読み込み中です...

2018年6月21日(木)

サッカー中継の楽しさ倍増!八塚浩の「実況ウラ話」

サッカー中継で「◯◯が仕掛けた!」「ゴーーール!」などと試合の様子を熱く伝えてくれる「実況」。実況をよく知れば、テレビ観戦がさらに楽しくなること請け合いです。長年サッカー実況に携わってきたフリーアナウンサー・八塚浩さんに、気になる実況の舞台裏について10個の質問をぶつけてみました!

Q. 実況はどんな時が大変?

A. ひとつは、自分のコンディションが悪いときです。たとえば喉がベストの状態じゃないと、それが気になって集中力を欠いたり、しゃべるのを少し抑えたりしてしまいます。そういうときって、試合がすごく長く感じるんですよね(笑)。

もうひとつは、感情が入りすぎているときです。1994年に三浦知良選手がイタリア・セリエAのジェノアに移籍した際、最初の試合で彼は鼻を骨折してしまいました。そのときは「立て、立ってくれー!」という熱い思いと、実況として冷静にならなくてはという気持ちに挟まれ、適切な言葉を探すのに苦労しましたね。

Q. 感情が入りすぎて、実況中に泣いてしまうことは?

A. けっこうあります(笑)。実況として本当はダメなのかもしれませんが、やっぱり人間ですのでそれはあります。以前、UEFAカップというヨーロッパの権威ある大会の決勝戦を中継したときは、あまりにいい試合だったために、解説をしていた原博実さんも僕も途中から涙ぐみながら中継していました。

Q. 実況をしていてうれしい瞬間は?

A. 「◯◯選手はここにいます」と視聴者に対して“ここが注目だよ”と伏線を張っておき、その後予想通りそこにボールが回ってゴールが決まったときはうれしいですね。「キレイに決まったー!」などと実況するのですが、自分に言っているようなところもあります(笑)。

でも、「さあ、ここでクロスを上げるか! …いや、いったん戻しました」などと予想を裏切られたときも実はうれしいんです(笑)。やっぱり誰もが考える展開ばかりでなく、意表をつく展開も見たいですからね。

Q. 自分が応援しているチームの場合に、実況のテンションが変わってしまうことは?

A. なるべく表に出ないようにはしますが、やはり自分のなかのテンションは変わりますね。とりわけ日本代表の試合、なかでもワールドカップの試合は気持ちが入ります。

少年サッカーなんかを見ていると、よく父兄の方々が「いけ!」「当たれー!」などとものすごく熱くなって応援しているのを見かけます。やっぱりサッカーって、試合のレベルうんぬんではなく、選手との距離が近ければ近いほど気持ちが入って熱狂できるものなんですよね。それがサッカーの本質なのかなと。

Q. 解説者によってやりやすい、やりにくいはある?

A. 正直、それは全くありません(笑)。解説者というのは、選手や監督としてピッチに立ったりロッカールームに入ったりという特別な経験をしてきた方々なので、僕らとは試合の見方が全く違うんです。だからとにかく教わることが多く、僕は常に“今日は何を教わろうか”という気持ちで臨んでいます。

ちなみに外国では実況がひとりで中継することが多く、解説者&実況のコンビで中継するというのは、日本ならではの“伝統芸”のようです。そういえば日本には漫才というものもありますものね。

Q. 1つの試合を実況するのにどのくらい準備をするの?

A. 準備は大きく分けて3つあります。1つめは、両チームのこれまでの試合を分析すること。それぞれ過去3~4試合分をVTRで見ておきます。

2つめが、出場する選手たちの最新情報のチェック。そして3つめが、選手たちのおもしろエピソードや裏話のチェック。これは過去のノートから当該選手のものを引っ張り出します。こうしたデータはまたストックされていくので、家には膨大な量のノートが保管されています。

こんな感じなので、好きじゃないととてもできません(笑)。

Q. 実況で使うさまざまな語彙はどうやって増やしているの?

A. 本なり映画なり会話なり、あらゆるものからインプットしています。古典文学なんかを読んでいると、いい言葉があったりします。

ただし僕の場合、「今日はこのフレーズを言おう」と事前に用意することはしません。そのとき見たものを見たテンションのまま言葉にしたいと思っているからです。やっぱり用意したセリフを言うと、現実とのズレが生じてしまうんですよね。

だから新しい言葉をインプットしてもすぐに使うわけではなく、それが自分の中に根付いて自然に出てくるまで寝かせるという感じです。

Q. 試合中、しゃべることがないときはどうするの?

A. 実はサッカーの試合って、展開に乏しい場面の方が圧倒的に多いんです。そんなときは用意したネタを披露するよりも、ベンチワークの話をしたり、ピッチサイドの様子を伝えたりと、なるべく現場感のある話をするようにしています。

現地で中継している場合は「音」にも注目します。ある選手がボールを持つときだけブーイングが上がるとか、ただのパス回しなのに拍手が起こっているとか、音は臨場感を伝える格好の素材なんです。

Q. 自分が実況をした試合を見返すことはある?

A. しょっちゅう見返します(笑)。やっぱり自分がよく知る声だし、波長もぴったり合うし、がんばって話している声に愛着を感じるので、自分が実況した試合は大好きです(笑)。その半面、ここでかんだなとか、解説者の話をさえぎってしまったなという“アラ”も見えてきます。不思議なことに、自分が何を話したかをほとんど忘れてしまっているんですよね。

Q. とくに印象に残っている自身のフレーズは?

A. メッシ選手はよく「神の子」と呼ばれていて、僕もそのフレーズをよく使っていました。ところがあるとき、アルゼンチン代表としてコパ・アメリカという大きな大会に出場したメッシがPKを外し、チームも敗退してしまったことがありました。

ガックリと肩を落として涙ぐんでいるメッシを見て、僕は慰める気持ちを込めてこう言いました。「メッシも人の子ですね」。

今思うと、なんでとっさにあんな言葉が出たんだろうと不思議なのですが、後に「あの言葉にすごく共感した」といった反響をたくさんいただきました。自分としては「あんな言い方をしてよかったんだろうか」と引っかかっていたので、反響がうれしかったですね。

こんなふうに実況にも少し注目してもらい、サッカー中継をより楽しんでもらえたらうれしいです!

【八塚 浩(やつづか・ひろし)】

1958年生まれ、千葉県出身。立教大学卒業後、ラジオ福島に入社しアナウンサーとなる。88年に独立し、91年にイタリア・セリエAでサッカー実況のキャリアをスタート。以降、国内外のサッカー実況を数多く手がけ、サッカー実況としては日本屈指の実績を誇る。現在はセリエA、イングランド・プレミアリーグ、UEFAチャンピオンズリーグ、Jリーグなどの実況を担当。サッカー以外のスポーツ実況やナレーション、MCなども行う。

                   
※NHKサイトを離れます

関連記事

    人気の記事ランキング

      記事ランキングをもっと見る

      最新の記事