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2019年2月26日(火)

ディック・バトンが語る「羽生結弦 "最強伝説"」 ~ "毒舌"レジェンドも認めた「破格の存在」~

オリンピックのリンクに立った者だけが知る、連覇のすごみ。最強のスケーター、羽生結弦選手の高みに迫るアナザーストーリー。

3回シリーズの1回目は、羽生選手がオリンピック連覇する以前に、2大会連続で金メダルに輝いたディック・バトンさん。66 年ぶりに自らの記録に並ばれた彼は、どんな思いで羽生選手の演技を見守っていたのでしょうか?

フィギュア界の"生きる伝説"も「羽生劇場」を絶賛!

ディック・バトンさん

戦後、羽生選手以外にオリンピックを連覇したのは、たった 1 人だけ。

ディック・バトンさん、89 歳。フィギュアスケート界の「生ける伝説」となったその人は、ニューヨーク郊外に住んでいます。

机の上に何気なく置かれたこの2つのメダル。

ディック・バトンさん

これ(左)が 1948 年のオリンピックのメダルだよ。母にプレゼントしたらネックレスにしていたよ。


次のオリンピックのメダル(右)は父にあげたら、書類用の文鎮にしていた。ちゃんと2つ取れてよかったよ(笑)。

第一印象は、レジェンドらしい、にこやかで素敵なおじいさまでした。しかし・・。

実は、バトンさんはアメリカでも屈指の「毒舌」解説者として長年、鳴らしてきました。

66 年ぶりに自分の記録に並んだ羽生選手のことをどう思っているのか?おっかなびっくり、聞いて見ました。すると・・・。

ディック・バトンさん

結果なんて、おまけだよ。私の評価基準は演技がちゃんと「劇場」になっているかどうか、それだけだ。


独創的で、お客を呼べる「劇場」にね。羽生結弦の演技はそういう意味では、最高だ。みんなをうっとりさせる。満員御礼間違いなしだね。

羽生結弦との意外な共通点とは?

「毒舌」で有名なバトンさんですが、彼にはそれを言うだけの資格があります。

ディック・バトンさん

1952 年、コロラドで試合に出た時の映像だ。結構うまく滑っていると思うよ。

切れ味鋭いジャンプ。軸のブレないスピン。世界で初めて3回転ジャンプを跳んだのも、実はバトンさん。

ディック・バトンさん

今の選手は「スケート界を変える」という気概が足りないよ。


採点に縛られて窮屈で、新しい技をやろうなんて選手は全然いない。

羽生選手は違う。「4回転ループ」を始め、世界初の技を実現してきました。しかし、バトンさんが自分との最大の共通点として挙げたのは、意外な点でした。

ディック・バトンさん

ユヅルがソチオリンピックの後に言ったことに強い感銘を受けたんだ。


「うまく滑れなかった」と言ったことにね。

羽生選手が最初の金メダルを獲得した 2014 年のソチオリンピック。ジャンプで転ぶなどミスが見られた中での優勝でした。

羽生結弦選手「結果としてすごい嬉しいなと思うのと半分、自分の中でやはり悔しいなと思うところが結構あるので、まあオリンピック金メダルとって言うのも何ですけれども、やっぱりちょっと悔しいかなって思います」。

1952年 オスロ五輪 (バトンさん 中央)

ディック・バトンさん

私もね。1948 年のオリンピックは良かった。最高の演技で優勝した。


でも次の 1952 年の時は、選手としては絶頂だったのに、ジャンプで転んでしまって。生涯で最大のミスだ。今でも悔やまれるよ。

──それでも 1952 年金メダルを取っていますよね?勝つだけではダメなのですか?

ディック・バトンさん

ダメだよ。なぜかって?転んじゃったからだよ。今のルールじゃあ、失敗しても点数が付くけど、私はああなった時に「フィギュアスケートは死んだ」と思った。


フィギュアスケートは採点スポーツである以前に、お客を「魅了する」ものなんだ。オーケストラが一音でも飛ばしたら台無しだし、バレエでダンサーが転んだら白けるだろ?同じだ。お客をがっかりさせちゃいけない。いけないんだ!


だからユヅルの言葉に感銘を受けたんだよ。「若いの、分かっているじゃないか!」ってね。

66 年ぶりの五輪連覇 「ダイヤモンド級の演技」

2018 年2月9日ピョンチャンオリンピック。オリンピックの3ヶ月前、右足首の靭帯に大けがをした羽生選手。本番5日前に会場に到着しましたが、試合に臨むのは4ヶ月ぶり。どこまで体調が戻っているのかは、なかなか分かりませんでした。

しかし、2018 年2月 16 日 ピョンチャンオリンピック 男子個人ショートプログラム。

ショートプログラムを終え、首位に立ちます。周囲の不安を、打ち消しました。

バトンさん以来、66 年ぶり、戦後2人目のオリンピック連覇が、現実味を帯びてきました。

そして、運命の時を迎えたフリー。その演技についてバトンさんは・・・。

ディック・バトンさん

彼のジャンプで見るべき一番重要なポイントは、スピードだ。ジャンプに入る時と、出るときのスピードが変わらない。そんな選手はまずいない。


跳びましたよ!なんてアピールはしない。他の選手は難しいジャンプを跳び終わると「終わった感」が出ちゃうけど、彼は切れ目なく、シンプルに演技を続けている。

まさに「羽生劇場」。とどまる事なく、1つの表現として貫かれた演技。羽生結弦選手、66 年ぶりのオリンピック連覇を成し遂げました。

──前の(ソチ)オリンピックの時と、どう違いましたか?

ディック・バトンさん

はるかに人を惹きつける演技になっていたね。


よりシンプルなのに、より伝わるものがある。点数なんて関係ない。この大舞台で見せうる、最高の「劇場」を魅せてくれたと思うよ。これぞ金を超えて、ダイヤモンド級の演技だね。

次回は2月27日(水)予定

ディック・バトンさんの連覇から、66 年後。オリンピック連覇達成者となった羽生選手。

次回の『羽生結弦 オリンピック連覇 ~メダリストたちが語る「最強」伝説~』は、それまでの間で最も連覇に近づいた「あの」人物です。

<2月27日(水)掲載予定>

                   
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