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2019年1月11日(金)

卓球ニッポンを飛躍させる!?"スポーツテック"に迫る!

近年急速に発展するセンサーやビッグデータ解析、AI(人工知能)といった最先端のテクノロジーをスポーツ科学の中で活用する「スポーツテック」が、日本の卓球界に導入され始めています。2018年に開幕した日本の卓球リーグ、Tリーグの練習場で最前線を取材しました。

年間1000以上の試合映像を収集

大阪に本拠地を置く女子チーム「日本ペイントマレッツ」で“スポーツテック”を担当している池袋晴彦コーチは、2012年のロンドン五輪と2016年のリオ五輪の代表チームで映像収集を担当、国際大会にも帯同して世界の強豪選手の試合を撮影し続けました。集めた映像の数は、年間1000試合以上にのぼります。

日本ペイントマレッツ 池袋晴彦コーチ

映像から選手強化に必要なデータを導き出す

池袋さんは、2018年2月にTリーグに合流し、以来、膨大な映像データと豊富な知見を選手強化に活かしています。練習場の卓球台の周りには、カメラと大きなモニター。選手の動きを定点撮影して、その映像をモニターに映し出しています。

卓球台のすぐ横にモニターをおき、自分のフォームをその場で確認

「撮影した映像は、5〜6秒遅れでモニターに映し出される仕組みです。こうしておけば、ラリー中のミスを振り返りたいときや、フォームをチェックしたいときに、すぐ映像で確認することができます。いちいち巻き戻す必要がないので効率的ですし、コーチが言葉で指摘するよりも視覚的で説得力があります。ちなみに遅延時間は自由に設定できるので、練習メニューによって使い分けています。」

代表チームのスタッフ時代から行ってきた試合映像の解析も進化しています。

「試合映像を確認しながら解析ソフトを使って、様々なデータを入力していきます。例えば、サーブは、『横回転』か『縦回転』か『逆回転』か、打ち込まれたコースも記録します。レシーブは返球したコースや打法に分類して得点の推移を入力します。さらに、ボールが卓球台のどの位置でバウンドしたのか、ダブルスの試合なら、どちらの選手が打ったのかも欠かせない情報です。こうして選手の癖や球筋、打球の質や配球パターンなどを割り出していくのです」

集計したデータをもとにレポートを作成して、分かりやすい資料に仕上げるのも池袋さんの大事な仕事です。映像で資料を作ったり、他の競技で導入されている計測技術を使って、より説得力のある資料を作ろうとしたこともあります。

「ある中国のトップ選手の軽快なフットワークの要因は歩幅にあるのではないかと考え、うちの所属選手と比較した映像を作ったことがありました。サッカーやラグビーで導入されている選手の移動距離や加速度の計測を卓球で試したこともあります」

“勝つためのポイント”が見えてきた

池袋コーチが使う“スポーツテック”は着実に成果を上げていますが、導入当初は、戸惑う選手も少なくありませんでした。2013年の世界卓球選手権パリ大会の代表選手で、2017年の全日本社会人卓球選手権大会では女子シングルスで7位に入賞した松平志穂選手もその一人です。

「私はこもって練習したいタイプだったので、カメラで撮られること自体がすごく嫌でした。でも、次第にいろいろな発見がありました。例えば感覚とのズレです。ラケットの角度を修正しようと自分では努力しているつもりでも、映像で見ると全然、直っていません。極端に思えるくらい矯正しないと、癖などは直らないんだなと気づかされました。」

松平志穂選手

「自分はサーブが得意でTリーグでもサービスエースが一番多いというデータが出ていました。その反面、サーブが不調だと、後手に回ってしまうという課題を感じていました。でも、試合を細かく分析してみると、苦手だと思っていたレシーブでもきちんとポイントが取れていることが分かったんです。レシーブに苦手意識が強く、その分、サーブにこだわっていたのですが、レシーブでカバーできればいいんだと思えるようになりました。データで確認できたことは大きな収穫です。」

松平選手は、池袋さんが用意してくれる映像や資料が真価を発揮するのは、国際大会で海外選手と初めて対戦する時だと言います。

「プレースタイルやサービス、レシーブのデータなどを事前にもらえるので、試合展開を予測しやすくなります。前回、格上のインド人選手に勝てたのも日本から送ってもらった映像のおかげだと思っています。身長が高く、バック面に特殊なラバーを使っている選手でした。彼女の対戦者は、バック攻撃を嫌がって、フォアにボールを集めたため、そのボールを狙い撃ちされていました。そこで私はあえてバックに返すことで得意な攻撃を潰す作戦を立てたんです。」

“スポーツテック“を若手育成の切り札に!

日本ペイントマレッツ 三原孝博監督

「日本ペイントマレッツ」で“スポーツテック”を本格的に取り入れた指導を柱に据えたのは、監督の三原孝博さんです。三原さんは、卓球ニッポンのさらなる進化には、池袋コーチと進めている“卓球版スポーツテック”が欠かせないと言います。

「Tリーグや日本の卓球界の将来を考えると、次の世代のジュニア選手を育成していかなければいけません。そんなときにこれまでのような経験や勘だけに頼った指導では、若い選手の成長を鈍らせるだけです。ボールにどれくらいのスピードが出て、どれくらいのスピンがかかったら、世界レベルになれるのか。足の位置やフォーム、ラケットの出し方など、一つ一つをデータから導き出して、選手に伝えることが大切です。余計な練習をさせずに、最短距離で習得できるトレーニングとはどんなものなのか、このチームで進めている卓球版の“スポーツテック”がスタンダードになれば卓球ニッポンの更なる飛躍が見えてくると思います。」

                   
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