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2018年6月24日(日)

陸上 多田修平が流した大粒の涙

陸上の日本選手権で最も注目を集めた男子100メートル。日本全国のスプリンターのなかでこの日、この時に笑顔を見せることができる選手は優勝したただ1人だけ。

その陰には数えきれないほどの敗者がいます。頂点に立った山縣亮太選手が満面の笑顔で取材に応えるその脇で大粒の涙を流す選手がいました。

彗星のようにあらわれたスプリンター

日本学生陸上競技個人選手権大会(2017年6月)

今大会4強の一角といわれた多田修平選手。自己ベストは10秒07。去年、彗星のようにあらわれた大学4年生のスプリンターです。

去年6月に行われた学生の大会で追い風4.5メートルの参考記録ながら9秒94をマークして一躍、9秒台を狙える選手の仲間入りを果たしました。
昨シーズンだけで自己ベストを0秒18も縮め、世界選手権の400メートルリレーでは銅メダルを獲得。

まさにシンデレラボーイともいうべき活躍でした。しかし、一転今シーズンは苦しい戦いを強いられます。

あだとなったフォーム改造

9秒台を目指して取り組んだフォーム改造があだとなって、持ち味だったスタートからの加速が影を潜めました。

ここまで国内では10レースに出場しシーズンベストは10秒26。日本選手権で優勝を狙えるレベルには達していませんでした。

それでも周囲は「4強の一角」と評価し、期待は高まるばかりで取材に応じる多田選手は日本選手権を見据えて「ライバルを倒して優勝したい」という前向きな言葉を繰り返しました。

小西達也トレーナー(大阪陸上競技協会 夢プログラム)

その一方で、多田選手はごく近い人たちには、弱気な側面も見せていました。トレーナーの小西達也さんは今シーズンの多田選手について「強気な態度は自らを奮い立たせるためだった」と指摘します。

最悪のコンディションで迎えた日本選手権

多田修平(左端) 陸上日本選手権男子100m決勝(6月23日)

迎えた日本選手権。多田選手のコンディションは、2位に入った去年とはほど遠い状況でした。予選は10秒35と平凡なタイム。準決勝に進みましたが、インターバルでは右のふくらはぎにテーピングをして、ウォーミングアップを行う多田選手の姿がありました。

それでも多田選手を突き動かしたのは、世界と戦いたいという強い思い。
「絶対に勝ちたい」と決勝のスタートラインに立ちました。

しかし、結果は10秒22のタイムで5位。目標としていたアジア大会の代表には届きませんでした。

次につながるレースだった

笑顔で会見に臨むチャンピオンの山縣選手の脇で「目の前で9秒台を出されたレースよりも悔しい。陸上人生で1番です」と語った多田選手の目には、人目もはばからず大粒の涙がこぼれていました。

小西達也トレーナー(右)

しかし、今大会最も近くで多田選手を支えたトレーナーの小西さんは私に180度違う話をしてくれました。

小西さんが着目したのは10秒22のタイム。昨シーズンであれば軽く超えていたタイムですが、多田選手にとっては今シーズンのベストでした。

小西さんは目を真っ赤に腫らした多田選手を横目に「この状況で今シーズン自己ベストは立派だった。悔しいかもしれないが、苦しい中でも今後に必ずつながるレースだったと思う。これからもサポートしていきたい」と話してくれました。

2018年 陸上 日本選手権 男子 100m 予選

涙の敗者を前にしたトレーナーの一言は、私にとって、2年後の東京オリンピックに向け、多田選手の可能性を感じさせる言葉となりました。

小林達記 記者

平成26年入局。大阪放送局スポーツ担当 オリックスとともに地元関西の多田選手を取材。

                   
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