力ですとか、そういうコミュニケーションは大事されていますか?

荻原
私は、スポーツは「アート」だと思っています。ということはアスリートは言い換えれば「アーティスト」。やっぱり先ほど有森さんがおっしゃったとおり、感覚で生きてるんですよね。自分の感覚が一番重要で。そこに対してデータが、数字がどのように貢献できるかっていうアプローチをしていかないといけないんだと思います。「君、データはこうなってるよ、数字はこうだからね」と、そればっかりを言うと、ちょっとアスリートはへそ曲げちゃうかもしれないですね。

情報の海の中で戦え

大越
国立スポーツ科学センターに代表されるように、オリンピックでのメダル獲得に向けて、科学的なサポートや施設面は非常に恵まれるようになりました。一方でやはりその個人の感覚、「アーティスト」としての感覚を大事にするという意味では、決して環境面で恵まれていない人たちのことも我々は考える必要があると思うんですよね。そういう場合、やっぱり大事なのは有森さん、個人の力って事ではないですか。

有森
個人の考える力、自分自身を見つめる対話力、自分の肉体に対する対話力、自分の日常の中で起こる事にどれだけ興味を持つことができるか。そういった1つ1つの力があることですよね。その上で、周りがいろいろサポートしてくれることがより生きて、形になるということだと。本人がその力がなければ、周りが何を用意しても多分ボーッと過ぎていくだけかもしれない。

荻原
今の時代は、アスリート自身がスマートフォンで何でも調べられますからね。色々なトレーニング方法だとか、自分にはどういうトレーニングが必要なのかって全部手元に出てくるので。あとは何を取捨選択していくか、そういう能力というかセンスも、アスリートには求められるんじゃないかと思いますよ。

有森
情報はある。ありすぎるんだけど、じゃあ自分はその情報を受けてどうするのかという事が分かってないとね。ただ何か数字が変動しましたと、それが全ての選手に当てはまるってことはないですよね。という事をちゃんと分かって、情報は得ないといけないと思いますね。

大越
情報に踊らされてるようではだめだと。

荻原
それは気をつけなければいけないと思いますね。

スポーツと科学の融合の過渡期にメダリストとなった二人からの提言。しかし現在の「デジタルネイティブ」な世代のアスリートたちはもしかしたら、日進月歩の技術を華麗に操りながら、さらに進化していくのかもしれません。

そして彼らを支える「チーム力」の強さは、過去最多のメダル獲得を果たした夏のリオデジャネイロ、冬のピョンチャンを超える、次の時代のオリンピックへの期待をさらに高めてくれています。

                   
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