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2019年2月27日(水)

プルシェンコが語る「羽生結弦"最強"伝説」 ~連覇を成し遂げるとしたら世界にユヅルしかいない~

オリンピックのリンクに立った者だけが知る、連覇の凄み。最強のスケーター、羽生結弦選手の高みに迫るアナザーストーリー。3回シリーズの2回目は、最も連覇に近づいたトリノオリンピック金メダリストのエフゲニー・プルシェンコさん。

4年後のバンクーバー大会でも絶対の優勝候補と言われながら、僅差で敗れた彼。オリンピック連覇の難しさを最もよく知る存在です。羽生選手も幼い頃から憧れ、尊敬し続けてきたプルシェンコさん。自分がなし得なかったオリンピック連覇に挑んだ羽生選手を、どう見つめていたのでしょうか。フィギュアスケート界の皇帝が明かします。

「初めてユヅルに会って驚いたよ "センスが違う"」

1997 年にシニアデビュー、2017 年に 35 歳で引退するまで 20 年間、銀盤に君臨し続けた皇帝・プルシェンコさん。

羽生選手は幼いころから彼に強く憧れていました。

エフゲニー・プルシェンコさん

初めてユヅルに会ったのは、彼が 10 歳くらいの時。日本でショーをしていた時だね。「あなたにすごく憧れている子供がいるよ」と言われて会ったんだ。


一目見て驚いたよ。センスが違う。スピンも上手で。ただあまりに痩せてたんで「しっかり鍛えれば、良い結果が得られるぞ」って言ったんだ。まさかオリンピックで2つも金メダルを取るとはね!

オリンピックに4回出場。シングルで金メダル1回、銀メダル2回。団体でも金メダルを1つ取ったまさに「皇帝」プルシェンコさん。羽生との年の差は 12 歳。初めて戦えるチャンスとなったのが、ソチオリンピックでした。

羽生の登場に興奮!「彼なら倒しがいがある」

2010年10月24日 グランプリシリーズ NHK杯

ソチオリンピックの3年半前、15 歳でシニアデビューした羽生選手。

その後、次々とタイトルを獲得し、来たるソチオリンピックへの出場権を手にしていきました。

エフゲニー・プルシェンコさん

登って来たな、と思ったよ。ソチオリンピックに向けて、最高の対戦相手ができた。腕が鳴ったね。


どれだけ昔から知っていようが、リンクに立ったら「敵」。彼なら、倒しがいがある。

プルシェンコさんが羽生選手の登場に興奮した背景には、その「前」のオリンピックで感じた、大きな「失望」があったのです。

"氷の上でどうやってユヅルを倒すか" そればかり考えた

2010 年2月バンクーバー五輪。前回トリノ大会で優勝したプルシェンコさん。58 年ぶりの連覇に挑みました。連覇を確信していましたが、僅か 1 点差で連覇を逃してしまいました。

エフゲニー・プルシェンコさん

バンクーバーオリンピックの時はケガだらけで、正直出られるだけで奇跡だった。負けたのは本当に悔しいし、採点にも不満があるけど、もし僕が出ていなかったら、もっとひどい戦いになっていたと思う。


あの頃は、戦い続ける選手が少なくて、みんなすぐに引退していく。まだまだ滑れるのに。僕は連覇を逃した悔しさより、戦う相手がどんどんいなくなるこが悔しくて仕方なかった。

ヤグディン選手(左)とライサチェック選手(右)

プルシェンコさんが銀メダルに終わったのは 2 回。金を取ったヤグディン選手とライサチェック選手は、連覇に挑む事なく戦いの場を去りました。

エフゲニー・プルシェンコ

引退していく選手の気持ちもわからないでもない。メダルを争うようなレベルまで行くと、維持するだけで本当にキツイ。あんな苦しみはもうゴメンだ!と思うから、オリンピックや世界選手権でメダルを取った選手は引退の道を選びがちだ。引退してもショーで滑った時は「メダリストの誰々」って紹介してくれるしね。


でも、そのせいでオリンピックという最高の戦いのレベルが下がってしまう。お前も辞めるのか?お前もか?って。それが悔しくて。

だからこそ、羽生選手という強敵が現れたことに、プルシェンコさんは、奮い立ちました。

エフゲニー・プルシェンコ

氷の上で、どうやって彼を倒すか。ショックを受けさせるか。叩きのめすか。そればかりを考えた。それが僕の流儀さ。

ユヅルが参加し続けることで "五輪は最高の戦いのレベルに"

そして迎えた、戦いの時。しかし、2人の願いは叶いませんでした。

エフゲニー・プルシェンコさん

腰の骨を止めていたチタン製のボルトが試合前の練習中に外れてあんな痛み感じたことない。演技は不可能だった。

ケガで個人戦を棄権。オリンピック4回連続出場、4つのメダルを獲得という強烈な記録を残して「皇帝」は去っていきました。

プルシェンコさんが去った衝撃が残るオリンピックで、金メダルを取った羽生選手。

エフゲニー・プルシェンコさん

ユヅルがソチで金を取った後、「引退しない。次も出る」と言ってくれて飛び上がるほど嬉しかった。


私が去っても、彼が参加し続けることで、オリンピックという最高の戦いのレベルが保たれる。結弦は、わかっているんだ。最高の演技は、試合でしかできないこと。そして、フィギュアスケートの世界にオリンピックチャンピオンになる以上の喜びは、絶対に無いってことをね。

ユヅルがその場に立てさえすれば "連覇は間違いない"

プルシェンコから受け取った、バトン。平昌オリンピックへとまい進した羽生選手。

その間の4年間、宇野昌磨選手やネイサン・チェン選手など若手選手の台頭はありましたが、プルシェンコさんは問われれば常に、「優勝候補は羽生選手」と答え続けました。

エフゲニー・プルシェンコさん

勝手に相手がミスする事も多いし、オリンピックならではの緊張感も、むしろアドレナリンをくれる。一度金メダルを取っているから、常に「上」に立てるんだ。


大事なのは技じゃなく、「経験」と「自信」。それを合わせ持っているのは、ユヅルしかいなかった。ユヅルはオリンピックを連覇した今だって、まだ「勝つ」ための進化を止めようとしないだろう?頂点の選手が一番貪欲なんだから、負けるわけがない。


連覇がどれだけ難しいのか、私は身をもって知っているけれど、誰かがやるとしたら世界に、ユヅルしかいない。だから僕はあのオリンピックでも『ユヅルがその場に立てさえすれば連覇は間違い無い』と断言していたんだよ。

『ユヅルがその場に立てさえすれば・・・』。

いま我々は、プルシェンコさんの予言が的中したことを知っていましたが、実は直前まで、「立てる」かどうかすら危ぶまれていました。右足首の大けが。大きなトラブルが羽生選手に襲いかかっていたのです。

次回は2月28日(木) 予定

次回は最終回。羽生選手の大きな支えとなり、金メダルをめぐる最大のライバルでもあった「あの」人物です。

<2月28日(木) 掲載予定>

                   
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