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2018年5月2日(水)

池江璃花子 "日本新"までの知られざる葛藤

4月に行われた第94回日本選手権で見事6回の日本記録更新を果たした17歳、高校3年生の池江璃花子選手。リオデジャネイロオリンピックでの活躍を覚えている方も多いでしょう。これまで日本が劣勢に立たされてきた100メートルバタフライで、日本記録を更新し続け、世界記録まであとわずかというところまで迫っています。

順風満帆に見える池江選手の競技人生ですが、じつはリオ五輪後に不調におちいり、葛藤の日々を過ごしていました。原因は皮肉にもオリンピック。目標だった決勝に進出し、力を出し切った結果、心も身体も燃え尽きてしまったのです。池江選手はどうやって強い心と体を取り戻し、壁を越えたのでしょうか。

幼少期から始まっていた“水泳のある生活”

水泳ごっこをする幼いころの池江選手


3人きょうだいの末っ子として生まれた池江選手が水泳を始めたのは、3歳のとき。5歳で4つの泳法をすべてマスターし、みるみる実力をつけていきます。


水泳の練習のかたわら毎日欠かさず取り組んだのが、母親が自宅に設置したうんていでした。このうんていのおかげで、肩甲骨の動きが大きく、しなやかな腕の動きを手に入れることができたのです。

池江選手自身も、「うんていの効果は大きかった。いまの泳ぎにもつながっているのかなと思う」と振り返っています

普段はいたって普通の高校生


世界と戦う池江選手ですが、彼女はまだ17歳の高校生3年生。試合や合宿で、1か月以上も教室を空けることがありますが、クラスメートと過ごすひとときは彼女にとって、大切な時間です。

リオオリンピックで燃え尽きてしまった池江選手


2016年夏。初めてのオリンピックで、目標だった決勝に進出し、100メートルバタフライでは日本選手として初めて56秒台に到達。それまで2秒近く離されていた世界との差を一気に1秒38まで縮めました。しかし、オリンピックで全力を出し切った事で、心も身体も燃え尽きてしまったのです。

不安定な心身がもたらした停滞


いわゆる「燃え尽き症候群」で苦しんでいた池江選手は、きつい練習にも耐えられなくなっていたといいます。そして十分な練習を詰めないまま、オリンピック翌年、2017年4月の日本選手権に臨みました。結果は、5冠こそ達成したものの、こだわってきた自己ベスト更新はゼロ。出場したいずれの種目でもタイムを縮めることが出来ませんでした。練習が不足したことで、タイムも頭打ちになっていたのです。

さらに不調は続き、去年7月の世界選手権を迎えても一向に上向かない心と体に、池江選手自身も焦りを感じていました。不安で苦しくなり、レース前に泣いてしまったこともあるそうです。これまで順調に記録を更新してきた100メートルバタフライも、オリンピック以降まったく自己ベストが出なくなります。

高地トレーニングであるべき自分を取り戻す


2017年12月、再出発に選んだ地は酸素の薄い高地でした。ひときわハードなメニューを課された池江選手はときおり辛そうな表情を見せながらも、「まだいけると思っているから、きつくても諦めたくない」新しい自分に生まれ変わるため、強い目でそう話しました。

自信を取り戻すために取り組むポイントは、レース前半の50メートル。6位に終わった世界選手権で、池江選手は前半を最下位で折り返していたのです。世界のトップ選手はレース前半から積極的に攻め、後半はバテない泳ぎをする。池江選手にはレース前半で負けない、積極的な攻めの泳ぎが足りなかったのです。

前半から“がむしゃら”に泳ぐことで強い気持ちを取り戻す、それがトレーニングのテーマでした。

結果が自信につながったタイムトライアル


2018年4月の日本選手権に向けて、池江選手は直前まで調整を続けました。標高1,900メートルのメキシコの高地で、これまでの成果を試すためにレースの前半を想定した50メートル1本勝負のタイムトライアルに挑戦。フィン付きながらも世界記録を目指します。結果は24秒3。酸素の薄い高地で、50メートルバタフライ(長水路)の世界記録を上回りました。そして、長い間苦しめられた記録の壁を破る自信を取り戻します。

あふれる自信で、大幅な記録更新を宣言!


「正直、去年は気持ちも落ちこんで、体も整っていなくて、日本選手権なんて出たくないと思っていた。」と打ち明ける池江選手。厳しい練習を経て一回りも二回りも成長した今年の大会前には、「次の日本選手権で100メートルバタフライの日本新記録を大幅に更新できる、自信がある」と断言したのです。

思い通りの結果が出ずに限界を感じたことはあるか、という質問にも、「みんな同じ人間だから、誰かができることは私にもできる。限界がないって考えれば、その上にだって行けるはずなんです。」と頼もしい回答をしていました。


そして迎えた4月の日本選手権。池江選手は女子100メートルバタフライ決勝に、これまでの悔しさをすべてぶつけていました。

レースが始まると、前半からグングンとスピードをあげてライバルを圧倒的に引き離しにかかります。


最後までトップを保ったままゴールし、56秒38の日本新記録!これはリオデジャネイロオリンピックの銀メダルにも相当する好記録です。そしてその後行われた50メートルバタフライ決勝でも、25秒43をマーク。自身の持つ日本記録を更新し有終の美を飾りました。

2018年日本選手権を通して6回、日本記録を更新した池江選手。しかし彼女は決してこの結果に慢心してはいません。「絶対諦めないと決めた」「来年、再来年と絶対落とさないようにしたい」世界で活躍するスーパー高校生は、すでに頂点を見据えています。

                   
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