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2019年2月15日(金)

華麗な足技テコンドー、防具がファイトスタイルを変えた!?

テコンドーの選手が身に着けている赤と青のヘッドギアーと胴プロテクター。実はこれらは、ロンドンオリンピックが開催された2012年から国際大会で正式に導入されたセンサー内蔵の電子防具です。導入以来、身を守ると同時に有効打の判定を行うこのハイテク防具は、テコンドーという競技そのものに大きな変化をもたらしてきました。華麗な足技が魅力のテコンドーの最新事情に迫ります。

韓国生まれのテコンドーは、まるで“足のボクシング”

1955年、韓国で生まれたテコンドーは、空手とキックボクシングをミックスしたような競技です。1ラウンド2分間の3ラウンド制(インターバル1分)、技ごとに得点が決められており、有効と認められた技の合計ポイントで勝敗を争います。胴へのパンチは1点、蹴りは2点、回転蹴りは4点です。頭部への攻撃は点数が高く設定されていて、通常の蹴りは3点、回転蹴りになると5点です。頭部へのパンチは禁じられていますが、頭部へのキックは得点が高いため攻撃の大半を占めます。瞬足の華麗な足技が最大の魅力で“足のボクシング”とも言われます。

ちなみに、試合ではあまり見かけませんが、プロボクシングと同じように攻撃で倒れた選手が10カウント以内にファイティングポーズを取れない場合にはノックアウト負け、セコンドが試合を中止させた場合は、テクニカルノックアウト負けになります。

超ハイスピードのキックを見極める電子防具

実は北京大会までのオリンピックでは、攻撃が有効か無効かを決める判定は審判の「目」と「耳」に委ねられてきました。そのため、誤審や微妙な判定への抗議も後を絶ちませんでした。テコンドーのキックは超ハイスピードのため、技の種類を見分けることは可能でも、有効にヒットしたかどうかを見極めるのはとても困難です。選手同士が重なって審判の死角になることもありますし、選手が相手の蹴りをのけぞるようにかわすと蹴りが当たったように見えることもあります。そこでWT(世界テコンドー連盟)は、2012年のロンドン大会以降、蹴りがヒットしたかどうかを感知するセンサー内蔵の電子防具が導入したのです。選手は、センサーが埋め込まれた胴プロテクター、ヘッドギア、そして電子ソックスを身に着けて試合にのぞみます。蹴りによって電子ソックスと防具が触れると、蹴りの圧を基に、センサーが有効にヒットしたと感知します。技が繰り出されるたびに審判が手元のリモコンで加点しており、センサーが有効打と見なした攻撃のみポイントになる仕組みです。

電子防具の導入がもたらしたファイトスタイルの変化

電子防具の導入は、審判のジャッジの正確性を飛躍的に向上させた一方で、テコンドー選手の戦い方に大きな変化をもたらしたと専門家は分析しています。全日本テコンドー協会で、審判委員と技術委員を務めるキム・ヨンソンさんです。

全日本テコンドー協会 審判委員・技術委員 キム・ヨンソンさん

キム・ヨンソンさん

例えば、相手をけん制するための技のひとつに、胴に繰り出す前蹴りがあります。カットという技ですが、電子防具が導入される以前は、クリーンヒットしても審判がポイントとして認めることはありませんでした。あくまで相手との距離を測るために使われる技だったからです。しかし、電子防具が導入されると、センサーが自動的にポイントとしてカウントするため、攻撃の技として使う選手が増えました。


電子防具は蹴りの強さに関わらず、それなりに接触すれば有効と判断しますので、多少、態勢が崩れた蹴りでもポイントになります。特に頭部は、安全面から軽い蹴りでも有効打とされるように設定されているため、上段蹴りの後に足を下ろさず、そのままもう一度、上段蹴りを繰り出す、まるで往復ビンタのようなコンビネーション技もでてきています。

武道からスポーツ、そしてエンターテイメントへ

電子防具の導入は、選手のタイプにも変化をもたらしました。頭部への攻撃が高得点につながることに加えて、相手との間合いをはかりながらけん制するカットという技でもポイントが取れるようになったため、足の長い長身の選手がこれまで以上に有利になったのです。その結果、選手の大型化が急速に進んでいるとキム・ヨンソンさんは指摘します。

キム・ヨンソンさん

身長が高く足の長い選手は、遠くから相手の胴にカットを当てることができて有利です。また、上段蹴りについても背の高い方が出しやすく、同時に受けにくいことは言うまでもありません。そのため、従来はあまり強豪国でなかった欧米諸国の選手が急速に力をつけてきており、欧米の選手に比べて身長の低い日本人選手は不利になりつつあります。

審判が目視で打撃の強さや美しさから有効打を判断していた時代、テコンドーは、「武道」でした。電子防具の導入をきっかけにジャッジの正確性が飛躍的に高まった結果、「スポーツ」としての競技性が増しました。そして、電子防具の判定を前提にした戦術の研究が進み、身長の高い選手がダイナミックな蹴りを多彩に操るようになったことでテコンドーは、華麗な足技を魅せる「エンターテイメント」の要素が一層高まりつつあるのです。

                   
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