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2019年1月15日(火)

徹底解剖!"みまバック" 伊藤美誠の快進撃を支える「表ソフトラバー」

伊藤美誠選手は2018年、中国選手に対して、圧倒的な強さを発揮しました。2018年5月の世界選手権の団体戦で日本選手に37連勝中だった劉詩雯(りゅうしぶん)選手を撃破。翌月のジャパンオープンの女子シングルス準決勝では陳幸同(ちんこうどう)選手を、続く決勝では王曼昱(おうばんいく)選手を破り、優勝。さらに、11月のスウェーデンオープンでは劉詩雯選手、丁寧(ていねい)選手に勝ち、再び決勝に進出。そして世界ランク1位の朱雨玲(しゅうれい)選手を4-0で圧倒し、優勝しました。

こうした彼女の躍進の理由のひとつに挙げられているのが、バックから繰り出される強烈なスマッシュ。それを生み出しているのが、ラケットのバック面に貼られた回転はかけにくいが、相手の回転に鈍感な「表ソフトラバー」なのです。

球筋を読むラバーチェック

卓球中継で、選手同士が互いのラケットを交換して、触ったりしながら、何かを確認しているかのような場面を見たことがありませんか。実はこれ、ただの儀式でなく、ラケットや表面に貼られているラバーの種類やメーカーを確認しているのです。トップ選手同士の対戦では、特にどんなラバーを使用しているかが勝敗に大きな影響を及ぼすからです。

卓球のラケットは表面にゴムでできたラバーを貼って使用しますが、現在トップ選手が主に使っているラバーは大きく3つ。「表ソフトラバー」「裏ソフトラバー」「粒高ラバー」です。

「表ソフトラバー」は表面に小さな粒が無数にあるラバー、「裏ソフトラバー」は粒のまったくない表面が平らなラバーです。その昔、表面に粒のあったラバーを裏返しにして貼る選手が登場したことから、「裏ソフトラバー」が生まれたと言われています。「粒高ラバー」は表ソフトラバーよりも粒の形状が長いラバーで、主にカットマンと呼ばれる守備型の選手が使っています。

「トップ選手に限っていえば、男子も女子もフォアバックともに裏ソフトラバーを使っている人が大半を占めます。裏ソフトラバーにはとにかく回転がかけやすいという特徴があります。現在の卓球は攻撃が主流で、高速で打ち合いながら相手のミスを誘い、ポイントを取っていきます。速いボールを相手コートに入れるには、弧を描くように飛ぶドライブ回転をかけることが、最も理にかなっているんです」と語るのは、卓球コラムニストの伊藤条太さんです。

卓球コラムニスト 伊藤条太さん

伊藤さんは、フォア面に回転をかけやすい「裏ソフトラバー」を使いつつ、バック面には回転はかけにくいが、相手の回転に鈍感な「表ソフトラバー」という異なるラバーを使っている選手もいると言います。

とくに女子は男子に比べてリーチが短く、またパワーでも劣るため、体の前で打たなくてはならないバックハンドではドライブで威力を出すことが難しくなります。そのため回転をかけない「スマッシュ」を主軸にする傾向にあります。その「スマッシュ」に適したラバーが、相手の回転に鈍感な表ソフトラバーだというわけです。

伊藤美誠選手も、バック面に「表ソフトラバー」を使う選手の一人、伊藤選手の快進撃の秘密は、この「表ソフトラバー」にあるといっても過言ではないと言います。

“みまバック”を生み出す「表ソフトラバー」

「表ソフトラバー」から生み出される伊藤選手の武器“みまバック”。その秘密を2012年のロンドン五輪の団体戦で福原愛選手、石川佳純選手とともに日本卓球初の銀メダルを獲得した元日本代表・平野早矢香さんに聞きました。

ロンドン五輪女子団体で銀メダルを獲得した平野早矢香さん(中央)、福原愛(左)、石川佳純(右)

「トップ選手にとって早いボールを打ち返すことは打ってくるコースさえ読めればそう難しいことではありません。それよりも、いかに回転を読んで、回転に合わせた打ち方ができるかが勝敗を分けるポイントです。伊藤選手のバックのスマッシュは、「表ソフトラバー」の特徴を生かした回転の少ないスマッシュです。また、同時に回転をかけづらいはずの表ソフトラバーで強烈なバックハンドドライブを打つこともできるのです」

元女子卓球日本代表 平野早矢香さん

「もちろん裏ソフトラバーを使ったほうが回転は絶対にかかるのですが、伊藤美誠選手がとくに上手いのは、相手の回転を利用するテクニックです。サーブですごく回転のかかったボールを打った場合、相手のレシーブボールにはまだ回転が残っていることがあります。彼女はその回転を利用してバックハンドのドライブをかけるという技を持っているんです」

東京オリンピックでも“みまバック”さく裂!?

伊藤美誠選手の“みまバック”も、いつかライバル選手たちに対策を講じられ、勝てなくなってしまうのでしょうか。それに対し平野早矢香さんは、伊藤選手は極めて対策の立てにくい選手だと言います。

「もちろん中国も伊藤美誠選手への対策を練ってくるはずですが、例え伊藤選手に似た特徴を持つ選手を用意して特訓をしても、彼女のリスキーで意表をつく技を完璧に真似するのは困難です。具体的に言えば、表ソフトラバーは球離れが早くスピードが出る反面、コントロールしづらいのですが、彼女のコントロール能力はこの一年で非常に安定感を増しました。その上で、表ソフトラバーで強烈なドライブ回転もかけられます。トップ選手になればなるほど、相手の球筋を予測できるようになるものですが、今の伊藤選手の多彩な技は、そうしたトップ選手の予測をはるかに超えています。中国選手は伊藤選手に対しての戦術がいまだに確立されていないように思います。」

誰がどんなラバーを使い、どんな回転のボールを打っているのか?ラバーを巡る駆け引きに注目すると、卓球が一層楽しめますよ。

平野早矢香さん

1985年生まれ。栃木県出身。5歳で卓球を始め、18歳で全日本卓球選手権・女子シングルス初優勝。2007年度から3連覇を含む通算5回の全日本選手権優勝。2008年北京五輪で団体戦4位。2012年ロンドン五輪では福原愛、石川佳純両選手とともに団体戦で銀メダルを獲得した。2016年の現役引退後は、全国の講習会や講演会を行うほか、スポーツキャスターとしても活動している。

                   
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