東京オリンピックまで2年。メダルラッシュが期待される競泳陣の中でも注目なのが池江璃花子選手、18歳です。次々に日本記録を塗り替えています。池江選手は2年後のメダル獲得に向け「大きな決断」をしました。
世界で勝たなければ意味がない
7月に18歳の誕生日を迎えた池江選手。明るくマイペースな高校3年生です。その成長はとどまることを知りません。
4月の日本選手権は、出場した4種目すべてで日本新記録をマーク。圧倒的な強さを見せつけました。
池江選手の専門はバタフライと自由形の短距離種目。これまではパワーのある海外勢が席けんしてきました。日本選手は40年以上、オリンピックでメダルゼロ。池江選手も、大きな国際大会でまだメダルがありません。
池江璃花子 選手
世界で勝たなきゃ意味ないと思う。世界に対しての向き合い方、自分の意識の仕方も今までとぜんぜん違う。勝負の世界は勝つことに意味があると思うので。
五輪まで2年 コーチの交代に踏み切った
三木二郎コーチ(写真 右)
日本選手権のあと、池江選手は大きな決断をしました。オリンピックまで2年となるこのタイミングで二人三脚で練習に取り組む「コーチ」の交代に踏み切ったのです。新たに指導を依頼したのが、三木二郎コーチ、35歳です。
三木コーチ「この合宿に炎を持ってこいと言ったんですよ。魂を持ってきてって。約束したよな?」。
池江選手「はい。やる気まんまんです」。
アテネ五輪 三木二郎コーチ (2004年)
三木二郎コーチは現役時代、個人メドレーの選手としてオリンピックに出場。
三木二郎コーチ(写真 右)
引退後、この春まで2年間イギリスに留学し、世界トップの短距離選手の指導方法を学びました。
三木コーチ「池江選手は一流から、超一流になれるかっていう素質はすごくあるので、そこからどこを私が引き出してあげるか」。
池江璃花子 選手
すごく選手の気持ちを分かってくれる。世界のトップスイマーの練習メニューも参考にできたりするのもすごくいいところ。
世界トップとの「差」をどう埋めるか
オリンピックに向けた課題がはっきりと見えたレースがありました。6月の国際大会。リオデジャネイロオリンピックの金メダリスト、デンマークのブルム選手と100メートル自由形での対戦。スタート直後からスピードに乗るブルム選手に比べ、池江選手は序盤で出遅れます。前半の50メートルでついた差は1秒以上。序盤の差が大きく響いて敗れました。
ブルム選手
池江選手「体格はそんなに変わらないんですけど。なんでこんなに離されるんだろう」。
世界トップとの「レース序盤の差」をどう埋めるか。三木コーチは、スタート直後の泳ぎが弱点と指摘しました。
三木コーチ「スタートからの出だしも課題になってくると思うし、あとは下半身の全体的なキックのバランスやパワーも詰めていかないと」。
キック力強化とスタートの改良
取り組んだのは序盤の加速を生むキック力の強化です。腹筋や背筋に力を入れた状態で、前後に足を動かすトレーニング。三木コーチが、イギリス留学で学んだ強化方法です。バランスをくずさないよう、徐々にピッチをあげていきます。
三木コーチ「おなか使って!速く速く速く!」。
池江選手「こんなに汗かいたの久しぶり」。
素早く、かつ強く水を蹴ることができるよう体に覚え込ませます。
三木コーチ「陸でできないことは水中でもできない。体幹を使える体にしてから水中に」。
三木コーチ「行くよ-!よーい、ハイ!」。
そして水の中での練習。
腰につけているのは練習用のパラシュートです。キック力の強化へ、大きな負荷をかけます。体がきつくなる練習の終盤にあえてこうしたメニューを組み込みました。
また加速につなげるため「スタート」の改良にも取り組みました。
スタートで最も勢いがつくフォームを求め、1本1本、丁寧に確認します。
池江選手「もうちょっと上ですね」。
三木コーチ「もうちょい上やな。でもけっこう飛んでるよ」。
池江選手「前より全然いいですね」。
新たなコーチと世界との差を縮めていく
東京オリンピックまで2年。新たなコーチとともに世界との差をひとつひとつ縮めていく日々です。
池江璃花子 選手
たぶんことしもすぐ終わると思うし、来年になったらすぐ終わると思うし、そしたらすぐ東京オリンピックが来ると思う。すごいあっという間だとは思いますけど、やることは決まっているので、それさえやればきっと勝てるレース出来ると思う。しっかり二人三脚で頑張っていきたいなと思います。
池江選手は8月に東京でパンパシフィック選手権。そして、インドネシアで開かれるアジア大会に出場を予定しています。三木コーチと二人三脚を組んだ2人が初めて迎える夏…。さっそく成果がでるのか、注目です。