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2018年5月1日(火)

悪夢から2年 なでしこは変わったのか

サッカー女子の日本代表「なでしこジャパン」は、ヨルダンで開かれたアジアカップの決勝で強豪のオーストラリアを破って2大会連続の優勝を果たし、来年フランスで開かれるワールドカップの出場権を獲得しました。

リオデジャネイロオリンピックのアジア最終予選に敗れ、出場権を逃してから2年。再びアジアの頂点をつかみとることができたのはなぜなのでしょうか。
(スポーツニュース部記者 鈴木笑)

栄光からの転落

中国に敗れた日本イレブン(2016年3月)

なでしこジャパンはボールを保持しながら素早いパスワークでチャンスを作るスタイルで、2011年にワールドカップ初優勝、翌年のロンドンオリンピックは銀メダル、そして2015年のワールドカップで準優勝と、世界の舞台で輝かしい成績を残してきました。

しかしその反面、チームは世代交代が進まず、2年前のリオデジャネイロオリンピックのアジア最終予選は、相手に日本のスタイルを徹底的に研究され、日本は、わずか1勝しかできず4大会連続のオリンピック出場を逃しました。

世代交代へ 一つにまとまらず

チームの立て直しを託されたのが高倉麻子監督です。

2014年に開かれた17歳以下のワールドカップで日本を初優勝に導くなどの実績があり、「なでしこジャパンが積み上げてきたものをさらに磨き上げ、日本人にしかできないサッカーを追求したい」と目標を掲げました。

しかし、「世代交代」は簡単ではありませんでした。澤穂希さんや宮間あや選手といった主力がチームを離れる中、高倉監督は、若い選手を積極的に代表に呼び、新戦力の発掘を進めます。

高倉監督と熊谷選手

メンバーを固定せず、選手どうしを競わせることで個々のレベルアップを図りました。阪口夢穂選手や鮫島彩選手、岩渕真奈選手といった、なでしこの全盛期を知る経験豊富な選手と融合させるのが狙いでしたが、チームはまとまりを欠き、結果を出すことができませんでした。

去年8月のアメリカ遠征は、オーストラリアに4失点で敗れるなど3試合で2敗1引き分け。さらに去年12月の東アジア選手権は、優勝がかかった北朝鮮戦に、0対2で完敗。

かつて世界一になったなでしこジャパンの輝きは失われました。

あるベテランの選手は「これまでは澤さんや宮間選手に引っ張ってもらっていたが、いざ自分がリーダーシップをとる立場になると難しかった。若い選手が何を考えているかわからない」と話し、逆に若い選手もみずから進んでベテランに話しかけるようなことは少なかったといいます。

選手どうしのコミュニケーション不足は深刻で、チームが一つにまとまっていませんでした。

転機となった大敗

転機となったのは、今年2月から3月にかけてポルトガルで開かれた国際大会「アルガルベカップ」でした。

初戦のオランダ戦で日本は、相手のパワーとスピードに守備を崩され、6失点。屈辱的な大敗を喫します。

その夜、選手たちはキャプテンの熊谷紗希選手の呼びかけで、初めて選手だけのミーティングを開きました。試合の映像を振り返りながら率直に意見をぶつけあったといいます。

ボールを奪ってからどう攻撃を組み立てるか。相手が攻め込んできた時にどう連動してブロックするか。選手の1人は「ミーティングで自分とは違う意見を聞くことでチームの意思統一ができた」と話していました。

その後の大会で、日本は2連勝。「守備からチームが変わり、攻撃までの流れもできた」とチームが一つになって戦うことの手応えをつかみました。

アジアカップで見せた“成長”

ベトナム戦でゴールを決める横山選手

そして、アジアカップ。選手たちはワールドカップの出場権獲得と大会2連覇という目標に向け、一丸となって戦いました。

1次リーグの初戦。日本はベトナムに4対0で快勝しましたが、選手たちの口から出たのは「反省」のことばばかりでした。

キャプテン熊谷選手

単純なミスが多く、ディフェンスは動きが足りなかった。

先制ゴールを決めた横山久美選手

サポートが少なく、シュートまで間延びしてしまった。

チームは、すぐに課題の修正に取りかかりました。

中でもディフェンス陣は、20歳の市瀬菜々選手や21歳の清水梨紗選手など若手とベテランが毎日のようにミーティングを重ねたといいます。守りの最終ラインの上げ下げや、1人が前線に攻撃参加した際のカバー体制などを細かく確認しました。

その後、準決勝の中国戦は、後半、中国に押し込まれたものの集中して守り続け、途中出場の横山久美選手の追加点につなげました。

また決勝もオーストラリアの猛攻を粘り強くしのぎ、後半唯一のチャンスを生かして決勝ゴールをもぎとりました。

大会を通して日本の失点は、5試合でわずか「2」でした。

高倉監督は「新しい選手を発掘しながら2年間、選手も私も耐えてきた。優勝を引き寄せたことは選手たちの成長以外の何物でもない」と話し、チームの世代交代を印象づけました。

再び世界一へ

アジアを制し次の目標は1年後のワールドカップです。

選手たちは、ワールドカップに向けたさらなる成長のカギを決勝のオーストラリア戦に見いだしていました。ボールを持つ相手を3人で取り囲んでもドリブルでかわされ突破されてしまう場面や、縦へのパスで走り負けてしまう場面。勝ったものの最後まで流れを引き寄せることができませんでした。

日本はこのあと6月と7月に海外に遠征し、さらに8月にはインドネシアで開かれるアジア大会に出場する予定です。

チームはまだ「発展途上」。今回の優勝を確かな自信にして、さらなる成長を目指すなでしこたちが1年後のワールドカップでどのようなサッカーを見せてくれるのか、注目されます。

鈴木 笑

スポーツニュース部記者
平成23年入局函館局 札幌局
報道局遊軍プロジェクトを経て現所属 サッカー担当

                   
※NHKサイトを離れます

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