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2018年8月16日(木)

円盤投げ 湯上 五輪期待の「大きな希望」

8月18日にインドネシアで開幕するアジア大会。注目は陸上円盤投げに初出場する、25歳の湯上剛輝(まさてる)選手です。陸上の男子円盤投げは、1964年の東京オリンピック以来、日本はオリンピックに出場できていません。そうした中、次の東京で悲願の出場なるかと期待されているのが、湯上選手です。身長183センチ、体重107キロの巨体で6月の日本選手権で62メートル16を投げて日本記録を更新しました。そしてもう1つ別の理由でも大きな希望をもたらしています。

わずか30分ほどの出来事

陸上日本選手権 男子円盤投 決勝 (2018年)

山口県で行われた日本選手権。湯上選手は6回の投てきで投げるたびに記録を伸ばし、3回連続で日本記録を更新しました。わずか30分ほどの間の出来事に会場はどよめきました。

湯上剛輝選手

今までで一番うれしくて、一番投げがいのある30分だったなと思う。会場を見てみなさんすごく拍手をしてくださって、その動きで、あ、なんかみんな喜んでくれているなっていうのが分かった。

実は、湯上選手の両耳は生まれた時からほとんど聞こえません。自分の投てきがうまくいったかどうか、スタンドのお客さんの動きも見て確認しています。ふだんは補聴器を付け、相手の口の動きを見ながら会話しています。円盤投げを始めたきっかけを聞きました。

陸上日本選手権 男子円盤投 決勝 (2018年)

湯上剛輝選手

小学5年生のときに、人工内耳を頭に埋め込んだんですけど、頭に衝撃のある体に接触のあるスポーツは危険だからできないよ、ということでできなかった。

球技をやってみたかったが、あぶないからだめだと言われてしまって。砲丸投げに取り組んだ。けれど距離は伸びておもしろいが、自分の中では迫力がなくておもしろくないなあと思っていて。

そんな時に、勝手に円盤をひっぱりだして投げてみた。円盤の飛ぶ形っていうのがすごくきれいで、本当に。しっかり投げられたらぶれなく飛んでいくんですけど、すーっと飛んでいく姿がすごくきれいって言うか美しいと思って、はじまったんですよね。

耳が聞こえないのは「自分の武器」

湯上選手は高校から本格的に競技を始め、聴覚障害者の世界大会デフリンピックではすでに銀メダルを獲得しトップクラスです。ただ湯上選手は、より高い目標を掲げています。

湯上剛輝選手

日本トップになりたいとか世界陸上、オリンピックに出たいという自分の思いからすると、やっぱりそっちを目指したいっていう気持ちがあって。

ー耳が聞こえるライバルと競うわけですが、その点はどのように考えていますか?

湯上剛輝選手

正直、自分では大きなハンデとは思っていなくて。むしろ耳が聞こえないことは自分の武器になると思っている。補聴器をはずすと何も聞こえなくなるが、何も聞こえない世界だからこそ、ものすごく集中できる。

ーそれって全然想像できない世界、どんな感じなんですか?

湯上剛輝選手

静かな自然の中で、明鏡止水という言葉があるが、何も考えなくなるというか、頭の中がからっぽになる。そういう瞬間って、プレシャーとか緊張とか、そういうものすべて忘れる瞬間で。自分が一番力を発揮出来る瞬間だと思う。

ーハンデではなく自分の武器、でもやっぱり球技できなかったり「なぜ自分だけが」という風に考えたことは?

湯上剛輝選手

それはもちろんあった。小中高となんで自分だけ耳が聞こえなくて、こんなに苦労しなければならないんだ、とたくさん思ったことはある。
例えば、歌の授業で発声ができなかったり、音が分からないのでどう発音して良いか分からなかったり、っていうのはすごくあった。

ーその都度、どう思ってがんばってきたんですか?

湯上剛輝選手

本当にまわりの人がそれを理解してくれて、僕が困っているたびに助けてくれたりしたので、乗り越えることができた。自分は耳が聞こえないから、それはもう本当のことだから仕方ない。じゃあそれをもっとプラスにできないか、と思ってずっとやってきた。

飛躍的に記録が伸びたラグビー部コーチの教え

陸上日本選手権 男子円盤投 決勝 (2018年)

湯上選手は大学でも競技を続け、現在は、実業団のトヨタ自動車の陸上部に所属。記録を伸ばしたいと、筋肉トレーニングや食事などあらゆる分野の人に教えをこい、去年の夏、ラグビー部のコーチに指導を受けたところ、飛躍的に記録が伸びました。

湯上剛輝選手

『湯上くんの弱いところはお尻の筋肉、背中の筋肉、太もものうらの筋肉。そこを重点的にアプローチして鍛えよう』ということで、トレーニングをした。
そうすると、今までより地面からうまく力が伝えられるようになって、1年ベストが出なかったのに2週間で自己ベストがでた。結構まわりの方が助けてくださっているので、ありがたい。

「自分もやってみよう」と1歩踏み出す勇気を

陸上日本選手権 男子円盤投 表彰式 (2018年)

今回のアジア大会は、2020年の東京オリンピック出場に向けた重要な大会と位置づけて臨みます。

湯上剛輝選手

僕でも頭を見上げてしまうような選手ばっかりなので、勝てるんかなと正直思ってしまうが、自分が活躍することで、何かしら障害を持っている人たちに『自分もやってみよう』と1歩踏み出す勇気を与えられることにもなると思うし、自己ベストを投げて、メダル争いに絡むっていうのが目標。

アジア大会陸上競技は8月25日にはじまり、湯上選手は29日に登場します。

柴原紅リポーター

平成16年入局
盛岡局、仙台局を経てラジオセンターへ。ラジオ特集では、競泳、新体操、ボクシング、フィギュアスケート、パラスポーツなど幅広く取材。現在担当する「ちきゅうラジオ」では海外で活躍するアスリートもインタビュー

                   
※NHKサイトを離れます

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