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2019年2月15日(金)

テコンドーの貴公子・鈴木セルヒオの"かかと落とし"に迫る!

“足のボクシング”といわれるテコンドーは、華麗なキックを応酬する競技。身長の高さがモノを言うため、日本人選手にとって世界の壁は高いのが実情です。そんな中、期待を集めているのが、ボリビア人の母を持つ鈴木セルヒオ選手です。身長177㎝、テコンドー界では恵まれた体型とは言えませんが、“かかと落とし”という大技を得意としていて、2018年の全日本テコンドー選手権大会で2連覇、アジア競技大会では、見事に銅メダルを獲得しました。

相手の出鼻をくじく大技“かかと落とし”

テコンドーの蹴り技には、胴をねらう中段蹴り(ミドルキック)と頭部をねらう上段蹴り(ハイキック)があります。“かかと落とし”は、上段蹴りの技の一つ、鈴木選手の場合は、半身の構えの後足に体重を移しながら前足を相手の頭上に振り上げ、その高い位置から足を一気に振り下ろして頭部をヒットさせます。当たらなくても相手に恐怖感を与える効果があります。しかし、キックの距離が伸びにくいため、相手に後ろに下がられるとヒットすることが難しくなり、逆にカウンター攻撃を受けてしまうリスクもあります。

鈴木選手は、まず、カットと呼ばれる胴への前蹴りや中段蹴りなどで相手を追い込んでいきます。テコンドーでは、直径8メートルの八角形の競技エリアから足が出ると減点になるため、相手はギリギリのところで攻めに転じて前に出てきます。相手との距離が近くなるこの一瞬を見計らって得意の“かかと落とし”を繰り出すのです。

鈴木セルヒオ選手

まずは、タイミングよく相手の攻撃を制しながら、コートサイドに追いやっていきます。すると場外を嫌って前に出てくるわけです。その前に出てきた相手に対して、“かかと落とし”をお見舞いするというのが、僕のひとつの勝ちパターンです。

本場韓国で養った“体の動きを見極める目”

“かかと落とし”は、そう頻繁に繰り出せる技ではありません。相手の体の動きを見極め、ここぞというタイミングを見計らってこそ、決めることができる大技です。鈴木選手は、どのようにしてそのタイミングを見極めているのでしょうか。その秘密を解く鍵は、高校時代の武者修行にあります。

神奈川県川崎市で生まれた鈴木選手は5歳で母親の母国ボリビアに移住、そこでテコンドーと出会いました。毎日熱心に稽古に励む鈴木選手、その姿を見ていた父親に韓国留学を勧められ、テコンドーの名門、漢城高等学校に単身留学しました。

鈴木セルヒオ選手

レベルの高いところで練習すればそれだけで成長できると思っていたのですが、テコンドーの本場韓国の強豪校の選手の実力は想像以上でした。多少の自信はあったのですが、すぐに勘違いだったとわかり、プライドもズタボロになりました。補欠の選手でも僕よりも圧倒的に試合巧者でした。

高校時代は3年間ずっと補欠でした。しかし鈴木選手は、この3年間にテコンドー選手として欠かせない武器を体得していたのです。そのことに気づかせてくれたのは、高校を卒業して進学した大東文化大学のテコンドー部監督、金井洋さんでした。

2018ドイツ国際オープンテコンドー選手権大会で銅メダルを獲得した鈴木セルヒオ選手(左)と金井洋監督(右)

大東文化大学テコンドー部 金井洋 監督

うちに来たときは正直に言って、秀でたところもなく並の選手でした。しかし、勘の良さは飛び抜けていました。また、非常に研究熱心で相手の弱点を分析する目も抜群でした。

鈴木セルヒオ選手

韓国にいた時はキツイだけで全く気づいていなかったのですが、韓国で強い選手にボコボコに蹴られているうちに、いつどんな蹴りが来るのか、それを防ぐためにはどうすればいいのか?危機管理能力や予測力が自然と身についていたんだと思います。

試合前、対戦相手の映像を取り寄せて何度も見る鈴木選手。得意技は何か、どのような技のコンビネーションを使ってくるのか、弱点はどこにあるのか、など様々な角度から徹底的に研究し、相手の体の動きを頭の中に叩き込みます。そして試合。相手のわずかな体の動きから次にどんな技が来るのかを察知して攻撃を巧みにかわしながら、相手を競技エリアの境界線へと追い込み、相手が減点を避けようと前に出てきたところを一気に“かかと落とし”で仕留めるのです。

鈴木セルヒオ選手

時々、見る目が良いという評価をいただきます。間合いの取り方や、相手の攻撃を瞬時に察知して封じる防御のタイミングのことですが、当初は感覚でやっていて、あまり自覚していませんでした。監督など周囲の方に褒められ、意識的に相手を見ながら隙をつく試合展開をするようになった途端、勝率がどんどん上がりました。

オリンピックメダルを手にして、ボリビアに凱旋したい

“かかと落とし”を武器に東京オリンピックでメダル獲得を目指す鈴木選手。それには、大きな理由があります。オリンピックのメダルを初めてボリビアに持ち帰って国民的ヒーローになりたいと考えているのです。実は鈴木選手は、将来、故郷ボリビアの大統領になって、誰もがスポーツを楽しめる国にしたいんだそうです。

鈴木セルヒオ選手

ボリビアにはオリンピックでメダルを取った選手がいません。国際大会に出場する機会も少なく、スポーツをする環境も整っていないんです。だから、僕が東京オリンピックでメダルをとり、将来はボリビアに帰って、ボリビアの発展のために貢献したいと思っています。お世話になっている金井監督にもボリビア大統領になりますよ!と宣言しています。

照れくさそうに笑いながら、大きな夢を語ってくれた日本テコンドー男子のエース、鈴木セルヒオ選手。その活躍に期待が高まります。

                   
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